天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第170話 元王族の居住地。


ーーーーーー

  俺達が一度部屋を作り出した場所から湖の反対方面の森の奥深くを歩いて行くと、モールは周囲の樹木とは一線を画す巨木の前で立ち止まった。

  それから彼は、間を置いて三回手を叩いた。


ーーすると、その音に反応したかの様に巨木の裏側からは彼と同じくみすぼらしい格好をした四人の人々が現れた。


  怯えた表情を浮かべた中学生くらいの少女に、殺意満載の成人が少し超えていそうな男、そして、死んだ魚の様な目をした中年夫婦......。

  俺は、現れた四名の容姿を見ると、再び疑いの気持ちが強くなる。


ーー彼らは本当に元王族なのだろうかと......。


  俺がそんな表情を見せながらモールの後ろで立ち尽くしていると、中年の男が、相変わらず生気の無い顔で俺を見た後、彼に向けてこう問いかけた。

「モール、その者は一体何者だ......? 」

  そんな中年男性の問いかけに対して、モールは恐る恐るこんな回答をした。

「お父様、この方は敵ではございません。むしろ、我々の考えに近い方々であります。彼から殺意は見えないでしょう。我々に、少し聞きたい事があると仰っていたので、連れてきたのです。」

  それを聞いた中年男性は、顎に指を当てて硬直する俺をマジマジと眺めた。

  その後で、こんな事を呟く。


「お前、『イワイ・シュウスケ』を倒す為に我々から情報を収集しようとしているのだな......? 」

  俺は、そんな問いかけをする中年男性に驚きを隠せなかった。


ーー何故、この男は何も言っていないのに俺の考えが分かるのかと......。


  そんな風に俺が動揺していると、中年男は少し苦笑いをした後で、こんな事を呟く。

「まあ良い。お前が本心でそう望んでいるのは良く分かった。とりあえずついてこい。」

  彼はそう言うと、再び巨木の裏側の方へと足を進めた。

  それに続く様に、周囲に控えていた家族と思われる者達も......。

  俺がそんな異様な様子に呆然としていると、モールは俺の耳元でこんな事を囁いた。

「父は、異常なまでに読心術に長けているのですよ。僕は、余り使いこなせないのですが......。とりあえず、ついてきてください。」

  俺は、モールの口にした『読心術』という言葉に、引っかかる。

  だが、それ以上に思った事がある。


ーー彼は今、間違いなくあの中年男性の事を『父』と言っていた。


ーーそれってつまり、あのボロボロの中年男性は、元国王という事になるのか......?


  俺は、そんな気持ちになりながらも、ゆっくり前に進んで行ったモールの後をついて行った。

  モール自身も、先程、俺の『魔法』をいとも簡単に見破った。

  どうやら彼らは、俺の想像している以上に強者なのかもしれない。


ーーそれが故、元王族なのだろうか......。


ーーーーーー

  巨木の裏側を暫く進んで行くと、覆っている布が穴だらけになった一つのテントが俺の目の前に飛び込んできた。

  中年男性を先頭に、彼らはそのテントの中へと躊躇なく足を進めて行く。

  俺は、そんな様子を見ると、その場所こそ、彼らの居住地である事をすぐに理解した。


ーーそして、俺は手招く中年男性に誘われるがままに中へ入って行った。


ーー俺は、そのテント内の様子に驚いた。


  何故なら、内部には夥しい数の本が、所狭しと並んでいたからだ。

「これは一体......。」

  俺がそんな事を呟くと、中年男性はそれに無表情で答える。

「ここにある書は、かつて俺が王であった時の重要な文献だ。お前の求めている、『イワイ・シュウスケ』に関する事も、克明に記してあるよ。もし、俺に力があったならば、国民を助けられたのだが......。」

  彼はそう言った後で、眉間にシワを寄せて歯を食いしばった。

  余程悔しかったのであろうか、彼の口からは血が流れていた。

  その後で、彼は一冊の本を取り出して俺に渡した。

「これに、お前の求める情報が書いてある。この本には、俺が『イワイ・シュウスケ』を始めとする『異世界人』達によって国が乗っ取られて行く顛末を克明に記しているからな......。奴らのやり口なども、もちろん。是非、参考にしてくれ。」

  元国王がそう言ったのを確認すると、俺は、その本をゆっくりと開いた。


ーー十年前、この国に何があったかを知る為にも......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く