天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第163話 一瞬で過ぎた三日間。


ーーーーーー

  戦争における会議終了からの三日は、あっという間に過ぎ去って行った。

  その間の俺達は、首都からだいぶ離れた人気のない草原の方へと毎日赴き、最後の調整とも言える『異能』の訓練や『魔法』の確認をしていた。

  施設内部の訓練施設での『異能』の使用は、自分達の力の規模的に内部を破壊しかねなかったので、渋々広大な敷地の方へと移動したのだが......。


ーーそんな中、優花は要領が良い方で俺が教えた『魔法』に関しても取り分け問題なく習得に成功した。

  
  そして、いつもその帰りには街にて食材を調達して、それをキュアリスが調理してくれた。

  国家からは身の周りを手伝う給仕を派遣すると言われたのだが、キュアリスがそれを頑なに断ってしまったので、この様な形になった。

  どうしても、ご馳走を振る舞いたいと......。

  そうこうしている内に、気がつくとあっという間に出発前夜になってしまっていた。

  ちょうど今、キュアリスの作ったチキンの照り焼きを食べ終えたところなのだが......。

  俺は綺麗に無くなった皿を目の前に、キュアリスに向けて両手を合わせ、

「ごちそうさま。」

と、一言述べた。

  それを聞いたキュアリスは、少しだけ寂しそうな表情を浮かべながらこう返答をする。

「お粗末様......。」

  普段は賑わっていたはずの大きな食堂の中で、そんなやり取りは封じ込められる様に一瞬響き、すぐに消え去って行った。

  それに続く様に、先程まで賑やかだった筈の桜や、優花も黙り込む。

  それと同時に食堂は静寂に包み込まれた。

  この施設は、四人で過ごすには余りにも広過ぎる。

  まだ『特殊異能部隊』がいた数日前の活気が嘘であるかの様に静かだ。


ーー俺は、そんな空気に哀愁を感じた。


  それと同時に、俺達もこれから戦いに行くという現実が突き刺さってくる。

  怖くないと言ったら嘘になる。

  本当に自分が勝てるのかと言う疑問すら生じる。

  俺が初めてこの地に訪れた時は、死んでしまっても良いと思っていたはずだ。

  だが、今は死ぬ訳にはいかないと思う。

  俺が『死後の世界』で遭遇した兄との約束。


ーーそれに、何よりも......。


  俺はそう考えると、テーブルで静かに座り込むキュアリスと桜、優花を見渡すと微笑んでこう告げた。

「では、明日は早いし、食器を片付けたら就寝するか。」

  そんな俺の提案に、三人はぎこちない返事をした後で、立ち上がって食器を洗い場の方へ運んでいった。

  三人の気持ちはすぐに伝わる。


ーー死への恐怖、緊張、重圧......。


  俺は心ここにあらずな三人をもう一度眺めると、こんな提案をした。

「今日は、全員で寝るか。」

  それを聞いた皆は、一瞬安堵の表情を浮かべた後で、

「うん......。」

と、声を揃えて答えた。

  そして、俺は不気味な程静かな『特殊異能部隊』の入り口ホールに布団を四つ敷いた。


ーー「ここが良い」というキュアリスの提案に後押しされる様にして......。


  それから、俺達は川の字になって眠った。

  その時、眠れない俺はキュアリスと二人で遅くまで語った。

  そして、その時にある『約束』を交わした。

  その『約束』は、これからもずっと永遠に忘れる事はないだろう......。


ーーーーーー

  出発の日の朝、俺は誰よりも先に目を覚ました。

  まだ真っ暗な入り口のホールを、俺は起こさぬ様に立ち上がった後で去った。

  そして、その先にある訓練場のグラウンドの真ん中に立つ。

  まだ薄っすらと星空が見えるその場所で、俺は自分の体を確かめる様に、全身に力を込めた。

  その後、こう心の中でこう呟いた。


ーー「よし、頼んだぞ」


  そして俺は、出発に向けた最後の準備を始めた。


ーーーーーー

  太陽が星空を隠す様に顔を出した朝方、俺がすっかりと全員の準備を終えた辺りで、キュアリスが目を覚ました。

「おはよう......。雄二......。」

  キュアリスは虚ろな目で俺にそう呟いた。

  俺はそれに対して、こんな返答をする。

「よく寝れたか......? 」

  それを聞いたキュアリスは、ニコッと笑いながらその問いにゆっくりと答えた。

「うん、おかげさまで......。これからは暫く忙しくなるからね......。」

  彼女はそう言った後で、まだぐっすりと眠っている桜と優花の方を見つめ、こんなことを呟いた。

「こんな幸せそうな二人にも、戦争に参加させる事になるなんて、酷な話だとは思うけど......。」

  彼女はそう言った後で、少し切ない表情を浮かべた。

  俺は、それに対して自信を持ってこう言った。

「もし、二人に何かあったら、俺は命に代えてでも守ってやるよ!! もちろん、キュアリスだって......。」

  それを聞いたキュアリスは、静かに微笑んだ。

「ありがとう、そう言ってもらえるだけでも、心強いよ......。」

  俺は彼女のそんな一言を聞くと、手元の時計を確認した。

  それから二人を起こした。


ーーそろそろ出発の時間だ。


  虚ろな瞼で目を覚ました二人に対して、着替える様に促した後で、『特殊異能部隊』の訓練施設に施錠をすると、王宮へと向かったのだった。
 

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