天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第148話 葉月の回想。


ーーーーーー

  森山葉月は、佐山雄二から伝えられた浩志の伝言を聞くと、ふと、小学生の時の事を思い出す......。ーー


ーー「いいか、葉月!! 今日から俺達は『町のお助け隊』だ!! みんなの事を守る正義の味方になるんだ!! 」

  幼い浩志は、朝方の人気のない公園で、戦隊モノのレッドの人形を右手に突き上げながらポーズを取って、幼馴染である森山葉月にそう宣言をした。

  それを聞いた幼い森山葉月は、小さくため息をつく。


ーーまた、下らないごっこ遊びが始まったと......。


「何ですか、それは......。どうせ、すぐ飽きてしまうんでしょう。」

  森山葉月がそう呆れた口調でノリノリになっている浩志に返答をすると、彼は苦笑いをする。

「今までの『プロ野球選手を目指す』とか、『科学者になる』とは訳が違うぞ。俺は、今日テレビで特撮を見て、感動したんだ。俺も、あんな風に人の事を助けてみたいってな!! 」

  そんな浩志の幼すぎる発言に対して、彼女は再びうんざりとする。


ーー全く......。まあ、すぐ終わるでしょう。なら、少しくらいは付き合って上げましょうか。


  そう考えた森山葉月は、ニコッと笑いながら立ち上がって、

「わかりましたよ。そのお遊び、付き合って上げましょう。それで、『町のお助け隊』とは、何をするんですか? 」

と、彼にその組織の概要について問いかけた。

  すると、浩志は『待ってました! 』とばかりに万遍の笑みでリュックからノートを取り出して、一ページ目を開いたのだ。

「これが、『町のお助け隊』のルールだ!! 」

  そんな得意げな浩志の言葉を聞くと、森山葉月はそのノートを彼から渡されて目を通した。


ーーそこには、余り綺麗ではない字で、掟が書いてあった。


「これは......? 」

  森山葉月がそんな風にノートを見ながら疑問を口にすると、浩志はそれについて胸を張って説明を始めた。

「まあ、そのノートに書いてある通りだよ!! 『困っている人を見たら、力になる!! 』。それだけだ!! 簡単だろ? 」

  それを聞いた森山葉月は、少しだけ否定的な事を言った。

「なんかそれって、ヒーローとは違って地味じゃないですか? 」

  そんな彼女の発言に、浩志は腕を組んで少しだけ考えるそぶりを見せる。

「まあでも、只の人助けって考えれば、なんか気持ちいいじゃん!! 」

  彼はニコッと笑いながらそう答えた。

  それに対してうんざりとした森山葉月は、

「また、適当な事を......。」

と、思いつきで行動しているとしか思えない彼に振り回される事を悟った。


ーーしかし、その後で浩志は、突然顔を赤らめモジモジとし始める。


「後、もう一つ掟があるのだが......。」

  森山葉月は、そんな彼の口にした言葉を聞くと、首を傾げる。

「それは、何ですか? 」

  彼女の問いかけに浩志は少しだけ恥ずかしそうな表情を浮かべながら、こう答えるのだった。

「これは、二人だけの秘密の組織だ。だから、みんなに話しちゃダメだから。親にもだ......。」

  それを聞いた幼い森山葉月は、何故、彼が顔を赤くしているのかよく分からなかった。


ーーその時はまだ......。


ーーーーーー

  それからと言うもの、彼は人助けに没頭する様になった。

  今まで適当な飽きっぽい性格とは打って変わり、町で見かける困っている人に手を差し伸べた。

  重い荷物を持ったおばあさんや、転んで泣いてしまっている子供、時には行方不明になった犬の捜索なんかもした。

  森山葉月は、そんな彼の背中を追いかける様にして、毎日を過ごしていた。

  彼女自身も、『町のお助け隊』での日々に充実感を覚える。

  助けた時の達成感を感じていたから......。


ーーそして、そんな日々が半年程過ぎた頃、いつもの様に人助けを終えて、あの人気のない公園で再び、二人ベンチに座って会話をする。


「今回は飽きずに続いていますね。」

  森山葉月が微笑みながらそう浩志に喋りかけると、彼は万遍の笑みでこう答えた。

「最初は思いつきでやっていたんだけど、なんか、人を助けるのって、凄く良い事だなって思ったよ!! 」

  それを聞いた森山葉月は、フフッと笑った。

「私も、同じ気持ちですよ。解決した時の喜びは、忘れられません。」

  そんな彼女の発言に対して、彼は再びモジモジとしながら、こう問いかけた。

「掟......。ちゃんと守っているか......? 」

  森山葉月は、彼のその質問に、最高の笑顔で答えた。

「当たり前です。『町のお助け隊』の秘密は、ちゃんと守っていますよ!! 」


ーーそれを聞いた浩志は、凄く嬉しそうな顔をして、立ち上がり、

「それは良かった!! じゃあ、明日も町の為に働かなきゃいけないから、今日はもう帰るか!! 」

と言ったのを最後に、二人は解散をする。

  そして、公園を出た時、お互いが反対の方へと足を向けて帰って行った。


「また明日!! 」

  そんな浩志の明るい発言を聴きながら......。


ーーこれから森山葉月の身に何が起こるかも分からぬままに......。
 

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