天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第104話 空撃士の強さ。


ーーーーーー

  アメールは無表情のままに、俺達の事を凝視している。


ーー俺がチラッと見た所で、その視線を移す事はなく。


  その表情にはまるで、感情というものが存在していない様で、生気を感じさせない程に固まっている。

  俺はそんな彼女に一瞬不気味さを感じていた。


ーー何故なら、有頂天に喋り続けるアメールを見た所で、無言を貫いているのだから......。


「それにしても、アメールは本当に大人しいよね!! 私の話を聞いても、何も感じないの?! これから、転移の謎に迫るんだよ?! めっちゃくちゃワクワクするじゃん!! 」

  ニルンドは相変わらずのテンションで彼女にそう訴えた。

  すると彼女は、小さく頷いた後で、

「そうですね。それよりもまず、『空撃士』様と、これから『遊撃士』になられる佐山雄二様、そのお供として支えられている桜様のお三方と旅を出来る時点で私、胸が沸き立つ思いです。」

と、感情のない口調で答えた。


ーー本当にそんな事、思っているのだろうか......。


  俺はそんな風に些か疑問を持ったが、相反してニルンドに関しては、ピカピカの笑顔になった後で、

「全く!! 妙な事を言うんじゃない!! そんな事言われたら、嬉しいではないか!! 」

と、アメールの発言を素直に喜んでいた。


ーーよく見ると、桜も同じ様な感情を持っているらしく、ニコニコとしながら謙遜していた。


  この二人、まるで同じ精神年齢じゃないか......。

  俺はニルンドを見ると、一つため息をついた。

「ところで、『メディウス』までは、一本道で行けると聞いたが、途中危険な所は無いと言っていたな。だが、何故そう言い切れるのかが、些か疑問なのだが。」

  俺がそんな質問をアメールにぶつける。

  するとアメールは、低いトーンの声で、こう答えた。

「それは、ここら辺の地域全般に言える事ですが、魔物が多く潜んでいるので、それを恐れて人は誰も住んでいないのですよ。そして、この地域に存在する魔物の中で最も強いのは、グリフォンです。普通の人からすると危険な場所かもしれないのですが、今ここにいるメンバーの力量を考えると、比較的安全と捉えるのが普通でしょう。」


ーー俺はそんなアメールの話を聞き終えると、苦笑いをした。


  森山葉月が言っていた『安全』とは、俺達のみに有効だった訳だ。

  それにしても、『空撃士』とは、どの様な戦い方をするのだろう......。

  今のところ俺にとっては、只の研究熱心な変わり者にしか見えないのだが......。

  俺は今考えていた気持ちを具現化した様な表情を浮かべて、ニルンドの方を見つめた。

  すると、ニルンドは俺の視線に気がついて万遍の笑みになり、

「何か......? 」

と、純粋な質問をして来た。


ーー俺はそんな彼女に一瞬苛立ちを覚えたが、一度深呼吸をする。


  それに、彼女は重要な情報を握っている。

  これから起きる転移についての事や、今は亡き兄の事。


  俺はそう考えると、ニルンドに質問をした。

「俺はこれから『メディウス』に行った際、何をすれば元の世界に転移する事が出来るんだ? 」

  俺がそう問いかけると、ニルンドは小さく笑みを浮かべた後で、

「それは、とりあえずあちらにある古文書を読めば全て手順が書いてあるよ。それに、あの場所に行けるのは、佐山雄二と観音寺桜のみだから......。」

と、意味深な発言をした。


ーーあの場所......?


  俺は彼女の口から出た、あの場所と言う所に疑問を持った。

「あの場所っていうのは、遺跡の内部にある物なのか? それに、俺と桜だけって......? 」


ーーそんな質問をした時、空から魔物と思しき者の叫び声が聞こえた。


  俺はそれを聞くと慌てて空を見る。


ーーすると、そこには五十体程の群れをなしたグリフォンが、俺達の休んでいる茂みを見つめていた。


  俺と桜はそれに対して慌てて立ち上がり、臨戦態勢に入る。


ーー明らかにこちらを狙っているグリフォンを危惧して......。


  だが、立ち上がった俺達を制止する様にして、ニルンドは一歩ずつ前へと足を運んだ。

「その質問には、後で答えるね!! 後、今回警護を頼まれているのは私だから、二人は安心して休んでいるといいよ。」

  彼女はすっかりと前に出た後で、一度、俺達の方を振り返りそう言い残すと、全身に火のオーラを纏い始めた。

  俺はそんな彼女の発言に、ポカンとする。
 

ーーそして、そのオーラはニルンドの両肩辺りに集中して行き、最終的には真っ赤な羽の形になったのである。


  彼女はそれが完了すると、出来たばかりの羽を羽ばたかせ、一気にグリフォンの群れの方へと突き進んで行くのだった。


ーーそれはまさにファンタジーで、彼女の飛んでいる姿からは、神々しささえ感じさせる。


  ニルンドはあっという間にグリフォン達の所へ辿り着くと、両手に『異能』の力を込めた。


ーーその『異能』は、火である事は分かるのだが、俺の出す『異能』よりもずっと強大で、力強さを感じる。


  そして彼女は、襲い掛かって来る数多のグリフォンに向けて、その『異能』を勢い良く放ったのだ。

  ニルンドが放った『異能』は、燃え盛ったまま、グリフォン達にヒットする。

  すると、その場所に居たはずの魔物達は骨の一本を残す事も無く、瞬きする間もなく焼き尽くされてしまったのである。

  真っ直ぐに放たれた炎は、留まる事を知らずに遠くへと一直線に突き進んでいた。


ーーどこまでも遠くへと......。


  俺はそんな彼女の圧倒的な攻撃を目の前にして、呆然とする。

  すると、隣に立っていたアメールは小さく呟いた。

「あれこそ、ニルンド様が『空撃士』、そして、最高戦力と言われる所以なのですよ。あれでもかなり手加減しているとは思うのですが......。正直な所、本気で戦えば、国全体を焦土に出来る程の強さなのです。」


ーー俺はそれを聞くと、妙な納得をした。


  ニルンドが最高戦力に位置付けられる理由を、この目でしっかりと見せつけられたのだから......。

  彼女は強かった。

  それに気付かされた時、俺は驚愕する。

  只の変わり者ではなかった事に......。

  俺がそんな風に立ち尽くしていると、一瞬で戦いを終えたニルンドが俺達の元に戻って来た。

  そして、真剣な表情で一つため息をつく。


ーーすると、その後、すぐにニンマリとした表情を浮かべて、

「まあ、あの程度の魔物では、話にならないな!! そんな事より、さっきの話の続きをするか!! 」

と、再び暑苦しいテンションに戻って、俺の方を凝視していた。

  そんな彼女の姿を見て、俺は思った。


ーーやっぱり、この女は変わり者だな......。


そう考えると、俺達は再び木陰に腰を下ろして彼女に質問を投げかけるのであった。

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