天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第105話 異様な少女。


ーーーーーー


ーー「やはり、自分の目で見たものを信じなきゃダメだという結論に至ったから、深くは話さない事にした。要は、あっちに行ってからのお楽しみという事で......。」


   先程、休憩を取った木陰にて、ニルンドは俺に向け、そう話を流されてしまったのだった。

  それから二日間、俺達は途中野宿をしながらやっとの思いで『メディウス』の手前にある大きな岩の辺りまでやって来ていた。

「あの岩を通り過ぎれば、『メディウス』までもうすぐになります。」

  馬の手綱を取っているアメールは俺達にそう説明した。


ーーやっと到着するのか。


  俺がそんな風に多少の疲労を感じながら、あと少しで到着する未見の地、『メディウス』に胸を膨らませているのだった。

「もう着いてしまうの?! まだ沢山聞くべき事があるのにー!! それに、せっかく桜ちゃんとも大親友になれたというのに!! 」

  ニルンドはそう言って小脇に桜を抱えている。

「いつ親友になったんだ!! 離せ!! 」

  桜はニルンドによってあまりにも固く掴まれた両肩を解放しようと、ジタバタとしている。


ーーだが、ニルンドはそんな事もお構い無しに笑顔でこんな発言をするのだった。


「全く、シャイなんだから~。」


ーーいやいや、桜は明らかに嫌がっているじゃないか。


  俺はそんな風に思うと、桜にこちらへ来るように促して、それを見たニルンドは少し残念そうな表情を浮かべながら、その腕を離した。

  桜は、暫くの間変わり者に拘束されていた事により、疲れ切った顔をして小刻みに震えている。

「桜、あの人苦手だよ......。」

  俺はそんな桜に対して、目を逸らしながら、

「それはお気の毒に......。」

と言うのがやっとなのであった。

  だが、その後すぐにニルンドは少しだけ真剣な表情になって、小さく呟いた。

「それは良いとして、ここまで来る間にあのグリフォン以外に魔物に遭遇しないのは、少し違和感があるな......。」

  それを聞いたアメールも、こちらを振り返りながら頷いた。

「そうですね。本来ならば、現れる数多の魔物を討伐しながら前に進んで行くのが通例の筈なのですが、余りにもスムーズに進み過ぎです。それに、この雰囲気......。」


ーーそれは一体どう言う事なのだろう......。


  それに、もう街に近づいている為、人も疎らに歩いている筈らしいのだが、窓の外から辺りを見渡しても、その類は一切見受けられなかった。


ーーだが、そんな時、一人の小さな女の子の叫び声ご聞こえた。


「うわー!! なんで誰もいないの?! おかしくない?! 」

  俺はそれを聞くと、アメールに馬車を止める様、指示を出した後で、その少女の元へと走り出して行った。


ーーこの子、迷子か何かかもしれない。


  俺はそう考えると、そんな幼い少女に向け、一つ問いかけをした。

「君、迷子か何か? もし良かったら、街まで連れて行くけど......。」

  少女は俺がそう提案をすると、一瞬だけ不敵な笑みを浮かべた後で、万遍の笑みになり、こう答えた。

「まあ、そんな所!! 優しいお兄さんがいてくれて良かったよ!! 」

  少女のそんな純粋無垢な発言を聞いた俺は、一安心をした後で彼女の手を握り、馬車へと向かったのだった。

「いやあ、やっぱり迷子だったみたいなんだよ......。それで、『メディウス』まで連れて行ってあげる事になったから、みんなよろしくな!! 」

  俺はそう言いながら馬車の中に彼女を乗せると、桜は喜んだ。

「嬉しいな!! 桜と同い年くらいの女の子と、こんな所で会えるなんで!! 」
 
  俺はそんな、先程までニルンドによって意気消沈していた桜が再び元気を取り戻した事に胸を撫で下ろした。


ーーだが、一方で向かいにいるニルンドは全く違う表情をしていた。


ーーその彼女の表情は、驚愕とも形容出来る。


  そして、彼女はその少女に向けてこう問いかけた。

「あなた、もしかしたらとは思うんだけど......。」

  それを聞いた少女は、ニコニコとしながら、

「えっ? 何のことかな......。」

と、分かりやすいまでのシラを切っていた。


ーー俺はそんな二人の様子を見て、今の状況が理解出来ずにいる。


ーーこの少女が、一体なんだと言うのだ。


  だが、ニルンドの表情は、ここ何日か話している中で一番深刻そうな表情であった。

  俺がそんな事を考えていると、ニルンドは真剣な顔でこう続けた。

「いや、間違いない!! ここら辺で人や魔物が居なくなり、現れた少女など......。正直に答えてください。あなたは......。」


ーーそれを聞いた少女は、少女うんざりとした顔をした。


「全く......。お前らの探究心というのは厄介にも程がある。折角久しぶりに外に出たというのに......。いつも、すぐに見つかってしまう。」

  彼女がそう言うと、ニルンドは相変わらず先程のテンションが嘘みたいに、まともな事を言い放つ。

「それは、当たり前だ!! そんな禍々しいオーラを纏って歩いていれば、誰だって気がつくよ!! 」

  それを聞いた少女はため息をついた。

「全くうるさい奴だ......。」

  彼女はそう呟くと、今度は俺の方へ視線を移した。

「それにしても、やっと来た様だな。お前が佐山雄二か。これからは少々疲れを感じる事も多いかもしれないが、よろしく頼んだぞ。」


ーー俺はそんな彼女の言っていることがよく分からなかった。


  なので、それについて問いかける。

「ところで、君は一体何者なんだ......? 」

  それを聞いた少女は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。

  そして、彼女は口を開いた。

「この世界で私を知らない人など、珍しいな。私は、『メディウス』にある遺跡、『霞神社』の第百代目の主、社と申す!! 」


ーーこの少女が、遺跡の主だと......?


  俺はそんな風に疑問を抱いた。


ーーそして、何よりも引っかかった言葉がある。


ーー『霞神社』......。

 
 そう、この世界に残る遺跡とは、日本には欠かさない、神社だったのである。

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