天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第100話 神話の中の英雄。


ーーーーーー

 『異世界の料理店』に足を踏み入れた俺は、いつも通りカウンターにて座り、俺の事を見つめている森山葉月を見ていた。

  彼女は箸を使って悠長に豆腐を口にする。

  その後で、呆然としている俺と桜に対してこう促した。

「どうぞ、お隣へお掛けになってください......。」

  それを聞くと、俺と桜はカウンター席に腰掛ける。

  桜はカウンターの前にあるショーケースに並べられた魚や野菜などを見つめて恍惚の表情を浮かべていた。

  それを見た店主の中年は、そんな桜を見てニコッと笑って、

「うちの料理はどれを取っても美味しいぞ!! 何が食べたいか?! 」

  と、威勢良く彼女にメニューを渡した。

  すると桜はそのメニューを手に取ると、万遍の笑みを浮かべながら、

「それならねぇ、この前食べた『刺身』ってやつと、卵焼きと、焼き魚と、『おでん』って言うのお願いします!! 」

と、目に見えた物を次々と注文した。

  俺はそんな桜を見ると、苦笑いをしながら軽く頭をはたく。

「お前、そんなに頼んだら、太るぞ......。」

  それを聞いた桜は相変わらずニコニコとしながら、

「大丈夫だよー!! その分、体を動かせば良いんだから!! 」

と、俺の注意を聞き入れずに再びメニューに目をやった。

  俺はそんな彼女にうんざりしながら、左隣に座る森山葉月を見た。

  すると森山葉月は、笑いながら、

「食べ盛りで良いじゃないですか......。」

と、肯定的な返事を返す。

  俺はそれを聞くと、深くため息をつくのだった。

  そして、俺も漬物の盛り合わせと、ビールを頼むのであった。


ーーだが、それにしても『異世界人』同士の話とは、何なのだろうか......。


  俺はそこに疑問を抱く。

  すると、そんな俺の思考を察したかの様に、森山葉月はこう切り出した。

「まず始めに言っておきますが、佐山雄二さんと観音寺桜さんは、我が国からしても、敵国からしても、重要な人物なのですよ。」

  彼女はテーブルに肘をついて俺と桜に目をやりながらそう呟く。


ーー俺は彼女の話を聞いた後で、ふと、『ヘリスタディ帝国』の実験に関する最後のページに特筆して俺と桜の名が記されていた事を思い出す。


ーーそれに初陣の際も、悠馬は俺の事を『最重要』と位置付けていた。


  そこで俺は、森山葉月に問いかけた。

「思い当たるフシは少しあるよ。だが、何故俺と桜なんだ? 」

  俺がそんな疑問をぶつけると、森山葉月は下を向いた後で、真剣な表情になった。

「この世界に転移した中には、稀に『異能』を使わぬ通常時でも相手のオーラを見抜くスキルを有する者がいます。基本は自分の使える『異能』準じたオーラになるのですが......。」

  俺はそれを聞くと、俺と桜が人と違う事を理解した。

  すると、森山葉月は再び続けた。

「今見えている、あなたと桜さんのオーラは、白く光り輝いているだけなのですよ。」


ーー俺は彼女の発言から、森山葉月自身もオーラを見る事が出来る存在である事を理解した。


「お前にも見えるのか......。だが、それにしても、それが俺達を狙う理由になるのには、些か疑問がある。たかが、オーラが違うだけなのに......。」

  それを聞いた森山葉月は、小さくため息をついた。

「その理由はですね......。『メディウス』にある遺跡の古文書に記されている神話にあるのですよ......。」

  そう言った彼女はそれから静かに説明を始めた。

  彼女曰く、古い神話が書いてある古文書は、日本語で書かれているらしい。

  その話には、『英雄』と呼ばれる人間が登場する。

  その者は、年端も行かない子どもと共に、異次元を行き来する事が出来、世界を救ったとも記されていた。


ーーそして、その『英雄』と子どもが放つオーラは、白い光だと......。


「要は、あなた方は神話に登場する『英雄』と余りにも共通点が多過ぎるのですよ。そして、それを嗅ぎ付けたのが、『ヘリスタディ帝国』であります。」


ーー俺はその話を聞き終えた後で、自分を疑った。


ーーこんな自分が、神話に出てくる様な『英雄』な訳がないと......。


  そして俺は彼女に向けて、苦笑いしながらこう取り繕う。

「いやいや、俺ごときがそんな大それた存在な訳が......。」

  そんな俺の否定的な発言に対して、森山葉月は眉間にシワを寄せて、語尾を強めこう答えた。

「その自己否定が、あなた自身の成長を妨げているのですよ! だから、狙っていると分かっている『ヘリスタディ帝国』への初陣にも、わざわざ危険を冒してまで行って頂いた! その真意だけは、分かって頂きたい。」

  俺はそれを聞くと俯く。


ーー彼女のこんなに強い口調は初めて聞いたから......。


ーーだが、いまいち理解に苦しむ。


  突然、『あなたは英雄です』などと伝えられれば、誰だって否定したくなるものだから......。

  すると、森山葉月はそんな俺の事を見つめながら、続ける様にしてこう言った。

「熱くなってしまって申し訳ありませんでした......。どうしても、あなたが信用してくれないと言うのならば、一度、『メディウス』にある遺跡まで足を運んで頂きたい。まだ『遊撃士』になるまでには時間がありますから......。そうすれば、あなたの内に秘められている誰にも持つ事の出来ない『才能』に気がつく筈です......。」


ーーそんな彼女の提案を聞くと、俺は真意を確かめたくなった。


  もし仮に、森山葉月が訴える事が事実なのだとしたら、少しは自信が持てるかもしれないと考えて......。

  だが、どうしても気になる事があった。


ーー何故、森山葉月は何もかもを知っているのかと......。


  そこで、俺は問いかけた。

「ならば、一度足を運んでみようと思うよ。だけど、一つだけ質問させてくれ。何故、お前は俺が『英雄』だという確証が持てるんだ......? 」


ーー彼女は俺の言葉を聞くと、静かに俯いた。


  その表情からは少し切なさを感じる程、哀愁が漂っていて、何か深刻な理由がそこにある気がした。

  それから、数秒間の間を取った後に、静かに口を開いた。


「それは、かつて『転移』に関する研究を積極的にやっていた人が出した結論とあなたが全く同じだったからです......。」

  彼女は話し終えた後も、悲しい顔をしている。

「それは一体誰なんだ......? 」

  俺は不謹慎ながらも、その人物の素性が気になって仕方がなくなり、思わず彼女に聞いてしまった。


ーーすると彼女は、蚊の鳴くような声でその問いに答えた。


「その人は、『二代目聖騎士』佐山浩志、あなたの実の兄です......。」


ーー俺はその名を聞くと、驚きで何も言えなくなった。


ーーそして、その瞬間に俺からすっぽりと抜け落ちてしまっていた物を、全てを思い出す。


ーー何故か忘れ続けていて、誰よりも優しかった兄の存在を......。


  それから俺の頬からは、涙が伝う。

「何故、今まで思い出せなかったんだ......。」

  俺がそう言ってカウンターのテーブルに倒れ込むと、俺達の会話を気にする事なく食事をしていた桜が、俺の背中を摩る。

「この世界に『転移』すると、あちらの世界では存在が無くなってしまうんですよ......。」

  森山葉月は泣き崩れる俺にそう説明を付け加えた。


ーー長らく忘れていた兄、『佐山浩志』の存在......。


彼は俺が転移をするずっと前に、この世界で戦っていたのである。

  その末に、命を落としてしまったのだ......。

  俺はそんな兄との思い出を一つ一つ思い出す。


ーー消えてしまった記憶を手繰り寄せる様に......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    雄二はよく泣くなーʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ

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