天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第165話 戦争跡地。


ーーーーーー

「すごい!! 雄二!! 空を飛んでるみたいだよ!! 」

  俺の出した透明の道筋を進む中で、そんな無邪気な声を上げているのは、桜である。

  先程から沈黙の中で行動していたのが嘘の様に彼女は声を上げる。

  それに後押しをされる様に、背後を行くキュアリスは、微笑みながらその様子を眺めていた。

「確かに、まるで空を飛んでいるみたいだね......。少し歪んではいるけど、景色も綺麗に見えるよ。」

  キュアリスがそう言うと、桜は、嬉しそうな表情ではしゃぎながら優花の腕を掴む。

  それに対して優花は、中二モード全開でケタケタと余り上品ではない笑い声をあげていた。

  それを見たキュアリスは、優しい笑い声を上げていた。

  俺は、そんな三人の様子を見ると、一安心をした。

  やっと、元あるべき空気に戻って来たと......。

  俺の懸念していた材料。

  それは、彼女達の精神状況そのものだったから。

  今ある様な空気で進めれば、多少ストレスは和らぐであろう。

  俺はそんな事を考えながら、微笑んでいた。

  そして、そうしている内に、目的地である『メルパルク山脈』の麓に到着をしたのだった。

  その場所に着いて、目の前に広がる光景を見た時、俺はすぐに思い出した事があった。

  何故ならそこには、以前、俺や桜を始めとした『特殊異能部隊』、それに、後追いをして来たキュアリスが、大河原悠馬を始めとした『ヘリスタディ帝国』と初めて戦闘をした場所だったからである。

  その残骸として、地面には未だに奥深くまで残る無数の深い穴、焦土と化した草原、山には、まるで何かを突き刺した様にぽっかりと空いた風穴が風を集めていた。

  俺はそんな風景に一度立ち止まる。


ーーこれは、俺達がやった事であると言う事実に改めて呆然としながら......。


  すると、そんな事を何も知らない優花は、その光景を見ると、切ない表情を浮かべた後で、こんな事を口にした。

「酷い......。これは、戦争の跡だね......。」

  そんな彼女の発言の後、俺達を取り巻く空気は再び、どんよりとした。

  彼女の言いたい事は、よく分かる。

  この風景は、間違いなく俺達が関与した。

  だからこそ、俺は考えさせられる。


ーー何の為、誰の為に俺達は戦争に身を投じているのかと......。


  幾千いる敵国の兵士達にだって、一人一人の人生がある。

  その歩みにおいては、本人の物で、彼らは『ヘリスタディ帝国』で生まれて、軍隊となる道を選び、結果的に我が軍と対立して死んでしまった。

  だが、俺はそんな多くの人々の命を奪ってしまったのも、また事実である。

  俺は、この場所で人を殺した。

  それは、紛れも無い事実。


ーーその十字架を背負って生きなければならない。


  本当なら、そんな事はしたくない。

  でも、今、ここで立ち止まったとしたら、死んで行った彼らはどう思うだろうか......。

  勇敢に戦った敵国の兵士達は、報われるのであろうか......。

  そこで俺は、強くこんな事を思った。


ーーもう、進むしかない。


  そう考えると、俺は落ち込んだ表情を見せる桜とキュアリス、それに、何も知らない優花に対して、こんな事を口にした。

「これは、俺達が『ヘリスタディ帝国』と戦った時の跡だ。俺は、ここで沢山の人を殺めてしまったんだ......。」

  それを聞いた優花は、少し悲しい表情を浮かべて黙ってしまった。

  俺は、そんな優花の顔を見ると、一歩前に出て、メルパルク山脈の方向へ足を進めると、両手を合わせた。

  責めてもの供養かもしれない。

  もしくは、自分に対しても訴えかけているのかもしれない。

  お互いが正義を持ってして戦ったのだ。

  俺は、それを咎める事だけは絶対にしたくなかった。

  戦って死んで行った人々にも、失礼だと考えたから......。

  だから俺は、みんなに向けてこう告げた。

「桜、キュアリス。死んで行った人達の為にも、俺達は戦わなければならないんだ。だから、みんなもその気持ちを大切にして欲しい。」

  俺がそう言うと、皆は顔を上げて、その惨状に顔を向けた。

  すると、そんな中、桜は両手を大きく広げた後で、土の『異能』を作り出した。

  それから、穴を埋め、風穴の空いた山を修復し、焦土と化した草原には色とりどりの花を咲かせたのである。

  まるで、『メルパルク山脈』を丸ごと墓にしたかの様に......。

  桜はそれが済むと、ゆっくりと小さな両手を合わせた。

  それを見た俺は、もう一度俺も手を合わせる。

  続いて、優花とキュアリスも......。

  戦死者を弔う為にも......。

  それを終えた桜は、ニコッと笑った後で俺の事を見た。

「桜も、パパとママが死んじゃった時、物凄く辛かったから......。おっきいお墓作ってあげたよ!! 」

  そんな桜の言葉の後で、俺は彼女の頭を撫でて、微笑んだ。

「そうだな......。桜、ありがとな。」

  俺がそう言うと、彼女は万遍の笑みを浮かべた。

「じゃあ、森山葉月に連絡を取って見るか。」

  そう呟いた俺は、ポケットからマジックアイテムを取り出すと、森山葉月に向けて言葉を語りかけた。

  すると、彼女は少し神妙な口調である事を俺に告げる。

「申し訳無いのですが、今、諜報部員から入った話から、少し状況が変わってしまいましたので、今から違うルートを取ってもらいたいのですが......。」

  俺は、そんな森山葉月の話を聞くと、その理由が気になりだした。


ーー状況とは、一体......。


  俺はそう考えると、彼女の口から出た『状況』と言うものが、悪い意味である事はすぐに理解したのであった。

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