天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第103話 最高戦力の女。


ーーーーーー

  俺は今、快適な馬車の中で、物凄くうんざりしている。

  理由は、言うまでもない。


ーー俺の対面に腰掛けている最高戦力のせいだ。


  彼女の探究心は人より強い様だ。


ーーそれも、常軌を逸している。


  俺が『異世界人』である事もあり、しかも、これから転移出来るかもしれないと言う状況に興味を示し続ける。

  彼女は身を乗り出して興奮気味に俺に問いかけ続ける。


ーーそれは、もう既に『特殊異能部隊』の訓練施設を出発してから五時間程が経過しても尚、収まりを知らない。


  そんな事もあり、正直なところ、俺は『ヘリスタディ帝国』との初陣を終えた時よりも疲れているのだ。

「そ、その、スマートフォンとは、どの様な作用を示すの?! 」


ーー今は、俺が転移に成功した際、あちらの世界で違和感を持たれぬ様に持って来た制服と、学生鞄に興味津々になっているところだ。


  その中でも彼女が一番気になっているのが、スマートフォンらしい。

  俺はそんな彼女による取り調べにも似た行為に飽き飽きとしながらも、使い方を教えてあげた。


ーーこれに食いついてくれれば、少しはゆっくりと出来るかもしれないので......。


  何故かさりげなく桜を小脇に抱えたまま離さないでいるし......。

  桜はそんな彼女のテンションにぐったりとしている。

  とりあえず、この世界に来てからずっと、スマートフォンの電源を切っておいて良かった。

  そう思うと、携帯の電源を入れた後で、彼女に渡すのだった。

「もし良ければ、思う存分使ってみるといいよ。」

  俺はそう言うと、彼女は桜を力強く掴んでいた左腕を解放して、両手でスマートフォンを手に取った。

「なんと言う不思議な物!! この小さくて四角い箱、光を放って絵を映し出しているじゃないかーー!!!! 」

  彼女はおかしなテンションでスマートフォンを色々な角度から覗き込んでいる。


ーーそれをチャンスとばかりに、桜は解放された腕から逃げ出し、俺の元へと戻ってくる。


「雄二、あの人やばいよ......。逃げようとしても、力が半端なかった......。」

  桜はうんざりとした表情を浮かべて、咳き込んでいる。

  俺はそんな桜の頭を撫でた後で、

「それは、お気の毒に......。」

と、本心で呟いた。


ーーーーーー

  それから暫く、ニルンドはスマートフォンをいじり続ける。

  途中、操作方法などを聞いて来たのだが、それに関してはしっかりと教えてあげた。

  彼女はその説明を聞く度に過剰に反応して、俺はその度に、やはりニルンドと言う女は変わり者である事を、強く感じるのであった。

「なるほど!! わかって来たぞ!! だが、不思議な物だな。この箱、キッチリと項目が分けられている。『日記』とか、『カレンダー』とか......。流石は軍帥殿の生まれ故郷!! この私でも、さっぱりとメカニズムが分からない!! 」

  彼女は相変わらず変なテンションで大きな独り言を言っていた。


ーーいや、待てよ......?


  今、『日記』や『カレンダー』とか言っていたな......。

  何故、この女は日本語が読めるのだ?

  俺はそんな相変わらず一人で歓声を上げている彼女に対して、こう問いかけた。

「お前、もしかして日本語が読めるのか......? 」

  俺がそう問いかけると、彼女は自信満々な表情を浮かべて、

「当たり前であろうが!! 何よりも、『二代目聖騎士』と共に転移の研究をしていたのは、紛れもなく私なのだからな!! 日本語が読めなくては、古文書も読めないじゃないか!! 」

と、熱く語っていた。


ーー俺はその言葉を聞くと、彼女が何故、共に『メディウス』に向かう事になったのかを理解した。


  それに、日本語まで習得している辺りが彼女の博識を物語っている。

  しかも、もう既にして彼女は見事に俺の携帯を使いこなしているのだ......。

  俺はそれに気がつくと、彼女は只の変わり者では無いと思った。


ーーこの女、侮れないと......。


  そんな時、アメールは馬を止め、俺達に向けこう言った。

「今丁度、『メディウス』に続く一本道へと辿り着きました。ここら辺で一度休憩を取りましょう。」

  俺達はそれを聞くと、了承をした。

  そして、思う。


ーー今まで散々質問攻めに遭ったんだ。


  次は俺がニルンドに問い詰める番だと......。

  そう強く決意すると、俺は馬車から降りて、近くにある木陰へと腰を下ろすのだった。

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