天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第109話 悩みの種。


ーーーーーー


ーー「あれ......? あいつってまだ生きてたんだ。」


  俺は約一年ぶりに行った学校にて、そんな会話をしている声を聞いた。

  クラスにとっては団結力の根源とも言える歪な存在である俺。

  そんな俺という生贄を持ってして纏まり出す学校は、教師も同様だ。


ーー俺はこの世界では異質の存在。


  道を歩く仲間同士のグループやカップル、同僚と楽しくする姿を羨ましくも妬ましく見ているだけが精一杯の俺だ。


ーーだが、それは余りにも自業自得な事なのである。


  俺は多分、心の奥底で常に人と違う事を呪い、そして、多少の過信をしていたのだと思う。

  そんな時、一人のクラスメイトが俺の元へ近づいて来て、こう呟いた。

「お前、邪魔だからもう来ないでくれない? 」

  それに対して俺は、俯いて、只、黙り込む事しか出来ない。


ーー悔しいし、哀しいけど、これは自業自得なのだから......。


  そう言い聞かせる事しか出来ない、惨めな自分に嫌気が差しながら、俺は闇へと堕ちてゆく。


ーー『度が過ぎる才能』を持ってして......。ーー


  目が覚めると、俺は眠り慣れたベットの上で冷や汗をかいていた。

  また、悪い夢を見てしまった。

  俺は、そんな事を思いながら目を擦る。

  ふと、部屋の中に目をやると、俺の隣で寝ている桜に、用意した布団の中で寝ているアメール、そして、椅子の上で座りながらいびきをかいてるニルンドの姿があった。


ーー俺はそんな三人の姿を見ると、急激な違和感を感じる。


  この世界に三人がいる事ももちろんそうだが、何よりの原因は、俺の家に人がいるという事実である。

  人知れず悩んで、もがき苦しんだこの場所。

  いい思い出かと言われれば、否定せざるを得ない。

  いくら自分が内面的に変わったとしても、この世界での人々からすると、それは目に見えるものではない。

  一度付いたレッテルを取り除くのは、そう容易に取り除く事は出来ないから。


ーー多分、俺はこの世界に帰って来て現実に引き戻されているのだ。


  そして、『異能』や『魔法』の力を持ち越して本物の化け物になってしまった俺は、痛々しい程に求める。
 
  この世界で『仲間』や『友達』という存在を......。

  そんな風に思いを巡らせていると、スーツを綺麗に畳み、俺が貸したTシャツに身を包んだアメールが目を覚ました。

「おはようございます......。」

  俺はそんな彼女に鼻をすすりながら挨拶を返した。

「お、おはよう......。」

  彼女は俺の返事を聞くと、その後でまじまじと俺の顔を見た。

  俺はそんな彼女の視線に苦笑いをした後で、問いかけた。

「い、いきなりどうしたんだ......? 」

  俺がそう質問をすると、切ない表情を浮かべた後で、俺の頬に手を当てた。

「何か悲しい夢でも見ていたのですか......? 」

  そんな彼女の手の温もりを頬に感じると、確認の為に自分の顔を触った。


ーーすると、瞼からは一筋の涙が頬を伝っていた。


  それに気がついた時、俺は自分自身の不安がここまで増幅している事に初めて気がつく。

  だが、そんな気持ちを掻き消す様に慌ててアメールの手を振りほどいて後ろを向くのだった。

「いや、別にそう言うわけでは......。」

  俺が慌てて涙を拭い毅然としようとしていると、アメールは何かを察した後で、強い口調になりこう答えた。

「あなたが辛いのはよく分かります。思い出す事だってあるでしょう......。だって、あなたが転移したと言う事は......。ですが、今、あなたは『ベリスタ王国』の『遊撃士』であり、世界を救う『英雄』になるのですよ。だから、もっと自信を持ってください。あなたが弱気になってしまったら、私達はどうすればいいのですか? だから、今は前を向いてください。みんなの為にも......。」


ーーそれを聞いた俺は、沢山溜まった涙を勢い良く拭い、真っ赤になった目で最高の笑顔でこう答えた。


「この世界に戻って来てから、色々と考えて弱気になっていたみたいだよ......。励ましてくれてありがとな......。」

  俺がそう言うと、アメールは俺の前で初めて笑顔を見せた。

「それは良かったです。」


ーー俺はそんな笑顔を見ると、心が落ち着いて行くのが分かった。


  そして、気がかりな事を一つだけお願いした。

「まだ寝ている二人には、俺が泣いていた事は隠しておいてくれ。」

  俺がそう言うと、アメールは少し困った顔をして、俺の後ろを指差した。

「それは、少し難しそうなのですが......。」

  そんな彼女の発言を聞くと、鳥肌を立ててゆっくりと背後を確認した。


ーーするとそこには、ニヤニヤと悪い笑顔を見せるニルンドと桜がそこにはいた。


「あれ?! 今、泣いちゃって無かったー?! 」

  ニルンドは相変わらずむさ苦しいテンションで俺にそう問いかけた。

「雄二は本当に泣き虫なんだから!! 」

  桜はそれに乗じる様にして不敵な笑みを浮かべる。

  俺はそんな二人を見ると、途端に恥ずかしくなった。

「は、はぁ?! な、何を言っているのかね、君達は!! 」

  そう俺が取り繕うと、二人は更に調子に乗り出した。


ーーそんなやり取りをしているうちに、俺は自分が悩んでいた事がバカらしくなって来た。


  この世界での事なんか、今はどうでもいいじゃないか。


ーー俺のやるべき事は......。


  俺はそう考えると、立ち上がり、皆にこう言った。

「よし、とりあえず、今から出かけるぞ! お前達にはこの世界で違和感のない格好をしてもらいたい!! でないと、今のままでは只のコスプレ集団に思われて悪目立ちしてしまうからな......。」

  それを聞いたニルンドは明るい口調でこう答えた。

「その、コスプレって言うのはよく分からないけど、なんか楽しそうだね!! 」

  俺はそんな彼女の受け答えを聞くと、財布を手に取り、服屋のある少し先の駅を目指すのだった。


ーー準備が整い次第、社に連絡をしよう。


  彼女ならきっと、俺が『英雄』になる為に必要な事を知っている気がするので......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    元の世界に来た目的は?

    0
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