天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第173話 イワイ・シュウスケという男。


ーーーーーー

  元国王の記した日記は、その記述を最後に、途切れていた。

  その先のページには白紙が続く。

  そこで俺は、一つの疑問が湧いた。


ーーイワイ・シュウスケを始めとした『異世界人』は、ただ単に、その教会とやらに潜んでいた『悪魔』に操られているだけだというのか......?


  読み進めると、『イワイ・シュウスケ』に関して、マイナスと捉えられる要素は全く存在しなかった。

  ならば、俺が戦うべき相手は、彼の中に潜む『悪魔』という事になる。

  そんな風に考えた後で、俺は、元国王の方を向いてその疑問をぶつけた。

「それって、つまり、俺は奴の中に潜む『悪魔』と戦うべきなのか......? 」

  俺がそう問いかけると、元国王は首を大きく横に振った。

「いや、それは只のキッカケに過ぎない。要は、奴らには元々潜んでいたんだよ。『悪意』という物が......。何故なら、彼らはすぐに、『悪魔』から解放されたんだ。......だがしかし、彼らが我に返った時、俺は思い知ったよ。この四人の『異世界人』の本当の恐ろしさを......。」

  元国王は、そう呟くと、隣に控える妻に向けてコーヒーを淹れる様に促した。

  みすぼらしいボロボロの絨毯の上には、元国王の隣で、相変わらず卑屈な表情を浮かべる青年と、俺に怯えたままの少女、モールは、正座をしながら唇を噛み締めている。

  そんな周囲に対して、俺は少しだけ居心地の悪さを感じると、暫く言葉を発する事なく黙りこくっていた。

  彼らの『悪意』とは、一体何なのだろうか......?

  元国王の読心術に関しては、先程の対面で痛い程理解した。


ーーもし仮に、イワイ・シュウスケが『魔法』を駆使して元国王を欺こうとしたとしても、それは不可能であろう。


  何故なら、彼の息子であるモールは、いとも簡単に俺の『魔法』を見破ったのだから......。

  それならば、やはり、『悪魔』の仕業と考えるのが普通ではないか.....?

  俺がそんな風に考えを巡らせると、元国王はその意図を察した様で、こんな事を口にした。

「では、もし仮に、どちらも本心で行動していたとしたら、どうなると思う......? 」


ーー元国王の放ったその言葉に対して、俺は恐る恐る答えた。


「それは、一人の人間の中に、二つの性格が存在するという事になるのか? 」

  俺の問いかけに対して、彼は、大きく頷いた。

「そうなんだよ。つまり、彼らの中に潜む、『善意』も『悪意』も、全て彼ら自身だったんだ......。奴らは俺と会話している時は、『悪意』を綺麗さっぱり封印していたんだ。国王であった俺が、読心術を得意としている事が分かっていたから。俺は忘れもしないよ。彼らの手によって失われた意識から目を覚ました時、投げかけられた『イワイ・シュウスケ』の言葉を......。」

  彼はそう呟くと、長く生えた髭を丁寧に撫でた後で、こう続けた。

「彼らは、教会にて、俺が目を覚ますまでその場で待っていたんだよ。『やっとお目覚めですか。国王様には、悪い事をしたと思っています。でも、これだけは宣言しておきます。僕らは、元々この場所で『悪魔』を味方にするつもりでいたのです。その為に、国王であるあなたに踏み台になって貰ったのですから......』そんな事を口にした奴は、その後で、余りにも不敵な笑みを浮かべたよ。その後、何度も言って見せたよ。『お前は、『悪魔』に取り憑かれているだけだ』って......。でも、違かったんだよ。奴は、『悪魔』をに取り憑かれた訳ではなく、自ら『悪魔』を取り込んだだけなんだってな......。その証拠に、彼の周囲には忌まわしい赤い目をした女が悠然と浮遊していた。」

  俺は、それを聞いた時、理解した。

  イワイ・シュウスケは、『悪魔』を仲間にする事が目標であった。


ーーその為に、国内で着々と地位を築いて行った。


  しかも、余りにも器用に近くにいる者を欺きながら......。

「それは、いつ頃から画策していたんだ......? 」

  俺がそう問いかけると、元国王は、ため息をついた。

「そこが、一番の問題なんだが......。」

  彼は、そう言った後で、眉間にシワを寄せる。

「あの一件以来、どんな因果なのか、この国に異世界からの転移者は急増したんだよ。その者達によって、国家の貴族や大臣は、ことごとく暗殺されて行った。俺はと言うと、『イワイ・シュウスケ』によって利用され続けた。『魔法』の類が通用しない『悪魔』に乗り移られて、大規模な処刑すら命じさせられた。しかも、それはまるで、昔から計画されていたかの様にスムーズにな......。変な話だが、そのおかげで俺はこうして生きながらえているのだが......。」

  俺はそんな彼の発言を聞くと、謎が増して行った。

  計画的に国家征服を画策するのならば、膨大な時間が必要となる。

  しかも、何故か突然、『異世界人』が急増するなど......。

  それを短期間で実行するとしたら、一つしか......。

  だが、俺はその手段を考えると、大きく首を横に振った。


ーーまさか、そんな事出来るわけが......。


  しかし、そんな俺の仕草を見た元国王は、その答えをゆっくりと呟いた。

「今、お前の考えている通りだよ。つまり、奴らは意図して、この『ヘリスタディ帝国』に転移して来たんだ。どんなカラクリなのかは分からない。だが、どうやらそれは事実の様だ。何故なら、俺は利用された挙句、国家の罪人として追われる事になる直前、『イワイ・シュウスケ』から、それをはっきりとこう宣言されたから......。」


ーー「俺は、この世界を征服する為にこの世界にやって来た。その踏み台として、この国の国王になる。それに、あちらの世界で悩みや苦しみを抱えた者が、これからどんどん転移する事になるだろう......。お前は、その悲劇を逃げながら、惨めな気持ちで見るがよい。」ーー


  俺は、それを聞くと、呆然とした。

  イワイ・シュウスケは、しっかりと計画した上で、この世界に転移して来た。
 
  しかも、何かの作用をもたらして『異世界人』を転移させ続けて部下にしていたのだ。

  理由も手法も、全く分からない。

  だが、もし仮にそれが可能なのだとしたら、それは、神にも匹敵する力であろう......。

  何故なら、俺や兄、森山葉月らは、『崩壊の神』によって転移させられた存在なのだから.......。


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