天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第151話 これからに向けて。


ーーーーーー

  すっかりと落ち着きを取り戻した森山葉月は、俺に深々と頭を下げた。

「お見苦しい所をお見せして、大変申し訳ありませんでした。これでは、私、軍帥失格ですね......。」

  彼女がそう謝罪を述べると、俺はそんな彼女にこう返答をする。

「いやいや、気にする必要は無いよ。それよりも、心配事が......。」

  俺はそう呟くと、『特殊異能部隊』によって広場に集められて気を失っている、フードの女と赤髪の少年、それに、悠馬の方へと目をやった。

  すると、森山葉月はそんな三人を見るなり、大きくため息をつく。

「確かに、今は眠ったままなのですが、幾ら拘束した所で、目を覚ました時、再び『異能』を用いて暴れ出してしまっては、大惨事を引き起こしかねないですからね......。」

  俺はそれを聞くと、頭を抱えた。

  どうすれば、彼らを安全に『首都リバイル』運べば良いのだろうか......?

  フードの女と赤髪の少年の二人は、非常に危険な思想の持ち主だ。

  きっと、死ぬ気で俺達に牙を剥いてくるであろう。

  それに、考えたくはないが、悠馬だって、もしかしたら......。

  俺がそんな風に打開策を考えていると、先程まで森山葉月が泣いているのを見て、共に号泣していたニルンドが俺の方へとやって来てこんな事を口にした。

「やはり、この場で処刑してしまうのが、最善の方法なのではないか......? もし仮に、この者達が暴れ出してしまっては、我々では対処しきれないぞ......? 」

  彼女のそんな発言に対して、俺は首を大きく横に振った。

「それは、そうなのだが......。この者達は、今後の戦争において、重要なんだよ。未知数な敵国の情報を引き出すのにな。元親友とかは関係なく......。」

  俺がそんな風にため息をつくと、ニルンドはそれに賛同した。

  すると、森山葉月は悩ましい表情を浮かべながら、こんな事を呟いた。

「あの時、この人達が放った『異能』封じの『魔法』を作用させられたなら、事は簡単に進むのですけどね......。」

  彼女の言葉を聞くと、俺は一つ疑問に思う。

  『異能』封じの『魔法』......?


ーーそんな物が存在するのか......?


  俺はそう首を傾げていると、街の入り口の方からこんな声が聞こえた。

「それなら、僕に任せてください!! 」

  その弱り切って、振り絞るように出した声は、脆弱な存在である事がすぐに伝わって来た。

  それにしても、この声って......。

  俺はそう思いながら、その場所へと振り返ると、そこにいたのは、傷だらけになったフリードだった。

「お前、何でここに......。」

  俺が驚きながらそんな事を口にすると、血まみれのフリードは、

「それよりも、今は『異能』封じの『魔法』をかける事が重要です!! 雄二さん、僕の言う通りの手順で手伝って貰っても良いですか?! 」

と言うと、急いで気を失う三人の前にしゃがみ込んだ。

  その後で彼は、俺にビー玉程の大きさをした水の『異能』を作り出させると、そこに向かって詠唱を始めた。

そして、その『異能』をゆっくりと体の中に埋め込む様に指示され、俺はその通り三人に三つの『異能』を当てがった。


ーーすると、彼らの体は黒いオーラを一瞬放つと、すぐに元通り『異能』を使っていない状態に戻ったのだ。


  それを確認すると、フリードは相変わらず弱った口調でこう言った。

「これで、彼らが『異能』を使う事は出来なくなりました......。」

  ニコッと笑いながら俺にそう呟いた彼は、その行為が終わるとすぐに、その場に倒れ込んだ。

  きっと彼は、気力でここまで辿り着いたのだろう。

  それにしても、どうしてフリードがここに......。

  俺はそう思うと、森山葉月に治療をする様に指示を出した。

  それに対して彼女は、小さく頷くと、手元を緑色に光らせた後で、フリードの体に治療を始めた。

「まさか、あの不思議な『魔法』の使い手が、我が国家のフリードによるものだとは、想像出来ませんでしたね......。多分、『ヘリスタディ帝国』の仕業によるものでしょうか......。」

  彼女はそんな事を口にした。

  その後で、すっかりと傷を治すと、森山葉月はすっかりと破壊された街を丁寧に直す桜の側にいるキュアリスや優花の方へと顔を向ける。

「ところで、色々と聞きたい事があります。とりあえず、『首都リバイル』に一度戻った時、色々とお話しして頂けませんか......? 」

  俺はそれを聞くと、一連の非現実的な時間を思い出す。

  よく考えると、俺が桜やアメール、ニルンドと共に『霞神社』を目指してからと言うもの、落ち着く時間は存在しなかった。

  だからこそ、俺自身も気持ちの整理をつけたかったのだ。

  そう思うと、先にある『ヘリスタディ帝国』の国王討伐を目指す前に、一度体制を整える必要があると考えた。

  もし、相手の場所へ攻め込むならば、光の『異能』があれば、短時間での移動が可能だ。

  ならば、『首都リバイル』で今回起きた事を説明する時間は充分にあるだろう......。


ーーそれに、悠馬の今後についても、しっかりと話をせねば......。


  俺はそんな風に決心を固めると、すっかり街を元通りにした桜を見た後で、そこにいる皆に向け、こう宣言した。

「それでは一度、『首都リバイル』に戻ろうと思う!! これからの事はそこでゆっくりと話すとしよう!! 早速準備に取り掛かってくれ!! 」

  俺がそう叫ぶと、皆は威勢良く返事をした。


ーーそして、皆の準備が終わったのを確認すると、俺は首都の方向に向けて光の道を作り出した。


「じゃあ、帰るとしようか。」

  俺がそう音頭を取ると、皆は帰途へと就いた。


ーーこれからの流れを決める大事な話をする為にも......。
 

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く