天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第133話 意思を引き継ぎし者。


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  森山葉月は、『ロンブローシティ』入り口の広場にて、間合いを取りながら鬼の形相を浮かべて大軍に一人で立ち向かっている。

  彼女が使う闇の『異能』は、放たれる度に『異世界人』に塗れた『ヘリスタディ帝国』の兵達を次々と倒して行くのだ。


ーー背後で気を失う『特殊異能部隊』の安否を気にしつつ......。


  流石に千を超える兵を前にすると、導き出せる勝算もだいぶ薄くなり、次々と降りかかる数多の『異能』に悪戦苦闘していた。


ーーしかし、そんな中でも、彼女は決して諦めることはない。


  仲間を救う為に自ら命を絶った少女の為にも......。

「キュアリスさんも、なかなか厳しい提案をするものですね......。」

  森山葉月は絶え間なく放たれる火、水、土、草、風、雷、闇の弾丸を、自らの闇のバリアで防ぎながら、そんな事を呟いた。


ーーそれと同時に思い出す。


  佐山浩志が『二代目聖騎士』になったばかりの頃に、たったの二人で立ち向かった戦争の事を......。

  普通に考えたらまず勝てない戦だった。

  しかし、その時も彼は、持ち前の正義感を持ってして、脇目も振らずに果敢に立ち向かった。


ーーまるで、恐怖と言う二文字を忘れたかの様に......。


  彼はその時、どんなに傷つこうとも、攻撃を辞めることはなかった。

  全ては大きな志の為に......。

  それに触発される形で森山葉月は、後を追いかけた。

  そして、奇跡的に敵軍を倒して終えた時、ボロボロになりながら笑顔を見せた彼は、どんな状況であっても優しかった。

  それは、生まれつきのものである事を彼女は知っている。

  幼馴染として、ずっと隣で見て来た生き様であったから。

  だから、彼女は必死に食らいついた。

  人一倍、努力をした。

  どんなに辛くても、笑顔を絶やさなかった。


ーー『この世界を救いたい』と言う余りにも高いハードルを自らに課した彼を支える為にも......。


  そんな事を考えていると、彼女はふと、思う。


ーーこの状況、あなたならどうしますか......?


  森山葉月は、佐山浩志の出す、分かり切った答えを知っている。

  誰よりも彼の事を思っていたから。


ーー馬鹿で、情けない程に真っ直ぐな彼の事を......。


  そんな風に考えると、森山葉月は相変わらず止まらない『ヘリスタディ帝国』の『異能』を抑えつつ、彼がいなくなった事で、ポカリと空いた隣をチラッと見ると、空に大きな闇のメテオを作り出した。

「相変わらず、私の周りには馬鹿が集まるのですね......。」

  そんな事を呟いた後で、少し間合いを取っている『ヘリスタディ帝国』の軍勢に向けて数十発のメテオを落とした。

  それと共に、入り口の門は破壊され、地面から響き渡る爆音、それに、兵達の悲鳴。

  森山葉月のそんな攻撃をキッカケに、相手の陣形は見事に崩れて、数十名程まで兵は減少した。


ーー私も、強い気持ちを持って、戦わねば......。


  そんな事を考えながら、彼女は敵兵との間合いを一気に詰めたのだ。


ーー佐山浩志と二人で戦ったあの時の様に......。


  すると、座ったままの状態でうすら笑みを浮かべた悠馬は、詰め寄る彼女に向けて、挨拶程度の火の玉を放ってこう言った。

「軍帥さん、同じ『異世界人』同士、仲良くしようぜ!! 」

  それを颯爽と避けた後で、森山葉月は剣を取り出して構えつつ、こう答える。

「そうですね......。私もそう考えていたのですが、どうやらそれは永遠に不可能な様ですね......。」

  悠馬は、それを聞くと大声で笑いながら、全身に闇のオーラを纏って、

「それは残念だ。じゃあ、潰してやるよ。その下らない正義感をな!! 」

と、叫んだ後で、体を宙に浮かせた。

  彼の背後には、見るからに曲者と言った少年と女が、禍々しい程に火と土の『異能』を見せつける様に作り出している。

  彼女は、そんな状況であっても、確固たる決意の下に戦いに身を投じる。

  全ての思いを背負いながら......。


ーー浩志、キュアリス。


ーー私は今日、『世界を救う為の第一歩』を踏み出します。


  そう心に誓った後すぐに、森山葉月と悠馬の闇の『異能』は交わったのだ。

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