天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第152話 彼女達の感謝。


ーーーーーー

  俺の作り出した光の道は、全員を包み込む様にして高速で突き進んで行った。

  その速度は、風の『異能』を軽く凌駕して、余りにもあっさりと『首都リバイル』に到着した。

  驚く事に、光の『異能』は体に対する負担が極端に少なく、向かう方向へと速度を持ってして押し出す様に半日程で、皆を無事に『リバイル』のすぐ目の前に広がる草原まで運んだのだった。

  それは、実際に『異能』を使っている俺自身をも驚愕させた。

「驚きました。光の『異能』と言うものは初めて見るので、ここまで利便性があるとは......。」

  森山葉月は、初めて目の当たりにした光に対して、大いに驚いていた。


ーーそれは、同じ『試練』を受けた桜やニルンドも例外ではなく、その圧倒的な汎用性に感心する。


「桜、びっくりしちゃった......。あんまりにも早いんだもの......。」

  桜は、胸に手を当てて呼吸を乱しながら俺の手を握っていた。

  そんな桜に対して俺は、

「不安にさせて、ごめんな......。」

と、謝罪を口にした。

  その様子を近くでじっくりと見ていたキュアリスは、小さく微笑みながら、その様子を暖かい目で見ていた。

  そして、その後で、彼女は『リバイル』の奥に見える王宮に一瞬目をやると、俺の方に体を向けて深く頭を下げたのだった。

「雄二、あなたが不在の間に勝手な行動を取って、本当にごめんなさい......。私やみんなの事を助けてくれて、本当にありがとう。」

  そんな彼女の一言を聞いた『特殊異能部隊』はそれに足並みを揃える様にしてその場で整列をして、跪いた。

「我々も、助けられた身であります。隊長殿の登場が無ければ、今頃......。心より感謝申し上げます!! 」

  リュイが一言を述べると、皆も深々とお辞儀をした。

  俺は、統率良くお礼を口にする皆の様子に戸惑う。

  ー確かに、彼女達を助けたのは事実だ。


ーーだが、俺はそこまで感謝される程の事はしていない。


  そんな風に俺が焦っていると、森山葉月は俺の目の前にやって来た。

「今回の一件にて、一番救われたのは、この私です。あなたには、感謝してもしきれない程の恩を感じております......。『ベリスタ王国 国王軍 軍帥』として、佐山雄二殿にお礼を申し上げます。」

  森山葉月はそう丁寧な口調でそう言うと、右手を顔の前に突き立てて敬礼をした。

  俺は、そんな彼女の姿を見ると、大いに笑った。


ーーそして、彼女達にこう述べた。


「俺は、大切な仲間を守っただけだ。特別な事をした訳ではないよ。だから、気にしないでくれ。」

  それを聞いた皆と俺との間には、一瞬だけ間ができた。

  その後で、全員が笑い出した。

  俺は、そんな皆の様子に、再び戸惑う。
  
  すると、先頭にいるキュアリスは怒っているのか、少し口を膨らませた後で、俺にこんな事を言った。

「全く......。たまには、『俺がいて良かったな』くらい言ってくれなきゃ。」

  俺は、それに対して、何故か謝罪を述べる。

「そ、そうだったか。すまなかったな......。」

  そんな俺を見ると、彼女は先程の表情と打って変わって笑顔になり、

「嘘だよ! 私は、雄二のそう言うところ、好きだよ!! 」

と、俺に顔を近づけた。

  俺は、キュアリスの言葉の後で、顔を赤くして固まった。


ーー今、彼女の口から出た『好き』と言う言葉を聞いた時......。


  すると、先程まで光のスピードに圧倒されて体を弱らせていた優花は、不敵な笑みを浮かべながら俺に近寄って来て、こう呟いた。

「なるほどね......。」

  そんな優花の一言を聞いた、相変わらず手を繋いでいる桜は、それに反応する様に笑いを堪えて、

「うん、優花の思っている通り。桜は、二人の事、誰よりも知っているから......。」

と、含みのある言い方をした。

  俺は、そんな二人のやり取りから何かを察して取り繕う。

「お、お前ら、くだらない事を言ってるんじゃない!! 」

  それを聞いたキュアリスは、余りピンと来ていないのか、首を傾げていた。

  俺達がそんな風に戻って来た事への喜びを表現していると、街の入り口の門の辺りから、一人のスーツ姿の女性が俺達の元へとやって来た。

「皆さん、早くご帰着した事、嬉しく思います。王女様の方も、皆さんの身を案じておりますので、是非とも一度、王宮の方へ足を運んで頂けると、幸いです。」


ーーその女性は、そう促すと、ゆっくりと再び『首都リバイル』の入り口の門へと歩き始めた。


  彼女のそんな所作に対して、俺達も後ろをついて行く。


ーー少し前に起きた出来事がまるでなかったかの様に振る舞うアメールの後ろを......。


  理由は定かではない。

  だが、あの時の事は、黙っておいた方が良いと考えた後で、俺は彼女の後ろ姿を見たのだった。
 

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