天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第172話 元国王の過去。


ーーーーーー

  元国王と『イワイ・シュウスケ』を始めとした五人は、大きな砂漠を抜けると、驚きの表情を見せて立ち止まった。

  何故なら、その砂漠の先には、その場にそぐわない程にポツンと聳え立つ教会を目にしたからだ。

  元国王も、古い文献にてその存在は知っていたものの、その場所へ来たのは初めてであった。

  と言うのも、彼にとって、その神々しい存在は無関係なものであったからである。

  古い文献には、こんなことが記されていた。


ーー「異世界から現れし存在を目にした時、その場所へ訪れよ。きっと、その者達は、世界に幸福をもたらすであろう......。」ーー

 
  彼は、そのお告げを信用していた。

  王家に古くから伝わる伝説でもあったから......。

  出来ればこの結果を隠密しておきたいという彼の意向もあって、元国王と『異世界人』の四人でここまでやって来た。

  その伝説が本当ならば、と、『ヘリスタディ帝国』の危機を救った四人の『異世界人』に過度の期待をしていた。

  それに、もし仮に、本当に彼らが『英雄』になれるのならば、世界にとってそれ以上の幸福はあり得ない。

  元国王はそんな気持ちから、彼らをここまで案内したのだ。

  そう考えると、元国王は『イワイ・シュウスケ』を始めとする四人の『異世界人』に対して、こんな事を宣言した。

「地図に記されている目的の場所は、あそこだ。あの場所には、王家に古くから伝わる『幸せの神』が存在すると言われている。この書類に書かれている通りの手筈で中へと進み、その神と会えた時、お前らは『英雄の証』を手にするであろう......。」

  彼がそう言うと、四人の『異世界人』は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

  その仕草を取っている時の彼らの行動を、元国王は興味本位で心を読み取ってみた。

  すると、彼らの心の内が痛い程伝わる。


ーー『イワイ・シュウスケ』を始めとする四人の感情は、恐怖一色に染まっていたからだ。


  きっと、余りにも現実離れしたその場所へと足を踏み入れる事からだろう。

  幾ら、死線を越えて戦って来たとしても、やはり実体の分からないものと遭遇する事は、誰でも怖いものである。

  そこで、元国王は、怖気付くその背中を後押しした。

「これは、お前達にしかできない事なんだ。」

  それを聞いたイワイ・シュウスケは、グッと体に力を込めて、頷いた。

「国王様のお力になれるのならば......。」

  彼はそう言うと、まだ恐怖から体を震わせる三人を説得して、その書類に目を通した後で、ゆっくりと教会の方へと足を進めていった。

  それに続く様に、元国王は後ろをついて行く。


ーー明るい未来を夢見て......。

  
  その後、『イワイ・シュウスケ』は教会の入り口から奥へと進むまでの間、一つの間違いをする事もなく、書類に記された詠唱を続けた。

  そして、教会の一番奥にある、ステンドグラスで彩られた場所へ辿り着いた時、遂に彼らは女性の神と対面する事になる。

  その神は、金髪のロングヘアーに真っ赤なワンピースを纏い、余りにも曖昧な存在で、浮かんでは消えを繰り返していたのであった。

  元国王は、その神の姿を見た時、少しだけ違和感を感じた。


ーー何故なら、その神の真っ赤な目からは、殺意や悪意と言った類の感情を感じ取れたから......。


  そこで、元国王は慌てて四人にこう命令をした。

「どうやら、この者は、神の類では無いみたいだ!! 急いでこの場から逃げろ!! 」

  しかし、そんな元国王の怒鳴り声に対して、四人は耳を傾ける事は無かった。

  それどころか、どんどんとその何者か分からない存在の方へと足を進めていく。

  それに対して、元国王はしがみついて止めようとした。

  だが、そんな行動を遮断する様に、『イワイ・シュウスケ』は生気の無い顔をして、元国王の制止を振り払った。

  四人がその女の約一メートル程前の位置に到着した時、女は悪意に満ち溢れた笑みを浮かべた後で、狂った様にこんな事を言い出した。

「やっと、念願が叶った!! これから、貴様ら『異世界人』の体を借りて、世界をぶっ壊してやる!! 」

  彼女がそう叫ぶと、背後からは三人の悪魔が姿を現した。

  それから、周囲からは真っ黒な渦の様な物が現れる。

  元国王は、そんな光景を見て呆気に囚われた。


ーーしかも、体は一つも動かなくなる......。


ーー声も出せなくなる。


  元国王は虚ろな視線で四人の様子を見ると、彼らは、その真っ黒な渦を体に取り込んでいた。

  相変わらず、生気の無い表情を浮かべたまま......。

  そして、その全てが終わった時、黒い渦は綺麗さっぱり消えていた。

  先程見かけた赤い目の女も、三体の悪魔も......。

  それと同時に、元国王の体には自由が戻っていた。


ーーあれは一体、何だったのであろうか......。


  元国王はそんな事を考えると、気絶してその場に倒れた四人の元へと急いで駆け寄った。

「お前達、大丈夫か?! 」

  そんな元国王の質問を聞くと、イワイ・シュウスケはゆっくりと立ち上がってこう答えた。

「問題ありませんよ......。」

  苦しそうな表情を浮かべながらも、しっかりと返答したイワイ・シュウスケに対して、元国王は心底ホッとする。

  無事で良かったと......。


ーーだが、彼はそう返答したのを最後に、狂った様な表情で高笑いを始めたのであった。


「やっと、人間の体を手に入れた!! しかも、『異世界人』!! これで、千年の封印から解放されるよ!! 」

  そんな風に叫ぶイワイ・シュウスケは、これまでよ彼の人格とは別人であった。

  いや、そこにいる彼を含めた四人は、全くの別人になっていたのだ......。

  そこで、元国王は自分の引き起こしてしまった事の重大さに初めて気がついた。


ーーどうやら、この教会に潜んでいた者は、『幸せの神』ではなく、タチの悪い、それも、強力な力を持った『悪魔』であったのだ......。


  しかも、四人の『異世界人』は、その『悪魔達』に乗り移られてしまった......。

  それに対して、元国王は必死に彼らに言葉を投げかけた。

「早く、元に戻って来てくれ!! お前は、人間だ!! 『悪魔』なんかじゃない!! 」

  彼がそう説得をすると、イワイ・シュウスケは、元国王に向けて殺意を以って胸のあたりに闇の『異能』を放った。

  その攻撃を受けた元国王は、その場に倒れ込む。


ーー奇跡的に、体を捻ったのが幸いして、急所は逃れたものの、大量の出血から体は再び動かなくなった。


「お前ら、何をする気だ......。」

  元国王は遠のく意識の中で、そんな事を呟くと、四人の『異世界人』はそれを気にもとめずに、代表してイワイ・シュウスケがこう言い放った。

「貴様には関係のない事だよ......。我々は、これから世界を征服する。今までの恨みを、全て晴らすんだ。」

  彼らは、そう言った後で、教会を後にした。
 
  元国王は、それを必死に止めようとするが、気がつくと彼は意識を失った。


ーーこの場所に四人を連れて来てしまった事に、心から後悔しながら......。

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