天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第98話 問題の解決。


ーーーーーー

  俺がキャロリール王女と会話を交わしてから会場へ戻って暫く経過した後も、未だに晩餐会は終わる気配すら感じられぬ程の盛り上がりを見せていた。


ーーもう既に日にちを跨いでまで続いているのだが、いつまで続くのだろうか......。


  そんな風に、先程王女から伝えられた『俺のまだ知らない事』という事に対する胸のモヤモヤを抱えながら、ワイングラスに手を付ける。


ーーしかし、先程と違い、俺が酔う事は無かった。


  だが、隣ではよく知っている二人がテーブルに持たれる形で爆睡している......。

  ひとりは満腹になった事と、遅い時間である事が相まって、もうひとりは、自分の摂取量を遥かに超える飲酒による睡魔に襲われて......。

  俺はそんな二人を見て一つため息をついた。

「お前ら本当に帰れるのかよ......。」

  俺がそんな風にうんざりとした表情で呟くと、円卓の正面からこんな声が聞こえて来た。

「もう、随分と遅くなってしまいましたね......。」


ーーその声の主は森山葉月である。

 
   そう言えば、最初に会ってからというもの、晩餐会にて彼女の姿は一度も見ていなかった。

「まあな......。これから『異世界の料理店』に向かわなければならないのに......。」

  俺がそう呟くと、彼女は微笑を浮かべる。

「その話ですが、今日はもう遅いので、明日の夜にしようと思います。今日は、皆さんの面倒も見ねばならないとでしょうし......。それに、私自身にも仕事が出来てしまいましたので。」

  俺はそれを聞くと、小さく頷いた。


ーーだが、一刻も早く聞かなければならない事が一つあった。


  それを俺は、彼女に問いかける。

「あの三人は今、どうしているんだ......? 」

  そんな俺の質問に彼女は一瞬真剣な表情を浮かべた。

  だが、その後で再び微笑み、

「今の所は事情聴取を受けているところです。皆さん、正直に答えてくれるので、安心しておりますよ......。」

と、現状を説明した。

  俺はそれに対して、唇を噛み締めた。

「やはり、何らかの罰を受ける事になってしまうのか......? 」


ーー普通に考えれば、国家において謀反の罪を犯した、言わば、反逆者だ。


  正直なところ、どんな刑に科せられてもおかしくは無い話なのだが......。


ーー最も可能性が高いのは、極刑である......。


  すると、俺の表情を見た後で、彼女は思わぬ答えを出した。

「それに関してはあなた次第ですよ。」


ーーどういう事だ......?


  彼らの去就は俺次第とは......?

  俺がそんな風にポカンとしていると、彼女は続けた。

「反逆者とは言え、お三方とも非常に優秀な人材ではありますので......。ですが、やはり犯した罪の大きさから考えると、何らかの措置を取らねばならないのは事実です。そこで......。」

  彼女の本筋が見えぬ所で俺は再び問いかける。

「そこで......? 」

  俺がそう質問すると、彼女はニコッと笑った後で、

「それは、あなたが『遊撃士』をお受けしたとしたら、あなた自身が監視役として彼らの事を見張っていてほしいのです。」

と、答えるのであった。

「それってつまり......。」

  俺は彼女の真意に気がつくと、下を向きながらそう呟いた。

  そんな俺に対して、彼女は続けた。

「はい、『遊撃』の一員として、あなたの部下として働いて頂こうと......。」

  俺はそんな森山葉月の発言に嬉しくなった。


ーー助けたくて、不安で仕方がなかった今後の三人の扱いは、最高の形になったのだ。


  元々彼らについてはその手段で救済しようとしていたのだが......。

  俺はそれにすっかりと安心すると、対面に座っている森山葉月の元へと歩いて行き、彼女の両腕をガシッと掴んだ。


  そして、大きく息を吸い込んだ後で、

「なってやるよ!! 俺が『遊撃士』に!! それでミルヴィールもグリンデルも矢立も助かるのならな!! 」

と、笑顔で叫んだ。

  森山葉月は、そんな俺の勢いに多少困惑した表情を浮かべ、こう返事をした。

「そ、そうですか......。ご決断して頂いて、大変有り難いと思います......。では、その方向で話を進めて......。」


ーーだが、その時、俺の叫び声を聞いたミルトが俺の元へとやってくる。


「なになに?! 雄二、『遊撃士』になるの?! それって、国家の最高戦力になるってことじゃん!! 凄いね!! 」

  彼女は酔っ払って俺の宣言に拍車をかける。


ーーしかも、その声は会場全体に響き渡る程の大きさだ。


  それを聞いた会場の全員は、俺の方へ顔を向ける。

「遂に、長年不在だった『遊撃士』が復活するというのか?! 」

  ある貴族はそう叫ぶ。

  それと同時に会場の皆は、俺の元へと駆け寄り、酔っ払いながら俺を称賛した。


ーーしかも、挙げ句の果てには、胴上げまでする始末だ......。


   俺はそんな行為に小っ恥ずかしさを感じながらも、三人が助かる事にホッと胸を撫で下ろして宙を舞うのであった。


ーーーーーー

  あれから一時間程経過した時、やっと晩餐会は終了したのだった。

  もう立てなくなっているキュアリスは、俺が背中におぶって一度『特殊異能部隊』の施設へと運ぶ事にしていた。


ーー本来なら彼女の部屋は王宮内部にあるのだが、一度起きた時に『同じ部屋がいい』と駄々を捏ね始めたので......。


  そして、眠気と戦い半目になっている桜には歩いてもらう事にした。

  周囲の部隊の面々も、千鳥足で歩いている。

「今日は本当にありがとう。とても楽しい時間だったよ。」

  王宮の出口までわざわざ見送りに来たキャロリール王女に向け、俺はそうお礼を述べた。

  すると、かなり酔いの回っている彼女は、一度ゲップをした後で、こう答えた。

「気にするでない!! それよりも明日、必ず『異世界の料理店』に行くのだぞ!! 何があってもだ!! 」

  彼女は俺に向け、そう釘を刺す。

  俺はそれに対して小さく頷いた。


ーーとりあえず、三人の心配は無くなったんだ。


  後は、ある程度気軽に話す事が出来る。

  そんな心の余裕を持ちつつ......。


ーーだが、そんな去り際の俺に、王女はまた気になる事を言った。


「内容がどうも、『異世界人』に関わる話らしいのでな......。まあ、詳しくは明日聞けるだろう。」

  そう言うと、彼女は俺達に手を振った後で、静かに王宮へと戻って行った。


ーー俺はその後、思う。


  森山葉月もまた、この世界への転移について重要な情報を握っていると......。

  そう考えながら、キュアリスの重みを全身に感じながら、俺は施設へと戻って行くのであった。


ーー恥ずかしいまでに泥酔した部隊の面々と共に......。

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