天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第117話 思わぬ加勢。


ーーーーーー

  『ロンブローシティ』に向かうキュアリスの表情は、強く強張っていた。

  それは何処からなのだろう。


ーー背後を走る十数名の『特殊異能部隊』の存在。


  彼女達は、キュアリスの意思に準じてやって来た。


ーーキュアリスは、そんな皆が参戦する事を、断る勇気が無かった。


  そんな気持ちから迷いを感じる。


ーー誰ひとり死なせてはいけない。


  その重圧は、本来の自分のその街に行く理由を軽く凌駕してしまう。


ーー怖い。


  大切なものが傷ついて行く事への恐怖。

  これまでのキュアリスにとって、戦争とは、一人で乗り越えるべき『壁』であった。

  幼い頃から戦争に身を投じて来た彼女は、常に孤独と戦い続けて来た。


ーーそれだけ強大な力を持っていたから......。


  そんな事を思っていると、彼女は途端に不安を感じた。


ーー雄二、あなたの重圧が今になって少し分かる気がする。


  キュアリスはそう考えると、『特殊異能部隊』を背後に従えて、『首都リバイル』の城門を越えて行ったのだ。


ーーそして、その先に広がる高原に目をやると、そこには、一人の騎士姿をした女性が馬に跨っていた。


  その女性は、頭に鉄の兜を付けていて、顔が見る事は出来ないが、先へと進むキュアリス達の事をジッと見ているのが伺えた。

  リュイはそんな彼女の異常な視線に対して、少し違和感を感じた様で、一度、馬の足を止める。

  それに準じる様に、先頭のキュアリスと、部隊の皆は立ち止まった。

「申し訳ありません、聖騎士様。あそこにいる者、少し怪しいとは思いませんか? スパイの類であったら大変です。」

  リュイがそう呟くと、キュアリス苦笑いをした。

「流石に、あんな怪しさ満載の格好をしたスパイはいないと思うんだけど......。」

  それを聞いたミルトは、大きな声で笑った。

「確かにそうだね!! あそこまで完全武装したスパイなんかいたら、すぐ見つかっちゃって意味がないよ!! 全く、リュイは真面目だなぁー!! 」

  そんな否定的な二人の発言を聞いたリュイは、自分の推測が的外れであった事に対する恥ずかしさから、顔を真っ赤に赤らめた。

「な、何も、じ、冗談で言った事に対して、そんなに真面目に答えなくても......。」

  リュイがそんな風に取り繕うと、キュアリスはフフッと小さく笑った。

  彼女はその後で、遠くに見えるその騎士風の人物を真剣な表情で眺めた。

「でも、確かに怪しい事には変わりないわね。」

  そう呟くと、少しずつその女性の元へ近づいて行った。


ーーすると、キュアリス達を凝視していた女性は、一目散に彼女達の元へと駆け寄って来た。


  それに対して、キュアリス、並びに部隊の皆は、戦闘に向け、構えの体勢に入ったのだ。


ーーそして、すっかりと目の前にやって来た騎士を前にして、キュアリスは代表してこう語尾を強めた。


「あなた、一体何者なの?! 」

  それを聞いた騎士風の女性は首を傾げて背中に背負っている剣に手をかけた。


ーー彼女のそんな所作に皆には緊張感が走る。


ーーもしかしたら、『ヘリスタディ帝国』の兵士がここまで流れ着いてしまったのではと......。


  すると、リュイは危機感を覚えたのか、そんな騎士風の女性に向けて、覚えたばかりの火の鳥を用いた『異能』を放ったのだ。

「今すぐに剣を捨てよ!! 」

  そんな事を叫びながら......。


ーーだが、彼女の強力な『異能』を前にした女性は、襲い来る火の鳥に剣を一振りした。


  その瞬間、火の鳥は真っ二つになり、見事なまでに『異能』の存在は消えてしまったのだった。

  それに対して、リュイは驚く。

「お、お前、一体......。」

  それを聞いた騎士風の女性は、両腕で持っている剣を地面に突き刺すと、ゆっくりと馬から降りた。

  キュアリスは背後に控える部隊の皆を庇う様にして拳に力を込める。

「誰かは知らないけど、私達に牙を剥くようなら、私が許さないよ。」


ーーそんな彼女達の敵意を見ると、騎士風の女性は大きな声で笑い出した。


  ミルトはキュアリスの背後に隠れながら高らかに笑うその女性に、

「な、何がおかしいんだ!! こ、この人は『聖騎士』だぞ!! あんたじゃ絶対に勝てないんだぞ!! 」

と、不気味さを感じつつ、震えながらそう叫んだ。

  それを聞いた女性は、更に大きな声で笑い出す。


ーーそして、一言呟いた。


「私は敵ではありませんよ......。」


ーーキュアリスと『特殊異能部隊』皆は、そんな彼女の発言に、呆然とした。


  その後で、驚く。

  すると、彼女達の表情を見たその女性は、鉄の兜を静かに脱いだのだ。

 キュアリスは、その顔を見ると、更に驚いた。

  何故なら、そこにいたのは、紛れもなく『ベリスタ王国 国王軍 軍帥』森山葉月そのものだったから。

  森山葉月は、兜を脱ぐと、乱れた髪の毛を整えた後でため息をつき、彼女達に向け、こう告げたのだった。

「唐突ではありますが、今回の戦いには私も同行させて頂く事になりました。」


ーーそれを聞いた皆は、驚愕の表情を浮かべる。


  リュイに関しては、先程攻撃をしてしまった事に謝罪を口にした。

「ご無礼を働き、大変失礼致しました!! 」

  森山葉月は彼女の謝罪に対して、ニコッと笑う。
  
「気にしないでください。私の登場の仕方が悪かっただけなので......。それに、しっかりと危機感を持っている事が十分に分かったので、安心しているところですよ。」

  リュイはそれを聞くと、跪いてお礼を述べた。


ーーだが、そんな中、ミルトは真剣な表情で森山葉月にこう問いかけた。


「そんなの聞いてないよ......。それに、雄二への報告はどうするの? 」

  そんな彼女の質問に対して、森山葉月は真面目な口調で答えた。

「彼は、もう暫く戻って来る事は無いでしょう......。それまでに戦いを終わらせれば良いだけなので。ですが、今回の敵は少し、難敵と言えますので......。そこで私も......。」

  彼女がそう言うと、キュアリスは森山葉月の両肩をつかんだ後で、こう詰め寄った。

「雄二や桜に何かあったの?! 辛い思いはしていない?! 戦争に巻き込まれたり......。」

  それに対して森山葉月は彼女の腕を振りほどき、

「それは問題ありません。そんな事よりも、すぐ近くにある脅威に目を向けてください。あなた達がどれだけこの国の重要な役割を担っているのかも自覚してください。何故、私も戦争に向かうのかを......。」

と、彼女達を戒め、その後ですぐに馬に乗って行く先へと向かって行った。


ーーキュアリスは森山葉月の言葉を聞くと、グッと唇を噛み締めながら彼女の後をついて行く。


ーー佐山雄二の現在を心配しながら......。


  だが、そんな中、自覚させられた事がある。

  これから向かう戦争が今までよりもずっと過酷なものだと言う事だ。


ーーそして、彼女は不安を全て捨てた。


  守るべきものが増えたから。

  全員でまた、『首都リバイル』に帰ろう。

  そう心に強く誓うと、彼女は気を引き締めた。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く