天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第145話 俺の成長。


ーーーーーー

  激しい殴打により気を失った悠馬を冷めた目で見つめる雪絵と幹雄は、先程まで潜伏していた街の外れにある歪な家のある方角を眺めた。

「やはり、『魔法』により残兵を動かす役目をヤツに任せたのは正解だったな......。」

  雪絵はそんな風に話し出す。

  それに対して幹雄は、ゲタゲタと笑いながら、

「確かに間違いないな!! あのフリードとか言うヤツ、我が軍の『魔法使い』は持っていない様な技術を沢山持ってやがった!! それにしても、『魔法』で操った後で『魔法』を使わせるなんて、なかなか面白いな!! 」

と、不思議な感覚を持っているのか、そんな風に答えるのであった。

  その後で二人は再び悠馬の方を睨みつける。


ーーすると、暫く気絶した彼を見つめた後で、幹雄はこんな提案をした。


「あの、一つ思ったんだけど、森山葉月をぶっ殺したら、このカスを『ヘリスタディ帝国』に持って帰って国王様の前で拷問にかけるってのはどう? その後で処刑して首を晒すんだ!! そうしたら、国の中にいる謀反者達が反発する事も無くなるんじゃないか? 」

  それを聞いた雪絵は、幹雄の頭を撫で回した。

「それは、素晴らしい。さすがあたいの弟だね!! では、それまでの間、逃げない様にあそこの柱に鎖で繋いでおきましょう。」

  彼女はそう言うと、傷だらけになった悠馬を土の『異能』によって鋼鉄の鎖を作り出すと、近くにある鉄骨の柱に厳重に括り付けた。

「『異能』封じの『魔法』が有効だから、大河原悠馬がここから逃げ出す事は無いだろう。では、これから森山葉月を殺しに行くとするか......。」
 
  雪絵はそう提案すると、街全体で響き渡る爆音の方に耳をやる。


ーーそろそろ、反対の広場に到着する頃だ......。


  そんな事を考えながら......。

  しかし、そんな時、目を覆う程の光が街全体を照らした。

  それに対して、雪絵は動揺をする。

「一体、何が起きたんだ?! 」


ーーそんな風に二人が焦りを見せていると、彼女達は悠馬と森山葉月に掛けたはずの『魔法』の効力が消えて行くのを体の内部から強く感じた。


「もしかして......。」

  幹雄は最悪の事態を想像しながらそう呟くと、空を見上げた。


ーーすると、そこにいたのは、佐山雄二を始めとする『ベリスタ王国』の軍勢だったのだ。


  それを見た二人は、舌打ちをする。

「何で、あいつらがいるんだ......? それに、さっき死んだ筈の『聖騎士』まで......。」

  雪絵は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべると、そんな事を口にした。

  その後で、全身に闇のオーラを放ちながら来たる相手に向け、構えを取り始めた。


ーー国王の為にも......。


ーーーーーー

  俺は、空から街の端まで移動すると、主要と思われる『ヘリスタディ帝国』の二人の姿が見えたので、全身に力を込めた。

  こいつらが、この一連の事態の首謀者だな......。

  その背後を見ると、ボロボロになって鉄柱に括り付けられた悠馬の姿があった。


  俺はそれを見た時、居た堪れない気持ちにさせられる。


ーーかつての親友の変わり果てた姿を前に......。


「『ヘリスタディ帝国』って言う国は、仲間を簡単に排除するんだな......。」

  俺は身震いをしながらそんな事を口にした。

  すると、隣で剣を構えるキュアリスが口元に力を込めながら、

「これが彼らの常套手段だよ。裏切り者や、使えないと判断された者は、際限無く消される。そうやって大きくなった国だから......。」

と、語尾を強めた。

  俺はそれを聞くと、沸き立つ程の怒りを感じながらもう一度悠馬の方を眺めた。


ーーあの国は、腐っている......。


  その後で、俺が作った風の『異能』によって空に浮いている皆を横目に、一人で『ヘリスタディ帝国』の首謀者の二人の元へと降り立った。

  俺を見た相手は、闇の『異能』を体から放ちながら構えている。

「何で佐山雄二がここにいるのかはわからないが、国王様に刃向かう気ならば、殺す他ない!! 」

  赤髪の少年は両手を大きく広げた後で、そう叫びをあげる。

  フードの女も、殺意に満ち溢れた目で俺を睨みつけながら構える。

  俺は、そんな二人を見た時に、ふと思った。

  どうやら、この二人が俺に勝てる事は絶対にないと......。


ーー『試練』の時に会った龍やランドリー・シェムと比べて、この二人の存在は余りにも小さ過ぎると......。


  二人の敵から感じられる力は脆弱な物であり、今まで戦って来た相手すらも力によって否定する程である。

  しかし、それよりも俺が思うことがある。

  フードの女と赤髪の少年の手は震えている。

  多分、彼ら自身も分かっているのであろう。

  二人では絶対に俺には勝てない事を......。

  だが何故、この二人はそれが分かっているにも関わらず、ここまで必死に俺に歯向かってくるのであろうか。

  きっとそれは、守りたいものの為ではない。

  何故なら彼らは、怨みにも似た表情を浮かべているからだ。

  俺はそんな事を考えながらも、彼らは闇の『異能』を放ちながら真っ直ぐに立ち向かって来た。

  それを光のオーラでいとも簡単に打ち消すと、手に炎の『異能』を纏わせて赤髪の少年を勢い良く殴りつけた。

  少年はその後すぐに、崩れかけた街の建物へと息つく間もなく吹き飛ばされた。

  彼はそんな俺の攻撃に気を失う。


  それを見たフードの女は、その隙を突くかの様に俺の脇に入り込み、闇の刀を突き刺そうとした。

  だが、その動きすらも俺からしたらスローモーションに見えた。

  そして、その攻撃すらもヒラリと交わすと、俺は驚くフードの女の腹にすかさず蹴りを入れた。

  すると、フードの女はその攻撃を受けた直後に口から血ヘドを吐き、その場に倒れて動かなくなった。

  俺は、自分の起こした余りにも一瞬の出来事に驚いた。

  『試練』を受けて、光の『異能』を覚えた事により、俺は今までよりも格段に強くなっていたのだ。


ーーしかも、基礎的な身体能力や動体視力など、俺に関わる物は全て人外なまでに成長していた。


「まさか、この短時間で......。」

  その様子を空から見ていた森山葉月は、そんな風に驚いていた。

  俺は、そんな彼女の一言の後で、皆が歓声を上げているを聞くと、全員の方へと振り返った。


「これで、終わったのかな......? 」

  俺が微笑みながらそう言うと、キュアリスと桜は俺の元へと降りて来て、喜んでいる。

「びっくりしたよ!! こんなに強くなっちゃったなんて!! 」

  キュアリスは俺の両手を掴みながら、そう讃えた。

「桜も、覚悟してたのに、もう終わっちゃったんだね!! 」
 
  桜は俺の左足にしがみつきながら拍子抜けしている。

「いや、それに関しては俺が一番ビックリしているよ。こんなにも強くなっているなんて......。」

  俺はそう言いながらも、空から送られる歓声に対して、答える様にして息を吸い込んだ。


ーーとりあえず、これでこの戦闘は終わった......。


  そう思いながらも。
 
  そして、この戦いに終止符を打つ為に叫ぼうとしたその時だった。


ーー背後からは鈍く鎖が千切れる音がする。


  俺はそれを聞くと、慌ててその音の方向に体を向けた。

  すると、そこにはボロボロになりながらも全身からおびただしい程の闇を放った悠馬の姿があった。

  その闇は、天空を二つに割るかの様に果てしなく高くまで伸びていた。


「終わりになんてさせねえぞ!! 」
  
  悠馬はそんな叫び声と共に、俺の方へとゆっくりと歩き出してくる。

  俺はそんな彼を見ると、複雑な気持ちになる。

  きっと、今の彼には昔の俺だったら絶対に勝てなかったであろう......。


ーーしかし、今の俺は負ける気がしない。


  だからこそ、かつての親友と決着をつけなければならない事が辛かった。

  そう思いながら俺は、静かに光のオーラを纏う。

  この戦闘の落とし前をつける為にも......。

  だが、そんな中、俺は悠馬の姿からある事に気がついた。


「あれ......? 」
 

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