天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第102話 変わったメンバー。



ーーーーーー

「『メディウス』までの道程は、約三日くらいとなっております。一本道なのでそこまで過酷な旅になる事はないのですが......。一応、敵国の攻撃の可能性があるかもしれないので、警護の者を派遣致します。それと、スパイの可能性があるので、例え『特殊異能部隊』の方々だとしても、決して他言は無用でお願いします。」

  森山葉月の注意事項を思い出しながら俺は、施設へと戻る坂を登っていた。

「本当に楽しみだよ~!! 桜、雄二の故郷では、こっちに無い食べ物を沢山食べるんだ!! 」

  桜は俺の地元に行ける可能性がある事について、大いに胸を膨らませている。


ーー俺は、そんな桜が口を滑らせてしまう事を、懸念していた。


「まあ、まだ行けると決まった訳では無いが、とりあえず内緒なんだから、みんなに話しちゃダメだぞ!! 」

  俺がそんな風に口元に人差し指を立てると、桜も同じジェスチャーを取った。

  そして、無邪気な笑顔になって、明るい口調でこうはしゃぐ。

「しーっ!! 秘密は守ります!! 」


ーーその声は、明らかにワクワクが隠しきれずにいる程大きかった。


ーー本当に大丈夫だろうか......。


  俺は少し心配になりながらも、小さく頷く。

  そんな話をしているうちに、いつの間にか施設に到着したのだ。


ーーーーーー

  日が暮れて数時間が経過した時、俺は施設の中へと帰宅した。


ーーだが、入り口の先にある広場には、相変わらずわざとらしい程、規律正しく整列して待っている『特殊異能部隊』の皆がいた。


ーーその端にはしっかりとキュアリスの姿もある......。


「お疲れ様です!! 隊長殿、桜殿!! 」

  リュイがそう叫ぶと、それを皮切りに部隊の皆も復唱する。


ーーちゃっかりキュアリスも同じ事をしている。


ーーこればっかりは、いつまで経っても慣れる事は無いだろう......。


「そんな大した事はしていないよ。只、軍帥と少し話をしてきただけだから......。」

  俺がそんな風に困惑の表情を浮かべながらそう言うと、リュイは万遍の笑みで俺に向け、

「いえいえ!! 軍帥殿とお話すると言う事は、余程の事と捉えております!! 今回はどんなお話をされてきたのですか?! 」

と、目を輝かせながら、探究心を前面に押し出して詰め寄ってきた。


ーーそんな中、俺が困っていると、奥の方で整列しているキュアリスはニコニコと俺の姿を見ていた。


  俺はそんな窮屈な状況の中で、彼女の問いに答えようとしていた。


ーーだが、そんな時、まだ興奮冷めやらない桜は、大きな声で、

「えっとね!! それは......。」

と、明らかに転移についての話をしようとしたので、俺は取り繕って、桜の口を塞ぎ、

「さ、さっき食べたご飯が口の周りに付いているぞ!! しっかりと拭いておかなきゃな!! 」

と叫んで、無理矢理黙らせるのであった。

  その後で、一つ頬杖をつき、俺は機転を利かせた。

「これから『遊撃士』になるにあたっての話をしてきた。後、突然の話になるが、明日からはそれに際しての用事で俺と桜が数日間この場所を空ける事になる。」

  俺の言葉を聞くと、リュイは少し切ない表情を浮かべた。

  そんな時、キュアリスが俺達の前にやって来た。

「まあ、雄二もこれからが大変になるんだね......。二人がいない間、この施設は私が見ておくから、気にせずに行ってくるといいよ!! 」

キュアリスはそう言うと、万遍の笑みで敬礼をしていた。


ーーそれを聞いた周囲は、不安な表情から一転して、安心した顔をしていた。


ーー俺はそんな気遣いをしてくれるキュアリスに、

「あ、ありがとう......。なら、頼んだぞ......。」

と、彼女に託す事にした。

  それを区切りに俺は、準備の為に部屋へ戻った。
  

ーー暴れている桜の口元を塞ぎ続けながら......。


ーーーーーー

  俺はもうすぐ、『特殊異能部隊』からいなくなる。


ーーそれは分かっているのだが、それ以前に元の世界に戻る事になるかもしれないのだ。


ーーだが、もし戻れなかったら......。


  俺はそんな不安を少しだけ感じた。

そして、部屋のベッドの中で森山葉月の言っていた兄の口癖を思い出す。


ーー『この世界を救う』ーー


  俺は前にこの世界に来た時、キュアリスに同じ事を言った。


ーーそれはもしかしたら、因果なのかもしれない。


  はたまた、血筋なのか......?

  俺はそんな風に思いながら、ベットに体を投げ込んだ。

「これからどうなるのかな......。」

  そう呟くと、桜と遊んでいたキュアリスは俺の方に顔を向け、にこやかにこう言った。

「これから何をするのかは分からないけど、一つだけ言える事があるよ!! 雄二なら、大丈夫!! 」


ーー俺はその言葉を聞くと、笑顔でいる彼女の目を見た。


  その目には、本気で言っているとすぐにわかる程、真剣な物だった。

  いや、多分、俺は彼女の口からそう言って貰いたかったのかもしれない。


ーーいちばん信頼してくれていて、いちばん信頼している彼女から......。


「ありがとな、キュアリス......。」

  俺は彼女の純粋な言葉に対して、一つお礼を述べた。

  すると彼女は、笑ったままの状態で、

「どうせ、また危険な事をするんでしょ? でも、余り無理はしちゃダメだからね。」

と、優しい口調で答えた。


ーーそんな事言われたら、頑張るしか無くなるじゃないか......。


  俺はそんな風に考えた後で、寝返りを打った。


ーーーーーー

  俺が施設の入り口の門の外で国家からの使いを待っている時、背後からは多くの視線を感じる。


ーー先程、リュイの呼び掛けにより、何故か出発式たるものをやらされて、散々激励されたばかりであった。


  やっとの思いでそれを終えて、俺と桜は外に出て来たのだが、未だに門の中から俺達を見つめ続けている。


ーーと言うよりも、俺ってそんなに頼りにならないか......?


  そんな風に考えた後で、俺は小さくため息をついた。

  だが、隣にいる桜は、俺の手を握った後で、こう呟いた。

「みんな、本当に雄二の事が大好きなんだね......。」
 
  俺は桜の一言を聞くと、遠くの空を見つめる。


ーー何だか、少し照れ臭くなって......。


そんな時、国家の物と思しき馬車が遠目に見えた。


ーーふと、馬の手綱を引いている者の顔を見ると、先日先導してくれた、アメールそのものだった。


  そして、到着した所で、馬から降りて俺の目の前に立ち、深々とお辞儀をした。

「お待たせ致しました、佐山雄二殿。今回、私が旅のお供をさせて頂きます。道中、宜しくお願い致します......。」

  彼女はそう丁寧に挨拶をすると、馬車のドアを開けて俺と桜を誘導した。

  俺はそれに対してお礼をして、馬車に乗り込もうとした。


ーーすると、その中には空の最高戦力である『ニルンド』が優雅に紅茶をすすりながらすわってちた。


  俺はそれに驚いた後で、彼女にこう問いかけた。

「何で、お前がいるんだよ!! 」

  そんな俺の問いかけに対して、彼女は微笑を浮かべた後で、

「仕方ないじゃない。葉月さんからの指令なんだから......。それに、これから『遊撃士』になる人とも、とも仲良くなっておきたいし......。」

と、言いながら、大きな胸を前に突き出してそう訴えた。


ーー俺はそんな彼女の仕草に顔を赤くして目を逸らした。


  そんな俺を見た桜は、うんざりした表情の後で、俺の手に噛み付いた。

「痛いわ!! 何するんだよ!! 」

  俺が桜に怒鳴ると、桜は口を手から離した後で、

「なんか知らないけど、無性に腹立って......。」

と、怒りを露わにしていた。

  その後、俺は慌てて取り繕い、

「ま、まあ、最高戦力がいてくれるとこちらとしても心強いよ!! これからの数日間、よろしくな!! 」

と、手を差し出した。

  すると、ニルンドはニコッと笑いながら、

「うん、よろしく。これからじっくりとあなたの観察をさせて貰うから。」

と、少し怖い事を言いながら、俺の手を取った。


ーー変わり者だな......。


  俺は彼女の所作を見て、そう思った。


ーーそして、アメールは俺達が乗り込んだのを確認すると、馬車のドアを閉め、馬の手綱を取った。


  それを皮切りに馬は走り出す。


ーー遺跡がある、『メディウス』の元へと......。


  ふと、窓の外から後ろを見ると、施設の門の前で、俺の部下達が大きく手を振っていた。

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