天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第121話 神が与えた試練。


ーーーーーー
  
  突如現れた巨大な神社の鳥居の前で、巫女姿の女性は万遍の笑みで俺を迎える。


ーー俺はそんな彼女を只、呆然と見る事しか出来なかった。


「どうしたのですか? 突然固まってしまって......。」

  巫女が俺にそう問いかけると、俺は一度、背後で同じ様に立ち尽くしている桜、アメール、ニルンド、優花の四人の方を振り返った。

  その後で、勇気を振り絞って口を開く。

「いや、余りにも非現実的な事が起きたので、気持ちの整理がつかないんだよ。それに、お前は何故、俺を知っているんだ......? 」

  俺の質問を聞いた巫女は、ニヤッと笑った後で、俺にこう答えた。

「それは、先程、あなたが直感で思った事が答えですよ。」


ーー俺は彼女のそんな発言を聞くと、この目の前にいる巫女が神である事を確信した。


ーーそれに、どうやらこの神は、俺の考えている事が全てわかるらしい......。


  そんな神に対して、俺は質問を続けた。

「お前が何らかの神である事はよく分かった。だが、それにしてもわからない事がある。どうして、こんな場所に来てしまったのかだ......。」

  巫女姿の神は俺が疑問を口にすると、相変わらず笑顔のままに、こんな返答をした。

「それは、あなたが意思を持って『結界』を張り、ここに来たのですから、お答えする事は出来ませんね......。どちらにせよ、何かの手掛かりを探しにここへ来たのだと思います。」

  彼女はそう言った後で、俺の様子を伺う。


ーー相変わらず訳の分かっていない俺の事を......。


  その後で彼女は一つため息をついて、こんな提案をした。

「では、こんなのはどうでしょうか。今から私はあなた達に三つの『試練』を与えます。死ぬ可能性すらある『試練』を......。ルールは簡単です。これから私は本殿で待ちます。そこまで来てください。もし辿り着けたのならば、『世界の理』については、何もお教えする事は出来ませんが、その代わりに一つ重要な事柄を教えましょう。では、頑張ってください。」

  彼女は俺にそう告げると、光を放ってその場からゆっくりと姿を消した。


ーー俺はそんな消え行く彼女を再び呆然と見つめた。


ーー三つの『試練』とは一体......。


  そして、完全に彼女が消え去った時、俺は背後の様子が気になり振り返る。

  すると、そこには、相変わらずポカンとしている四人の姿があった。

「『霞神社』の神だと......? 」

  ニルンドはそんな事を呟いた。
 
  俺はそんな彼女の言葉に対して、こう問いかけた。

「その......。あの巫女は、何者なんだ......。」

  そんな俺の問いかけを聞いたニルンドは、突然真剣な顔つきに変わり、ゆっくりと答えた。

「古い文献で読んだ事があるのだが、彼女は、『崩壊の神』......。争いや災害を司る神なんだよ......。そして、その文献に記されていた、『黄泉の神社に住み者』と......。つまり......。」


ーー俺はそれを聞くと、驚愕をした。


ーーそう、つまりこの場所は、死後の世界だったのだ。


  俺はそれに気がつくと途端に焦りだした。


ーーもし、彼女の言う事が事実ならば、俺達は今、死んでいる事になる......。


ーーだが、今はそんな事よりも、彼女のいる本殿を目指さねば......。


  俺はそう考えると、居ても立っても居られなくなった。

「例えここが何処だろうと、関係ない。それよりも彼女の言っていた、『重要な事柄』と言うものを聞かなければ、ここに来た意味が無くなる。とにかく、本殿を目指してみよう!! 」

  俺が強い口調でそう言うと、皆は大きく頷いた。

「確かに、私は今までずっと、事実を求めて来た。ここで引き返したら何の意味も無いもんね......。」
  
  優花は震える両手にグッと力を込めてそう答えた。

「今、私は佐山雄二様に仕える身。あなたの指示に従うだけです。」

  アメールはそう言うと、俺の前に跪いた。

  ニルンドはむしろ、さっきまでの真剣な表情から打って変わってノリノリになり、

「そこに辿り着いた時、なにが聞けるのか楽しみだな!! 」

と、息巻いている。


ーー桜に関しては、ジッと俺を見た後で、俺の手を握った。


「桜は、雄二を守りたい。だから、どこまででもついて行くよ......。」

  そんな桜の一言を聞くと、俺は強く勇気付けられた。


ーーそんなみんなの同意を確認すると、俺達は本殿を目指す為に鳥居の中をくぐったのだ。


  すると、先程まで綺麗に光り輝いていた境内は姿を変え、怪しく黒く光る闇深き場所に様変わりした。

  そして、遥か彼方まで広がる空からは、百メートル程にも及ぶ体長の龍が舞い降りて来た。

  その龍は、黒い闇のオーラを放ちながら、俺達を睨み続ける。

  俺はそんな龍の目を見たとき、彼女の言っていた三つの『試練』の意味を理解した。


ーー要は、彼女の用意した『試練』とは、これから襲いかかる三体の敵を倒す事にあったのだ。


ーーそして、これは一つ目の『試練』......。


「なるほどな!! そう言う事だったのか!! 」

  ニルンドはそう叫ぶと、背中に炎の翼を生やしてそのまま龍の方へと飛んで行った。


ーー俺はそれに対して慌てて風の『異能』で空を飛ぶ。


  そんな俺達を見た龍は、禍々しいオーラを放ちながら、闇のブレスを放って来たのだ。

  俺とニルンドは、それを慌てて避ける。


ーー突然始まった戦闘。

  
  これは全て神の用意した物だ。

  そして、三つ全ての『試練』を乗り越えた時、俺達は何を知るのだろう。

  そんな事を考えながら、目の前に現れた龍に対して俺は、頭の辺りに水の『異能』を放ったのだ。


ーーだが、それは余りにもあっさりと弾かれた後で、龍は硬く黒光りする尻尾で俺に攻撃をした。


  その速さに追いつけなかった俺は、ギリギリで闇の『異能』のバリアを張ったが、龍の尻尾はそれも共に破壊した。


ーー攻撃を食らった俺は、弾き飛ばされて、そのまま地面に打ち付けられそうになったが、少し離れた場所にいた桜が慌てて、地面にクッションとなる草の『異能』を生やす事で、何とか致命傷を食らう事を回避したのだった。


「少し、厄介な相手だな......。」

  俺は再び立て直して立ち上がると、そう呟く。


ーーだが、俺はこの『試練』を乗り越えねばならないと思った。


ーーその先にある『重要な事柄』が気になって仕方がなかったから......。


  俺はそう考えると、再び風の『異能』で空に浮き上がり、火の『異能』を放ち続けるニルンドを横目に龍の方へと向かって行ったのだった。
 

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