天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第118話 霞神社。


ーーーーーー

  すっかりと暗くなった市民の森の広場を後にした俺達は、とりあえず場所を移そうという話になり、俺のマンションへと向かう為に最寄りの駅まで歩いているところだった。


ーーだが、これから集まるとなると、時間帯的に両親が心配するのではと考えた俺は、優花にその確認を取った。


「俺は構わないのだが、帰りが遅くなってしまったら、親父とお袋も心配するんじゃないのか? 」

  俺がそう問いかけると、優花はニコッと笑ってこう答える。

「それなら大丈夫だよ!! お父さんとお母さんは、弟を連れて今、海外に住んでいるんだ。何でも、長年研究していた事柄が、大きな賞を取ったみたいでさ、それで外国の大きな大学に赴任したらしいんだよね。」


ーー俺はその、『研究』と言う言葉を聞くと、あの時の事を思い出す。


  きっと、俺の存在が消滅した事によって、父は自分自身でその実験に成功した事になったのであろう。

  俺は、そんな事案に対して一安心をした。


ーー俺自身が父のプライドを傷つけてしまったのだから......。


「そうだったのか......。だが、それにしても、何でお前だけ一人で残ったんだ? 」

  そんな俺の問いに対して彼女は、深刻な顔をしてこう呟いた。

「それも全部、この謎を解きたいという一心だよ。両親には、『学校の友達と離れたくない』という理由を付けて散々ごねたんだけどね。」

  俺はそんな彼女の理由に対して、妙な納得をした。

  優花は俺が納得して頷いていると、その後で笑顔になりこう続けた。

「でも、この街に残って本当に良かったって思ってるよ。だって、そのおかげでお兄ちゃんに会えたんだから......。」

  彼女は顔を赤らめながらそう言うと、少し恥ずかしさを感じたのか、小走りで俺達の前を走って行った。

  そんな様子を見ていたアメールは、少し前を行く優花の姿を見た後で、小さく微笑んだ。

「良い妹さんではありませんか。」

  俺はそんな彼女の発言に対して、

「ああ......。俺も、今日初めて知ったよ。ずっと長い間、こんなに想ってくれる優しい妹から目を背けてしまっていたんだからな......。」

と、遠くを遠くを見つめながらそう呟いた。

「桜も、優花ちゃん好きだなぁ!! 仲良くなりたいって思うよ!! 」

  桜は彼女の事が気に入った様で、俺の腕を掴みながらそう言った。

  俺はそんな彼女に、微笑みながら、

「お前なら、きっと仲良くなれるよ......。」

と、自信を持って答える。

  それを聞いた桜は、

「じゃあ、行ってくる!! 」

と言って、少し先の優花の方へと走って行ったのだった。


ーー優花はこの街に残り、どんな憶測を立てたのだろう。


  俺はそんな彼女の結論が気になりながら、桜にくっつかれた優花を見つめていたのだ。


ーー電柱をおかしなテンションで見つめるルインドにうんざりしつつ......。


「佐山雄二!! この柱は、何のためにあるんだ?! 」

  そんな彼女の問いかけに対してため息をつきながらこう答えた。

「戻ったらじっくり教えてやるから、とりあえず騒ぐのはやめてくれ......。」

  そんな風に俺達はマンションへ向かう。


ーー丁度、駅が見えてきた。
あっちの世界は今、どうなっているだろう......。


  キュアリスにも、『ベリスタ王国』にも何も起きていない事を願いながら、足を進めたのであった。


ーーーーーー

  相変わらず騒ぎ立てる二名にうんざりしながらも、俺達はやっとマンションに到着した。


ーー優花は初めて俺の部屋に入る事もあり、少し感動していた様子が伺えた。


  俺はそんな彼女を始めとした皆に、少し五人でいるには狭い部屋の中で座る様に促した。

「それでは優花、その『憶測』とやらを説明してくれないか......? 」

  俺がそうお願いをすると、彼女は真剣な表情で鞄から一枚の地図を取り出した。

  そして、それを広げて彼女は口を開く。

「まず、私は今まで消えてしまった人を追いかけて来たと言うことはもう説明していると思うんだけど......。」

  そう呟くと、地図に記された印を一つ一つ指差して行く。

「実は、この印、私の取り巻く環境の中で行方不明になった人達の住んでいた場所なんだ。」

  彼女がそんな話をしながら指で印を追いかけて行くうちに、俺達は徐々にある事に気がつく。

「これってまさか......。」

  俺が驚愕しながらそう呟くと、優花は小さく頷いた。

「そうなの......。これって何かの偶然にしては、余りにも出来すぎていると思うんだよね......。」


ーーそう言って全ての印を追いかけた時、その地図には綺麗な円形が出来上がっていたのだ。


  そんな事実に俺達が驚いていると、彼女は真剣な表情で続ける。

「しかも、途中から気がついたんだけど、この人達がいなくなって行ったのは、不思議な事に時計回りで順番になっているの。私もそこまで調べるのにはかなり時間が掛かったのだけど......。その最後に消えたのはあなたの親友、大河原悠馬なんだよね。それを最後に半年程は行方不明者が出ていない。これって......。」

  俺はそれを聞くと、一つの推測を展開した。

「何かが完了したと言うことか......。」

  そんな俺の発言に対して、彼女は大きく頷いた。

  その後で、優花はその円形の真ん中を指差した。

「でも、お兄ちゃん知ってる? この真ん中にある場所の事。」

  彼女の言ったその場所を見た時、俺は首を傾げた。


ーー神社のマークが記されたその場所を。


  俺はその場所に行ったことがない。

  それどころか、余りにもひっそりとしている場所なので、その存在に気づかなかったのである。


ーーだが、優花が言う様に、その神社は消えて行った人々の輪の丁度中心に位置しているのだ。


「この神社に何かが隠されていると......。」

  俺がそう確認を取ると、彼女は俺を見つめて静かに口を開いた。

「きっとその筈なんだよ。これが私の憶測。この場所、『霞神社』には、この一連の行方不明の事件が関係している。」


ーー俺達はその名前を聞くと、確信した。


ーー霞神社......。

  そこは、この世界にも存在し、そして、あちらの世界との窓口なのかもしれない。

  そう考えると、俺は皆に向け、こう告げた。

「では、明日の朝、その場所へ行こう。」

  俺がそう言うと、皆は大きく頷いた。


ーーきっとその場所には、『世界の理』の鍵がある。


  地図上に不自然に出来た円形の中心点に位置する『霞神社』を一度見ると、俺は強く自分を奮い立たせるのであった。

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