天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第147話 軍帥と幼馴染。


ーーーーーー

  俺は今、元の世界で唯一の親友をこの手で殺した。

  それはある意味、懺悔の形でもある。

  悠馬は俺との時間に終止符を打つ事で、その人生を終わらせようとした。


ーー最後の力を振り絞って......。


  彼の攻撃の形を見た時、俺は思った。

  悠馬はそれを放った時、死んでしまうと......。

  だが、俺はそれを止められなかった。

  それは、彼が最期を飾る為に起こした行為だったからだ。


ーーしかしそれは、『仕方ない』で済ませられる程、簡単な事ではなく、自分に対しての後悔もある。


  それを象徴する様に、悠馬が死に際に俺の耳元で囁いた、

「今まで本当にすまなかったな、雄二。」

という言葉に起因する。

  俺はそれを聞いた時、悠馬の根本は何も変わっていない事を理解した。

  多分、何か強い感情に揺り動かされて、結果、人々を苦しめる人間になってしまったのだと......。

  だが、今となってはその理由も分からない。


ーー何故ならば、煌々と燃える街の中でうつ伏せになり動かなくなった彼が、俺の目の前にいるからだ......。


「悠馬......。」

  俺は、震える声でそう呼びかけると、動かなくなった彼を思い切り抱き抱えた。

  目を瞑り、力のないその体の重みを感じながら......。

  そして、俺はその場に泣き崩れる。


ーー後悔の気持ちと共に......。


  すると、キュアリスはそんな俺の背後にやって来て、ポンっと俺の肩を叩いた。

「雄二は何も悪くないよ。敵対してしまった以上、戦う事は避けられなかったの。それに、彼の最期の願いを叶えたのは、紛れもなく雄二なんだから......。」

  俺は、キュアリスのそんな言葉を聞くと、俯いてこう呟いた。

「本当にこれで良かったのか分からない。でも、一つ決めた事があるよ......。」

  それを聞いたキュアリスは、真剣な表情を浮かべる。

  きっと、彼女は俺の言いたい事が既に分かったのであろう。

  悠馬は、仲間である『ヘリスタディ帝国』の人間達に襲われた。

  それは、悠馬自身が国家に牽制されていた事の裏返しだ。

  その黒幕とも言えるのは、国王。

  キュアリスは先程、『常套手段』という言葉を口にしていた。

  それならば、指揮を取っているのは、間違いなく国の長である。

  フードの女にしても、赤髪の少年にしても、どちらも洗脳に近い形で国王を崇拝している。

  しかも、その思想は危険極まりない程に偏っていて、自国に刃向かう者は躊躇なく切り捨てると言う考えに基づいている。

  悠馬はその中で、何か反発行為を行ったのであろう。

  あれだけ痛めつけられたのだから......。

  俺は、これだけ傷つく事が分かっているにも関わらず、何故、悠馬は国王に反発しようとした理由が気になった。


ーーそれならば......。


  俺はそう考えると、悠馬をゆっくりと地面に寝かせると、立ち上がって皆の方へ振り返った。

  そして、こう宣言する。

「俺は、『ヘリスタディ帝国』に攻め込もうと思う!! これ以上、危険な思想を蔓延させる訳にはいかない!! そして、そこで国王を討伐する!! 」

  それを聞いたキュアリス、桜、優花、森山葉月に、ニルンドや『特殊異能部隊』の面々は、頷いた。

  その後で、森山葉月は、ニコッと笑う。

「そうですか......。ならば、止める理由がありませんね。今回の戦闘、あなたが来なければ、我が国の危機に遭遇しておりました。大変、感謝申し上げます。それに......。」

  彼女はそうお礼を述べた後で、倒れたまま動かない悠馬の事を見ると、ゆっくりと彼の前に座り込み、そのまま胸元に触れた。

「本来ならば、助からないかもしれませんが、今ならまだ、ごく微量の生気があるので、可能性はあります。」

  森山葉月はそう言うと、右手に緑色のオーラを纏った後で、彼の全身にくまなく触れて行く。

  すると、悠馬の体の傷はみるみる内に消えて行き、本来の姿を取り戻して行った。

  そして、最後に頭に手を当てた時、彼は気を失ってはいるものの、自発的に呼吸を始めたのである。


「これは一体......。」

  俺がそんな風に驚きながら森山葉月に問いかけると、彼女はニコッと笑いながらこう答えた。

「本当は、敵軍の指揮官を助けるなど、言語道断ではあるのですが、今回の戦闘の功労者の親友と聞いてしまったら......。実は私、回復を一番得意としているんですよ。先程のキュアリスさんに関しては、先に息絶えてしまったので、助ける事は出来ませんでしたが......。」

  それを聞いた俺は、喜びの表情を浮かべる。

「ということは、悠馬は助かるのか......? 」

  俺が泣きそうな声でそう問いかけると、森山葉月は笑顔でこう言った。

「はい、ここまで回復したのであれば、問題は無いと思いますよ! 」

  俺は森山葉月の返事を聞くと、泣きながら彼女の両手を掴んで、何度もお礼を言った。

「ありがとう、親友を助けてくれて......。」

  それに対して、森山葉月は困惑しながらも、明るい口調でこう答えた。

「これは、私自身を助けてもらったお礼でもありますので......。」

  彼女はそう言った後で、昔の事を思い出す......。ーー


ーー「浩志!! また、無茶をして!! もし、私がいなかったら、死んでいたんですよ!!」

  襲い来る大軍を倒した後で、その場に倒れ込んだ佐山浩志は、そんな森山葉月の言葉に無理やり笑って見せた。

「お前がいなかったら、こんな無茶しないよ......。いつもありがとな、葉月......。」

  それを聞いた森山葉月は、小さく微笑んだ後で、手元に緑色のオーラを出し、彼の全身を隈なく回復させる。

「全く......。ワガママにも程がありますよ......。」ーー

  森山葉月は、佐山浩志の助けになる為に、必死に草の『異能』を鍛え続けた。

  無鉄砲でワガママで、正義感だけで動いてしまう、危ない彼の支えになる為に......。

  そんな過去を思い出した後で、森山葉月はフフッと微笑んだ。

「この力を使うのは久々ですね......。」

  それを聞いた俺は、彼女の頭の中から『佐山浩志』という名前が浮かんでいる事に気がついた。

  ならば、今、伝えなければ。

  俺はそんな風に思う。


ーー兄から預かったあの言葉を......。


  そして、俺は森山葉月の目をしっかりと見た後で、こう告げたのだ。

「実は、俺はあちらの世界に向かう中で一度、死んでしまっていたんだ。信じてもらえないかもしれないが、そこで俺は『死後の世界』で兄貴と再会したんだよ......。」

  それを聞いた森山葉月は、少しだけポカンとした顔をする。

  余りにも非現実的な話に、少し戸惑っているのかもしれない......。

  そんな事を考えながらも、俺は会話を続けた。

「そこで、兄貴からお前に伝言を預かって来たんだ。」

  森山葉月は、俺の言葉に対して、首を傾げながらこう問いかけた。

「そうだったんですね。それで、その伝言とは......? 」

  俺は、森山葉月が問いかけたその質問に、ゆっくりと答える。


ーー『町のお助け隊、隊員!! 隊長は今日も元気だ!! あの日誓った約束は今も覚えている!! 俺は参加出来なくなってしまったが、これからも、市民の為に頑張ってくれ!! 』ーー


  俺がそれを伝え終えると、森山葉月はみるみる内に表情を崩して行った。


「あなた、本当に死後の世界で浩志と会ったのですね......。」

  そんな事を口にしながら......。

  そして、森山葉月は嗚咽を漏らして泣き出した。


ーー会いたくても、もう二度と会う事の出来ない存在を胸の中に感じて......。


  森山葉月は、幼少期に佐山浩志と秘密裏に結成した『町のお助け隊』の事をしみじみと思い出しながら、その場に膝をついて顔を覆ったのだ。


幸せに満ち溢れていたあの日々を思い出しながら......。

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