天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第134話 最後の試練。


ーーーーーー


ーーキュアリスは、森の深くで輝くその光に惹かれた。


  別に、特別な感情がある訳ではない。

  ただ、『行かねばならない』という感覚に苛まれる。


ーー何故だろうか。


  彼女は、その光を追いかけている間、自分が死んでしまった事実すらも打ち消すかの如く、落ち着くのだ。

  そして、歩き出す。

  何があるかも分からぬその場所へと......。

  しかし、その光が大きく見え、一歩一歩踏み込む度に、キュアリスは走馬灯の様に自分生い立ちを思い出した。


ーー『首都リバイル』で生まれてから暫くの間、続いた家族との日々。


  母の作る料理が大好きだった幼い自分。

  両親と手を繋いで行った街の中にあるおもちゃ屋で買ってもらった熊のぬいぐるみ。

  それから......。


ーー彼女は、それからの生い立ちを思い出すと、心が荒んでいくのが分かった。


ーー先程の安心感すらも忘れて......。


  国の内政を司る役職に就いていた父を、陰謀により暗殺され、それからおかしくなってしまった母は、キュアリスを残して自殺をした。

  それから孤児院で育った彼女は才能が開花して、幼い頃から『聖騎士』などと謳われて数々の戦地へと赴いた。

  大切な人も沢山失った。


ーー『二代目聖騎士』佐山浩志や、孤児院の仲間達......。


  そんな日々を思い出しながら、キュアリスは悲しい気持ちになる。

  これが、私の人生。

  これが、私の運命なんだ。

  そう自分を結論づけて生きてきた。

   キャロリール王女に、『もう戦わなくていいんだ』と言われた時は、自ら誰もいない場所へと隠れた。

  人と接する事が怖かったから。


ーー私は、人殺しだから......。


  彼女は自分の両手を見ると、今まで死んで行った仲間、それに、後任の『聖騎士』を弔いながら生きていた。


ーー孤独の中で。


  それから彼女は廃村と化した場所で一人、生きた。

  このまま終わるであろう不毛な時間を、後悔に充てる為にも......。

  しかし、そんな時、一人の青年が森からやって来た。


ーー『二代目聖騎士』の時と同じように......。


  その出会いが、彼女の人生に光を与えた。


ーー生きる意味を見出せた。


  だから戸惑う。

  どうしていいか分からなくなる。

  今は、自分が死んだ事に後悔すら覚えてしまう......。

  そう考えると、キュアリスは、その光に向け走り出した。

  居るはずのない彼の背中を追いかける様にして......。


ーーもう戻れないあの日々を思い出しながら......。


ーーもう一度だけ雄二に会いたい......。


  そんな叶わぬ夢を胸に抱きながら、彼女は光の元に辿り着いたのだ。


ーーーーーー

  俺は、何も言葉を発する事なく本殿の奥にある薄暗い部屋で、その時を待っている。

  そんな、絶妙な緊張感が伝わっているのか、アメール、ニルンド、優花も合わせる様にして黙って座り込んでいるのだ。

  桜に関しては、先程の戦闘で疲れが溜まっているのか、俺に寄り添う形で半目になり、眠たそうな表情を浮かべている。

  俺達の醸し出す張り詰めた空気を横目に、『崩壊の神』は、微笑みを浮かべる。


ーーまるで、その時間を楽しんでいるかの様に......。


  俺は彼女の表情に苛立ちを覚えながらも、その何もない時間の中で腕を組んで考える。


ーーこれから何が起きるのかを......。


  そんな風に時間は過ぎ去って、もう既に小一時間が経過していた。

  その時、『崩壊の神』は静かに口を開いた。

「どうやら準備が整った様です。」

  神の報告に俺は、一度生唾を飲み込む。

「そうか......。それで、最後の『試練』とは、一体何なんだ? 」

  俺がそう質問をすると、彼女は入り口の扉の方に目をやった。

「それは、あの扉を開いた時にわかりますよ。」

  それを聞いた俺は、静かに立ち上がる。


ーー少しだけ、震えているのかもしれない。


  恐怖が体を支配するのがよく分かる。

  だが、その震える手にグッと力を込めた。

  もう、迷わない為にも......。

  そんな緊張感の中で、俺は扉に手をかけた。

「では、開けるぞ......。」

  俺がそう皆に告げると、全員が探る様にして小さく頷いた。


ーーそれから俺はゆっくりとその扉を開けたのだ。


  俺達のいる薄暗い部屋とは違い、外の景色は眩く輝いていた。

  俺はそんな外観に目を覆いながら、扉の少し先に、息を上げて俯き、しゃがみ込む一人の少女がいる事に気がついた。

  そして、その顔をマジマジと見た時、俺は言葉を失ったのだ。


ーーこの状況を把握できずに......。


「キュアリス......? 」

  そう、俺の目の前には、紛れもなくキュアリスがいるのだ......。

  そんな混乱の中で俺が呆然としていると、背後から『崩壊の神』が明るい口調で俺に向け、こう告げたのだった。

「それでは、始めましょうか。最後の『試練』を......。」

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    最後の試練までよくこれだけ話し伸ばせたなーと思ったʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ

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