天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第161話 国を左右する会議。


ーーーーーー

  約三日の日数を掛けて『特殊異能部隊』の皆を送る事に成功した日の夕暮れ、俺は訓練施設へと戻って来た。

  最後に一人残されたリュイは、『ガイルス』に到着すると、そこの支部の兵達から早速、『異能』を披露して欲しいとせがまれ、それを見せた時、賞賛を浴びていた。

  そこで支部長を勤めている『アリュール』と言う老兵は、今回のリュイ派遣に関する旨を俺に伝えた事を思い出す。


ーー「今回は、リュイ様の派遣のお話、受け入れて下さり、大変感謝申し上げます。」ーー


  『ガイルス』の北の国境付近には、今まで何度も『ヘリスタディ帝国』との小競り合いがあったらしい。

  そう言う経緯があってか、敵国の攻撃に耐えられる様、『ガイルス』は、グリンデルの駐留していた『ヘベレスシティ』に次ぐ重要な都市となって行ったらしい。

  だが、ここ数日になって、『異世界人』が姿を現したということだ。
 
  それに気がついたアリュールが自ら秘密裏に調査を行ったところ、彼から痛い程放たれるオーラを見た時、その支部の兵達ではまず敵わない敵だという事に気がついたらしい。


ーーそこで、白羽の矢が立ったのが、リュイである。


  アリュールは元々、森山葉月と同様に、相手のオーラが見える存在らしい。

  それが故、リュイが到着するや否や、彼女をじっくりと眺めて強さの考察をした。

  その結果に、彼自身が驚いていた。


ーーリュイはマジマジと見つめるアリュールをに対して困惑していたが、どうやら彼曰く、リュイの強さは想像以上であったらしい。


  俺はそんな彼に、一応『結界』をその場に掛けて、操られていないかを確認する。

  だが、彼らは『ヘリスタディ帝国』に操られていると言うわけでは無かったらしい。

  俺はそれに一安心すると、リュイにこう伝えた。

「じゃあ、後は頼んだぞ。」

  そんな俺の言葉に対して、リュイは少しだけ悲しい顔をした後、笑顔になって、

「隊長殿も、ご武運を......。」

と、頭を下げた。


  俺はそんな、半日ほど前に起きた出来事を思い出しながらも、訓練施設のドアを開けた。

  すると、入り口のホールに置いてあるから椅子に腰掛けた優花、桜、キュアリスの三人が俺の帰りを待っていた様だった。

「おかえり、雄二。とりあえず、これからが本番だね......。」

  キュアリスは真剣な表情でそう呟くと、立ち上がって玄関にいる俺の方へとゆっくりと近づいて来た。

  俺は、そんなキュアリスの顔を見ると、同じ様に真面目な顔になる。

「ああ、そうだな......。」

  俺はそう相槌を打つと、入口のホールを通り過ぎて訓練場の方へと真っ直ぐに突き進んで行き、射撃の的に向けて光の弾丸を一つ放って見せた。


ーーそれを見た桜と優花は、グラウンドの方へ走り出すと、おびただしい量の『異能』を全身に纏った。


  キュアリスも同様に......。


  そんな皆の行動を見た時、俺は理解した。

  きっと、俺達なら勝てると......。

  そして、俺はみんなにこう告げた。

「唐突ではあるが、これから王宮に向かおう。攻め込むならば、早いに越した事はない。森山葉月には『ガイルス』を出発する前に、赴く事を知らせておいた。」


ーー俺の宣言に対して、皆は自信に満ち溢れた声で返事をした。


  それを確認すると、俺達は『特殊異能部隊』の訓練施設を後にした。

  きっと、数日の内に『ヘリスタディ帝国』を攻め込む事になるであろう。


ーーその重要な会議に参加する為にも......。


ーーーーーー

  施設からは徒歩での移動であった為、俺達が王宮に着く頃には辺りは暗くなっていた。

  この国の行先を左右する重要な会議が行われる事もあり、王宮内部は重々しい雰囲気が漂っている事が、容易に感じられた。

  それから送りの者に誘導されて一つの会議室に案内された。

  だが、俺はその場所に訪れた事は一度も無かった。

  王宮の地下三階にある、『ベリスタ王国 第一会議室』には......。

  優花と桜に関しては、その空気感に動揺しているのか、何も言葉を発する事が無く、二人で寄り添う様にしていた。


ーーキュアリスは、真剣な面持ちで扉の上に記されたその部屋の名前を見つめていた。


  俺は、そんな三人の様子を確認した後で、扉に手を当ててこう告げた。

「では、行くとしようか......。」

  そう呟くと、俺は勢い良くその扉を開けた。

  すると、『第一会議室』の内部にある長テーブルの椅子には、もう既に森山葉月を始めとした軍の幹部、それに、国家の大臣の面々、そして、王女キャロリールが俺達を待ちわびていた様に座ってこちらを見つめていた。


ーーその手前には、四つの椅子が俺達の為に空けられている。


  俺がそんな雰囲気に圧倒されて固まっていると、キャロリール王女は低いトーンでこう促した。

「各地への『特殊異能部隊』の送迎、大変ご苦労であった。では、座るが良い......。」

  それを聞くと、俺達は一度頭を下げた後で、ゆっくりと椅子に腰掛けた。


ーー何も言葉を発する事もなく......。


  そして、俺達が座ると、キャロリール王女は大きく頷いた後で、立ち上がってこう宣言をした。

「それでは、全員が揃った所で国家を左右する重要な会議を始めたいと思う!! 」

  それを聞いた俺は、少しだけ身震いをした。

  あれだけの状況にあっても、俺は少し楽観的であったのかもしれない。


ーーだが、その部屋の雰囲気を見ると、いよいよ、全面戦争が始まってしまう事を痛い程、自覚させられるのであった......。

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