天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第127話 直接の大誤算。


ーーーーーー

  キュアリスは、かつての面影を残す事のない荒れ果てた街で、安易に正面突破してしまった事を心から後悔していた。

  『ロンブローシティ』の入り口に位置する広場で、敵は強力な『異能』を持ってして彼女に襲いかかる。


ーーいや、その者達は彼女にとって敵ではない。


  何故ならば、今、目の前で牙を剥くのは、紛れもなく先程まで共に行動していた仲間、『特殊異能部隊』の皆なのだから......。

  そんな彼女達に囲まれる形になったキュアリスは、唇を噛み締めながらこんな事を呟く。

「完全に失敗してしまったよ......。まさか、こんな事になるなんて......。」

  彼女がそう言うと、背後で背中合わせになっている森山葉月は、冷静な口調でこう答えた。

「この状況は正直な所、大誤算でした。しかし、今は、後悔する時ではありません。心してかかりましょう。」

  キュアリスは、背後で構える森山葉月をチラッと見た後で、少し前の出来事を思い出す。


ーーおびただしい程の闇のオーラを纏いながら無機質な表情で攻撃をしてくる『特殊異能部隊』の皆を横目に......。ーー


ーーーーーー

  壊れかけた『ロンブローシティ』の門を通過した彼女達は、街の広場にて困惑した。

  理由はたった一つだ。


ーー『ヘリスタディ帝国』により、破壊や崩壊を繰り返され、焦げ臭い匂いと血の匂いが入り混じるその街の中は、見事なまでに人気が無いからだ......。


  キュアリスはそんな周囲を見渡した後で、この異様な雰囲気に立ち止まった。


ーー何か嫌な予感がしたから......。


  その後で彼女は皆に向け、こう指示を出す。

「本来ならあり得ないけど、敵が潜伏している可能性が高いから、攻撃を受けない様に、気を張っといて。」

  それを聞いた『特殊異能部隊』は、慌てて各々の『異能』を纏った。

  それを確認したキュアリスは、更にこう指示を出す。

「後、念の為に『魔法』も掛けておいて。もしかしたら操られてしまう可能性もあるから......。」


ーーそれが彼らの常套手段だから......。

  
  キュアリスがそう言うと、彼女達は自らに自我保持の『魔法』をかけた。

  それにしても、これだけの惨事があったならば、亡くなった方々の遺体や残った人が居ても良いものでは......。


ーー確実に何かの作戦の一環の筈......。


  頭を抱えながらキュアリスがそんな事を考えていると、最後尾にいる森山葉月が、空を見上げた後で、こう叫んだのだ。

「皆さん、避けてください!! 」

  そんな叫びを聞いた部隊の皆は、慌てて空を見た。


ーーすると、空には十数名の『ヘリスタディ帝国』の者と思われる連中がいて、彼らは気づかれるや否や、広場を包み込む様に、空から闇の『異能』の雨を降らせたのだ。


  キュアリスは、そんな突然の攻撃を、風の『異能』で加速する事で難なく避けた。

  ふと、隣を見ると、森山葉月も同じ様に建物の陰へと避難していたのだ。

「危なかった......。あれを受けてしまったらどうなっていたか......。」

  キュアリスはそんな風に息を荒げた。


ーーだが、その後、先程いた広場の方から悲痛の叫びが聞こえてきたのだった。


  彼女はその叫びを耳にすると、慌てて広場の方に目をやり、青ざめた。

  何故ならば、そこには、闇の『異能』を喰らい、精神崩壊を起こして苦しむリュイやミルトを始めとした『特殊異能部隊』の皆がいたからだ......。

  それを見たキュアリスは、歯軋りをした後で、広場へと飛び込もうとした。


ーー私のせいでみんなが......。


  そんな気持ちを強く抱きながら......。

  だが、そんな彼女の左腕を森山葉月は掴んだ。

「今あそこに行くのは危険過ぎます!! 」

  それを聞いたキュアリスは、一度振り返った後で、怒鳴りつけた。

「ならば、見捨てろって言うの?! これは、私の責任なんだよ?! 」

  森山葉月はそんなキュアリスに対して、飽くまで冷静な口調でこう説得した。

「ここで駆けつければ、相手の思う壺なんですよ!! 現に今だって......。」

  彼女はそう言うと、崩れた建物の隙間から空を見上げ、キュアリスと森山葉月を探し続ける『ヘリスタディ帝国』の連中がいる事を確認した。

  キュアリスはそれを見ると、一度立ち止まる。

  その後で森山葉月の方へ振り返って俯き、小さく呟いた。

「それなら、私はどうしたら良いの......? 」

  それを聞いた森山葉月は、無理やり表情を柔らかくした後で、

「まずは、あの上空にいる者達の殲滅からです。それに、他の兵が来る可能性が高い様ですね。そうなってしまっては、こちらが後手に回りますので......。『特殊異能部隊』の方々は後で対処するとしましょう。」

と提案し、右手を少しだけ光らせた。

  それを聞いたキュアリスは、グッと手に力を込めて、その提案に答えた。

「失敗したら、みんな元には戻らなくなるかもよ......。」

  それに対して森山葉月は、大きく頷いた。

「あなたは、国家で唯一の『聖騎士』です。それに、すべて守るといったのはあなたですよ......。あなたが自信を持たなくて、どうするのですか。」

  キュアリスは、そんな森山葉月の言葉を聞くと、弱い気持ちを持ってしまった自分を恥じるのだった。


ーー何で私は、こんなに弱いの......?


  彼女はそう考えると、俯いている頭を上にあげ、全身から炎のオーラを纏った。

  そして、そのまま空へと舞い上がって行った後で、そのまま『ヘリスタディ帝国』の兵士達を数千発の火の弾丸によって一網打尽にした。

  一瞬で苦しみながら地面へと堕ちてゆく『ヘリスタディ帝国』の者達......。


ーーそれを地上から見ている森山葉月は、一言こんな事を呟いた。


「やはり、この世界で『異世界人』に唯一対抗出来るのは、あなたしかいないのですよ......。」

  そう言うと、森山葉月は彼女の背中を追う様にしてキュアリスについて行くのだった。


ーー全てを守ろうという綺麗事を並べたキュアリスを......。

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