天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第171話 敵国の過去。


ーーーーーー

  俺は、モールの居住地であるボロボロのテントに敷かれた申し訳程度の絨毯の上に腰を落とし、元国王の本を手にすると、それを食い入る様に読み始めた。

  その本の一枚目をめくると、直筆の文章によって書かれた手記である事を理解する。


ーー「今日、我が王宮の庭にて、不可解な『歪み』から四人の男が現れるのを目撃した。」ーー


  そんな文章で始まったその一ページ目に目を通した時、俺はこの本の作り手が誰であるかがすぐに分かった。

  そう思いつつも、首の喉仏程まで伸びた髭をソワソワしながら触り続ける元国王の方を一度見つめると、彼は小さく頷いた。

「そうだ、その本は俺が国家転覆までの出来事を記した日記だよ......。正直なところ、あの日々を思い出して口にするのは、心苦しい。だから、それで勘弁してくれ......。」
 
  彼のそんな言葉に対して、俺は少しだけ彼の恐怖や後悔を察する。

  だからこそ、もう一度、彼が記した日記に夢中になるフリをして読み進めたのであった。

  それから半分程まで読んだところで、俺はある事に気がつく。


ーーそんな四人の起こしている行動が、今、俺達の取っている動きによく似ていたからだ......。

 
  彼らは『イワイ・シュウスケ』らを、十二年前にこの世界に転移してきて、国王らに不審がられて一度、拘束した。

  だが、国王自らが得意としていた読心術を駆使して尋問した所、彼らが口にした『異世界から転移してきた』と言う主張が嘘偽りでない事を理解する。

  すると、国王の側近は王宮内にある図書館から古い文献を取り出して、ある考えを打ち出した。

  どうにかこの手で、彼らを『英雄』に育て上げるのは、どうだろうかと......。

  国王自身は側近の手にした古い文献の内容を知っていた。


ーー古い伝説として語り継がれる世界を救う『英雄』について......。


  ちょうどその時期、『ヘリスタディ帝国』は西の隣国である『サヴァン国』と小競り合いを繰り返していて、頭を悩ませていた。


ーーそんな事もあって、国王は一度、その四人に対して質問を投げかけた。


「お前達は、何故、この世界にやって来たんだ......? 」

  彼らは、そんな国王の問いに対して、純粋な気持ちでこう答えたという。

「この世界を救う為......。」

  それを聞いた彼は、感化された。

  本当に彼ら四人は、世界を救う為にこの世界に降り立った事を理解して、驚きを隠せなかった......。

  その中でも、『イワイ・シュウスケ』と名乗る男からは、誰よりも強い意志を感じた。

  その一言が決定打となって、国王はその場で牢獄から解放して、軍に入る事を薦めた。


ーーすると、彼らはあっさりとそれを受容して軍の兵士となったのだ。


  それからと言うもの、彼らは数々の戦地で功績を残した。

  強大な力を持ってして、気がつけば一年も経たない内に、『サヴァン国』を降伏させた。

  気がつけば、彼らは国家において、必要不可欠な存在となっていた。

  人柄も良く、時には体を張って国民を守り、軍部や国家からも圧倒的な信頼を手にしていた。

  国王はその度に、読心術を駆使したものの、その四人は、いつも素の状態で接していた。

  だから、国王自身も信頼してしまった。


ーー自分の能力に過信をし過ぎて......。


  それから暫くすると、四人は軍部の重要なポストである『司令部』に就任すると、国民も彼らに絶大な信頼を寄せた。

  いわば、『イワイ・シュウスケ』を始めとする四人の『異世界人』は、『ヘリスタディ帝国』内では、『英雄』に等しい扱いを受けたのだった。

  そして、そんな日々を繰り返す内に、国王はある打診を始めた。

  それは、彼らが本当の『英雄の証』を持っているに相応しいかを確かめる事だった。

  実は、『ヘリスタディ帝国』の西部にある古びた教会には、神と呼ばれる存在がある。


ーーそこ行き、もし仮に彼らが本当の『英雄』になれるのならば、神が姿を現わすだろうと......。


  そう考えた国王は、『司令部』に直接赴くと、彼らに対してその旨の説明を始めた。

「お前達、西部にある教会に行く気はないか? 」

  それを聞いた彼らは、大きく頷いた。

「国王様の打診とあれば......。」
 
  そんな事を口にしながら......。

  その数日後、国王を始めとする数名は、西部の教会を目指した。

  だが、後からその選択が大きな失敗である事に、彼はその後気づく。


ーーそれを知らぬまま、国王と『異世界人』は、元凶へと足を進めたのだった。


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