天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第159話 みんなの今後。


ーーーーーー


「では、今お話しした手筈で事を進めて頂けると、大変有り難いです。それでは......。」

  森山葉月は、そう俺に告げると、そのまま部屋を出て行った。

  それを聞き終えて俺は、一人考える。

  『戦争』と言う名の悲劇......。
 
  それは、人々に幸福を与える物ではない。

  では何故、戦争は起きるのであろうか......。


ーー正義と正義の衝突......。


  それこそが、人々を苦しめる数多の争いのキッカケであるのかもしれない。

  誰もが同じ考えの元で生きるなど、まずあり得ない事なのだから......。

  ならば、俺が今やっている事と言うのは、本当に正しい事なのであろうか......?

  そんな矛盾の中、俺は森山葉月の言った一言を思い出す。


ーー「『軍帥』として最後の大仕事」ーー


  これはつまり、我が『ベリスタ王国軍』が、全軍を持ってして戦争を終わらせる決意の現れである。

  そんな中、少なくとも俺が見て来た軍人達は共通している『気持ち』があった。

  それは、軍に就く皆は、この国を愛していると言う事だ。

  つまり、この国の人間は皆、軍に入った時から、国を守り、国の為に身を投じる覚悟が出来ている。

  『特殊異能部隊』に関しても、それは間違いないであろう......。

  彼女達は、どんなに過酷な運命を辿ったとしても、決してこの国を見放さなかった。

  それは例え、親が殺されてしまったとしても......。

  この国の人々を守るという熱い気持ちだけは、忘れることがなかった。

  多分、俺が孤独の日々にあった時の日本で同様の質問をされたとしても、俺は自信を持って「日本が好きだ」と言うだろう。

 何故ならば、俺の生まれ故郷であるから。


ーーそれは、誇りだから......。


ーーどんなに辛い時間を過ごしても、それは揺るぎない事実である。


  それならば、『ベリスタ王国』に関しては、どうなのだろうか......。

  約一年半の月日をこの国で生き、俺が見つけ出した答えは、皆と同じである。


ーー俺は、この国が大好きだ。


  大切に思う人々もいる。

  弱くて、被害妄想で、情けなくて、自分本位な俺を変えてくれたのは、紛れもなくこの国だ。

  ならば、俺自身もこの国の為に全力で動かねば......。

  俺はそう考えると、外で訓練を行う『特殊異能部隊』の十四名、並びに、桜、優花、キュアリスの全員を会議室に呼び出した。

  そして、全員が訓練の手を止めて室内のテーブルの椅子に座った時、俺はこう告げた。

「国家の準備が整い次第、我が『ベリスタ王国軍』は、全戦力を持って『ヘリスタディ帝国』に攻め込む事になった!! これは、軍帥直々の指令だ。」

  それを聞いた部屋の全員は騒めき出す。


ーー「いよいよ始まるのか」と言った仕草を取りながら......。


「そうなのですね......。遂に、その時がやって来たのですか......。」

  リュイは拳を握り締めながらそう呟く。

  俺は、それに対して頷いたのだ。

  その後で、今回の戦争における障害になる事を皆に告げる。

「しかし今、国境付近の数カ所で、臨戦態勢に入っている『ヘリスタディ帝国』の軍勢が確認されている......。そこの不安を取り除かない限り、本国を攻め込まれてしまう可能性があるんだ......。」

  俺がそんな不安を呟くと、ミルトは問いかけた。

「それは分かったけど、まずはそこから潰していくの......? 」

  彼女がそんな質問をすると、俺は首を大きく横に振った。

「いや、それをしていては、遅れを取る。相手の思うがままになってしまう......。彼女の作戦では、俺が『ヘリスタディ帝国』本土に攻め込む事をきっかけに、各地で一斉に戦闘を始める手筈だ。だから......。」

  俺がそう説明をすると、皆は唾を飲み込む。

  そんな皆の姿を見た後で、俺は息を吸い込んでこう言った。

「『特殊異能部隊』のみんなには、各戦地にばらけてもらい、国境付近の各支部の兵達と共に戦って貰いたい。戦力を一局に集中させるのは、余りにも危険だからな......。」

  それを聞いたリュイは、小刻みに震えている。

「し、しかしですね、隊長殿......。我々はその場所に行った所で、戦力になるのでしょうか......? 」

  俺は、そんな彼女の弱気な発言に対して、先程、森山葉月から受けた指令の内容をそのまま伝えた。

「軍帥から受けた言葉はこうだ。『特殊異能部隊の皆は、国家の最高戦力の少し下に位置する重要な戦力です。彼女達には、各地に散らばって貰い、指揮を執りつつ戦って頂きたい』。つまり、お前達の実力は、既に国家からの信頼を受けているんだよ。各地に散らばる国家の諜報員によると、点在する敵国の部隊に『異世界人』と思われる存在は確認されていないらしい......。だからこそ、心置きなくお前達には、戦って貰いたいんだよ。」

  そんな俺の説明に対して、『特殊異能部隊』の面々は、嬉し恥ずかしな表情を浮かべた。

「なるほど......。キュアリス様の仰っていた言葉の意味は、そこにあったのですね......。分かりました!! 我々、各戦地にて、愛する母国への侵攻を防ぐ為にも、全力で戦って参ります!! 」

  リュイが立ち上がってそう宣言すると、他の部隊の者達も続け様に抱負を口にした。

  俺は、そんな皆の眼差しを見ると、「みんななら大丈夫」と思いながら、一安心をする。

  それと同時に、少しだけ切ない気持ちになった。


ーー今までずっと、一緒に行動していた大切な仲間なのだから......。


  だが、その気持ちをグッと堪えると、これからのスケジュールについて彼女達に伝える。

「反対者がいない様なので、説明を続けさせて貰う。これから攻め込まれる可能性のある地域の中でも、特に戦力を必要としている支部へと、光の高速移動を使って、三日がかりで全員送り届ける事になった。各々は、そこに到着次第、軍と合流して作戦を練って貰いたい。来たる時には、総司令官である森山葉月軍帥から『マジックアイテム』で出撃の指令が出る。それまでに、現地の状況を理解しておいてくれ。」

  それを聞いた皆は、威勢良く返事をする。

  まるで、『国は私達が守る』とでも言わんばかりに......。

  俺は、説明を終えると、一度椅子に座り込んだ。

  その後で、少し不安そうにしている桜、優花、キュアリスの方へと視線を向ける。

「『特殊異能部隊』の今後については分かったけど......。」

  キュアリスは、不安そうな顔で俺にそんな質問をした。

  俺は、そんな彼女に対して、こう答えた。

「そうだな。キュアリス、桜、優花に関しては、俺と共に『ヘリスタディ帝国』本土の王都へと攻め込んで貰う。」

  そんな俺の発言に、三人は大きく頷いた。

  俺は、そんなキュアリス、桜、優花の覚悟を感じ取ると、続けた。

「これは、俺達が『英雄』になる為の大事な一歩でもあるんだ。だから、全力で戦おうな!! 」

  俺がそう発言すると、桜は微笑んでこう答えた。

「分かった!! 桜も戦うよ!! もし危なかった時は、雄二を守ってあげる!! 」

桜がそう決意を口にすると、隣に座る優花も続いてこう言った。

「我が邪神の力、遺憾なく発揮する時が来たのだな!! 」

  正直、『邪神』に関しては、未だに理解出来ないものの、優花の気合は感じられた。

  そして、最後にキュアリスはと言うと、徐に立ち上がった後で、俺の目の前にやって来て、右手を差し出した。

「この戦争、絶対に勝って終わらせようね......。私も、『聖騎士』として最後の仕事を、有終の美で飾りたい!! だから、雄二。よろしくね!! 」

  俺は、そんなキュアリスの発言を聞くと、大きく頷いた後で、ガッシリと握手をした。

「ああ......。勝って、この国を救おうな!! 」

  そんな二人のやり取りを真剣な眼差しで見ていたリュイは、途中である事に気がついた様だった。

「あの、少し質問なのですが......。」

  リュイが申し訳なさそうにそう呟くと、俺は彼女の方を向いた。

「どうした、リュイ。」

  すると、リュイは言葉を選びながら辿々しい口調でこう問いかける。

「先程、『英雄』と言う言葉が聞こえた様な気がしたのですが、もしかして、それと言うのは神話に登場する『英雄』の事ですか......? 」

  俺は、そんな彼女の言葉を聞くと、まだ伝えるのを忘れていた事に気がついた。


ーーそして、俺は彼女に向けて申し訳なさそうにこう答えた。


「言い忘れてすまない。俺は、どうやら、『英雄』になる資質があったらしいんだ。」

  俺が、サラッとそう言うと、『特殊異能部隊』の皆は、暫く呆然とした。

  その後で、見る見る驚きの表情を浮かべた。

「えーーーーっ???!!! 」

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