天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第97話 王家の晩餐会。


ーーーーーー

  俺達は王宮に到着すると、別館にある大きなホールの方に案内をされた。

  そこの中に入ると、多くの貴族や、国の要人と思しき人々が、規律よく席に座っている。


ーーそして正面には、風格を漂わせ、高級そうなドレスを身に纏い、前に会った時とは別人かと思わせる程高貴な雰囲気の王女が、金色の椅子に腰掛けこちらを見ていた。


  それはまさに、この国の長と言わんばかりの立ち振る舞いで、俺はそんな彼女に圧倒されていた。


「それではこれより、今回の初陣、見事に戦果を上げて国家を守った、『特殊異能部隊』並びに、『聖騎士』フレイディア・キュアリスの賞賛の意を込めて、帰還の儀式を執り行いたいと思います!! 」

  そう宣言したのは、『国王軍軍帥』である森山葉月であった。


ーー俺はこの世界における儀式の類とは無縁であった為、周囲を確認しながら咄嗟に立ち振る舞いをする。

  
  皆が深々と頭を下げていたので、俺もそれを真似する。

  そんな風に取り繕っていたのであった。


ーーそのまま暫く頭を下げたままの状態が続いた後、王女はこう言った。


「皆様、顔を上げてください。」

  それを聞いた俺は、顔を上げ、穏やかな表情を浮かべたキャロリール王女を見る。

  すると、彼女は小さく微笑んだ後で、

「今回の戦い、ご苦労でありました。ついては、神々の祝福を捧げたいと思います。佐山雄二さん、こちらの方へ......。」

と、俺に前へ出る様に催促をする。


ーーこの子は、本当にキャロリールなのであろうか......?


  俺が前に会った時の彼女のイメージは、感情に素直で、一人で勝手に出かけてしまう破天荒な女の子であったはずなのだが......。

  俺がそんな風にポカンとして立ち尽くしていると、隣に立っているキュアリスが俺の左肩を小突く。

「早く前に出て......。」

  彼女の囁きを聞くと、俺は我に返り、綺麗に並んでいる部隊の一歩前へと踏み出した。


ーーするとキャロリール王女は、俺の方へと近寄って来て、俺が来ている軍服の胸元に金色の装飾品を付けた。


「これは、我が王家からの賞賛の証になります......。」

  俺はそれを受けると、とりあえず頭を下げた。


ーーそれと同時に周囲からは拍手が聞こえてくる。


  どうやら、俺の振る舞いは合っていた様だった。

  そしてその後、貴族からの挨拶があった後で、帰還の儀式は終了した。


ーーーーーー

  帰還の儀式が終了すると、俺達は王宮の客室にて、今回の勝利を祝う晩餐会に参加した。

  その場所には、今まで見た事がない程に高級そうな料理や酒が並んでいた。

  部隊の面々は、それを見るなり恍惚の表情を浮かべる。

  そして俺は、そんな周囲の様子を眺めていた。

「ここまでが、儀式でありますので......。」

  近くにやって来た森山葉月はそう呟く。

  俺はそれに対して、ちょっとした疑問を投げかける。

「それは良いとして、今は戦争状態の筈だろ......? こんな所でのうのうと飲み食いなんかしてて良いのかよ......。」

  俺が小声でそう呟くと、森山葉月はニコッと笑いながら、

「それは問題ありません。再び『ヘリスタディ帝国』が動きを見せたという事もあり、我が軍の第二部隊はもう既にその場所へと向かっておりますので......。それに、あなた方はもう職務を全うしました。」

と、さりげなく今の状況を説明する。

  俺はそれに対して、一つため息をついた後で、

「それなら良いのだが......。」

と、無理矢理納得する事で、食事の方に手をつけるのであった。

「後、この晩餐会が終わり次第、あなた一人で『異世界の料理店』に来てください。そこで、少し話したい事がありますので......。」

  森山葉月は、俺にそう言う。

  俺はそんな彼女の誘いに、

「わかった。とりあえず、俺も聞きたい事が山程あるからな......。」

と、受け入れた後で、彼女は俺の元から去って行った。


ーーその場所でキッチリと聞かねば......。


  連れて行かれた三人の事、そして、『メディウス』という場所について......。

  そんな風に考えていると、背後から何者かに物凄い勢いで肩を叩かれた。

「久しぶりだね~!! こんなに美味しい物を食べるのなんて~!! 」

  そう呂律の回らない口調で話して来たのは、キュアリスであった。


ーー片手に赤ワインを持っている辺り、彼女が酔っ払っている事はすぐにわかる。


  だが、まだ晩餐会が開始して十五分程しか経っていない筈では......。

  俺はそんな事を考えながら、冷や汗をかくのであった。

「何静かに座っているのよ~!! ほら、雄二も飲まないと~!! 」

  彼女はそう叫ぶと、テーブルの上にあるワインを無理矢理俺に持たせる。

  そして、飲む様に促して来るのだ。


ーーいやいや、一応これは、王家が主催の晩餐会だ。


  そんな場所で酔う訳には行かないだろ......。

  俺はそんな風に思ったのだが、ふと、周囲を確認すると、部隊の連中は皆、余り上品ではない振る舞いでガブガブと酒を飲んでいる。


ーーしかも、その中心で目にも止まらぬ速さで酒を飲み干している張本人は、紛れもなくキャロリール王女なのだ。


「この状況、大丈夫なのか......? 」

  俺は、顔を真っ赤にして、フラフラと立っているキュアリスに向け、そう問いかける。

  すると彼女は、相変わらずベロベロな口調のまま、こう答えた。

「いやいや~、この国の晩餐会はこれが普通なんだよ~!! 楽しむ事によって、帰って来た兵達を盛大にお祝いするの!! そんな事より、早く飲みなさい!! 」

  そんな彼女の説明を聞くと、俺は少し首を傾げた後で、そういうものなのだと解釈した。


ーーそして、手に持っているワインを勢い良く飲み干す。


  すると、俺の体の中から熱がこみ上げてくる。

  そう、前にやった親睦会の時と同じ感覚だ。

  俺はそんな人生二度目の酒に、少しだけ気分が良くなって、キュアリスに座る事を促すのであった。


ーー右隣で暴食している桜を横目に......。


ーーーーーー

  結局、晩餐会はもう既に数時間が経過していた。

  時間が経つ毎に、どんどんと人々は酔いを深めて行く。


ーーそれは、王家も貴族も軍人も全く関係がない......。


  それを証拠づけるのは、やはり、キャロリール王女だ。

  彼女は顔を真っ赤にしながら、リュイやミルトと肩を組んで酒を飲んでいる。


ーーどうやら、相当酔っ払っている様だ。


  それに隣にいるキュアリスも、何故かずっと俺の手を握りながらニコニコと俺を見ている。

「本当に、雄二は最高だよ。」

  この晩餐会が始まってから、彼女のこの言葉を数十回聞かされている。


ーーキュアリスは下戸である。


  俺も少し酔いが回って、いい気分になっていると、桜が右から肩をトントンと叩いてニンマリとした後、

「良かったじゃん、キュアリスと手を繋げて......。」

などと囁きながら、そんな事を言って来た。

  俺はそれに対して、

「こ、これに関しては仕方ないだろ......。」

と、苦笑いをする。


ーーすると、俺の右隣にいる桜を見つけたキュアリスは、ゲラゲラと笑いながら桜のところまで歩いた後でギュッと彼女を抱きしめて、

「桜を抱きしめると落ち着くよ~!! 本当に可愛いから困っちゃうね!! 」

と、上機嫌な様子であった。

  抱えられ、少し困っている桜を見ると、俺は少しニヤつきながら、

「良かったじゃねえか、桜。」

と言って、用を足す為に席を立った。

「ちょ、ちょっと待ってよ!! 雄二!! 」

  キュアリスの熱い抱擁に困惑しながら、叫ぶ桜の声を遠くに聞きながら......。


ーーーーーー

  用を足した後、再び晩餐会の会場へと戻る廊下で、俺はキャロリール王女に会った。


ーー彼女もまた、相変わらず酔っ払っていて、千鳥足になっていた。


  そんな彼女は俺の存在に気がつくと、突然走り出して来て、俺の肩にもたれかかった。

「今回は、本当にありがとう!! キュアリスの事だって、あんたには感謝しても仕切れないよ!! 」

  彼女は一際大きな声で俺にそう感謝を述べる。


ーーやっぱり王女の本性はこっちなのだ。


  そんな事を考えた後で、俺は、

「気にしないでくれ。これからも『国王軍』に残って戦うつもりだよ。」

と、酔っている事を隠す様にして、そう宣言をした。

  すると彼女は、ニヤッと笑いながら、

「それは良かったよ......。後、これから葉月と会って話をするんだろ? そこで、かなり重要な話があると思うから、よく聞いておくのだぞ!! 」

と、さらっと気になる事を呟いた。


ーー重要な事......?


  俺は思い当たる事が多すぎて、どれであるか少し戸惑う。

  すると、キャロリールはそんな俺の考えを察したかの様に、

「それは多分、まだあんたの知らない事だよ。」

と、答えるのであった。


ーー俺の知らない事......?


  俺はその先にある事が気になって仕方がなくなる。


ーーそして俺は、キャロリール王女の圧を体に感じながら、少しだけ酔いが覚めるのであった......。

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