天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第141話 守るべきもの。


ーーーーーー

  森山葉月は、攻撃の手を緩めない。

  十数名残った敵軍の『異世界人』達を、持ち前の『異能』を用いて攻撃し続けるのだ。

  反射神経や運動神経に長けていた彼女は、相手の容赦ない攻撃をあっさりと避けながらも敵を一人一人確実に倒して行く。

  それは、軍帥である所以を身を以て表しているかのごとく......。

  だが、最後に残った三人に関しては、少し厄介な存在であった。

  大河原悠馬、それに、赤い髪の少年に、フードを被った怪しく微笑む女。

  その者達は、まるで森山葉月のこれから取る動きが分かっているかの様にあっさりと彼女が発した闇の『異能』を避ける。

  しかも、チームワークとも言える程に息の合った動きで......。
  
  今も丁度、少年により炎で作られた虎が、彼女めがけて突進をしてくる所だった。

  それを森山葉月は、水の壁を作る事で消失させた。


ーーだが、彼女がその攻撃に気を取られている間に、背後に回ったフードの女は、『異能』を使用する事なく森山葉月に接近して背中を斬りつけようとした。


  それに対して森山葉月は、グッと体に力を込めて風の『異能』で猛スピードで空に飛び上がる事で避けて見せた。

「全く......。厄介な相手ですね......。」

  森山葉月は、地上から彼女目掛けて飛び込んでくる二人を軽く交わすと、そんな事を呟いた。

  だが、そんな時気がついた事がある。

  先程まで戦闘に参加していた筈の大河原悠馬が見当たらない。

  彼女はそんな疑問を抱きながら、拳くらいの大きさをした雷の弾丸を連発してくる少年の攻撃を目にも留まらぬ速さで回避して、辺りを見渡した。

  『特殊異能部隊』に関しては、先程の闇メテオの攻撃により混乱している隙に、土の『異能』によって街の外れまで避難させた筈。

  だから、『ヘリスタディ帝国軍』によって危害を加えられる事はないだろう。

  それに、キュアリスの亡骸も別の場所へ......。


ーーでは何故、大河原悠馬は姿を現さないんですか......?


  森山葉月はそんな風に首を傾げて少年の雷の弾丸を避けると、とりあえず、目の前の敵を倒そうと全身に力を込めた。
 
  しかし、そんな風に気合を入れたところで、街の反対側の方から爆音が響き渡った。

  それを聞いた赤髪の少年とフードの女は、何かの合図を受け取ったかの様に森山葉月への攻撃の手を止め、その方向へと暴風を生じさせて去って行った。

  森山葉月は、そんな二人の行動から、少しだけ嫌な予感がした。

  だからこそ、急いで街の外れへと向かう。

  何か良からぬ事が起きた様な気がして......。


ーーそして、そこに辿り着いた時、彼女は絶句した。


  何故ならば、そこで大河原悠馬と攻勢を引き起こしていたのは、紛れもなく『特殊異能部隊』の面々だったからだ。

  どうやら、森山葉月が戦闘を繰り広げている間に、目を覚ましてしまったらしい......。

  そんな中、空中で呆然とする彼女を見つけたリュイは、ニコッと笑いながらこう叫んだ。

「軍帥殿、先程は申し訳ありませんでした......。私達はまだ、戦えます!! ここに骨を埋める覚悟で臨みます!! 」

  それを聞いた森山葉月は、言葉を失った。

  そして、強く思う。

  どうしてこんなにも早く起きてしまったのかと......。

  彼女達は、キュアリスが命を持って守った存在。


ーーそれを考えると、森山葉月は歯ぎしりをしながら一つの強迫観念に迫られる。


  『特殊異能部隊』だけは、何に変えても助けなければならない。

  彼女達では、『異世界人』に勝つ事など絶対に出来ないのだから......。

  しかも、大河原悠馬は彼女達がその場において弱点になる事が良く分かっている様で、執拗に『特殊異能部隊』を相手にし続ける。

「このままではまずいです......。」

  森山葉月はそう考えると、『異能』の攻防を繰り返す彼女達の前に立ち、大河原悠馬に剣を構えた。

  全身に炎のオーラを纏いながら......。

  すると、悠馬は闇のオーラの中で、ニヤニヤとしながらこんな事を言った。

「今、こいつらと戦っているところなんだから、邪魔しねえで貰ってもいいか?! 」

  それを聞いた森山葉月は、手に炎を溜め込みながらこう答える。

「今の相手は、私です。」

  彼女のそんな言葉を聞くと、悠馬は相変わらず悪巧みした表情を浮かべながら、

「お前が言いたい事はよく分かるよ。はっきりと言っちまった方が良いんじゃねえか? 『足手まといだ』ってよ!! 」

と、語尾を強めて叫ぶ。

  それを聞いた『特殊異能部隊』は、次第に騒めき出す。

  彼の言葉の後で、森山葉月は、背後に控える彼女達が動きを止めてしまった事を、感じ取った。

  皮肉にも、大河原悠馬は的を得た事を言っている。

  今、この場において、『特殊異能部隊』は、余りにも力不足な存在だ。

  例え天地がひっくり返ったとしても、この三人の『異世界人』には、絶対に勝つ事は出来ない。

  しかし、森山葉月はそんな事実を決して口にすることは無かった。

  彼女達を、傷つけたく無かったからだ。


ーーだが、そんな優しさは最悪の形で壊されてしまった。


  天敵である『ヘリスタディ帝国』の者から告げられてしまったのだから......。

  そんな彼女達は、背後から森山葉月にこう訴えかける。

「大丈夫です!! 軍帥殿!! 我々は元より死ぬつもりで来ています!! 例え、足手まとい扱いされたとしても、決して攻撃の手を止めるつもりはありません!! 」

  森山葉月は、『特殊異能部隊』のそんな話を聞くと、震え上がる。

  きっと、彼女達は闇の『異能』を受けた時の事は、覚えていないのであろう。


ーーそれに、キュアリスの死についても......。


  だからこそ、これだけ猛々しく宣言をできるのだ。

  森山葉月は思う。


ーーこのままの状態で、本当に彼女達を守る事が出来るのであろうかと......。


  そして、森山葉月はそう考えると、後ろを振り返る事なく意気込む『特殊異能部隊』に向け、こう呟いた。

「あなた方がいては、足手まといになります......。今すぐにここからいなくなってください......。」

  それを聞いたリュイは、取り繕う様な口調で森山葉月に問いかける。

「ぐ、軍帥殿!! な、何を仰いますか?! 我々『特殊異能部隊』も、この命を張ってでも......。」

  彼女がそんな風に話し出すと、森山葉月はそれを遮断してこう怒鳴りつけたのだ。

「早くここから消え失せろ!! 」

  それを聞いたリュイを始めとした『特殊異能部隊』は、一度固まる。


ーーその後で、涙を流しながら街の外の方へと走り出したのだった。


  それを確認した森山葉月は、彼女達の行く方向に闇の通り道を作る。

  弱い彼女達を狙う赤髪の少年とフードの女からの攻撃を受けぬ様に......。

  その後で、再び悠馬へと視線を移す。

「これでやっと、本気を出せますね......。」

   それに対して悠馬は、ニヤッと笑いながら、

「相変わらず、『ベリスタ王国』には、馬鹿が多いみたいだな!! 」

と、罵声を浴びせた後で、禍々しい程の闇の『異能』を目の前に作り出した。


ーーそして、二人の攻撃は交わる。


ーー天空まで響き渡る程の轟音を立てながら......。
 

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