天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第96話 首都への帰還。


ーーーーーー 

  俺達は後僅かで『首都リバイル』到着する程に足を進めていた。

  約一週間程の長旅は、行きと同じ様に途中、各支部の宿舎を借りては、そこの責任者から開戦における初陣の勝利への賞賛を受けていた。


ーー途中寄った『フレンディア』においても、メローやメリー、それに、駐在しているフリードやルインドも、俺達を褒め讃えた。


「本当に、雄二さんは僕の中の常識を打ち砕いてくれる、最高の存在です!! 」

  そんな風にフリードは特に喜んでおり、俺も照れながらその賞賛を受け入れるのであった......。


ーーだが、その様にして刻一刻と首都に近づけば近づく程に俺の足取りは重くなる。


  何故なら、グリンデル、矢立駿、ミルヴィールの去就が気になって仕方がないからだ......。

  俺の方でも一応、その対策は考えているのだが、些か上手く行くかどうか......。


ーー不安になる。


  だが、俺がそんな風に情けない表情を浮かべていると毎回、俺の前に座っている桜が俺の顔をつねり出す。


「また、そんな顔して!! 」

  俺は彼女からの優しい叱咤激励を受ける度に、正気に戻る。

  それを見た隣で馬を走らせるキュアリスは、フフッと微笑むのであった。


ーー桜はいつも、俺の不安を取り除いてくれる。


ーー多分、これからも......。


  俺達がそんなやり取りをしていると、ミルトが俺の馬に並走をして来た。

「本当に三人は仲良しなんだね!! 後、私の尊敬する『聖騎士』さんが、思ってた通りの優しい人で良かったよ!! 」

  彼女はそう、ハニカミながらそう言った。
  
  それを聞いたキュアリスは、

「そ、そんな事ないよ......。」

と、嬉し恥ずかしな表情を浮かべる。


ーーそうなんだ。


  ミルトはあの時の一幕を見てしまっていた。

  結局、俺はミルトにキュアリスのフォローをする事なくここまで来てしまっていたのだが、キュアリスと仲睦まじく話す姿を見て、彼女自身が思ったのだろう。


ーー尊敬する『聖騎士』のイメージと合致していた事を......。


  そして俺は心の中でこう呟いた。


ーーそんな憧れの『聖騎士』が、これからお前の上司になるんだぞ、と......。


  ふと、後ろの方を見渡してみる。


ーーいつも側で支えてくれた部隊のみんな......。


  俺はこれから彼女達と行動する事が無くなる。

  だがそれは、仕方のない事だ。

  そんな風に切ない気持ちを抱いていると、リュイが俺に向けこう言った。

「やっと見えて来ましたよ!! 『首都リバイル』が!! 」

  俺はそんな彼女が叫ぶと、俺は前を向いた。


ーーそこには、遠目に相変わらず誇らしげに聳え立つ城門や王宮が目の前に飛び込んで来た。


  俺がキュアリスと別れた街、これから更に戦争へ身を委ねる事になるきっかけの街である。

  俺は、一つ生唾を飲み込んだ。

  そして、徐にマジックアイテムを取り出し、森山葉月にこう報告をした。

「もうすぐ到着する......。」

  それを聞いた森山葉月は、

「それでは、至急城門付近に使いの者を向わせます。その者と共に、一度王宮に来て頂いても宜しいですか? 帰還の儀式をやりたいと思います。儀式が終わりましたら、旅の疲れもあると思うので、一度休憩を取って頂きましょう。」

と、到着後のスケジュールを説明した。

  それを聞いた俺は、

「了解した。」

と、短めの言葉で締めくくる。


ーーそろそろ到着する......。


  森山葉月はこれからどの様な手を取ってくるのだろうか......。

  俺はそんな彼女の動向が気になって仕方が無くなるのであった。


ーーーーーー

  城門から数百メートル離れた場所まで近づいた俺達は、遠目に馬に腰掛けた二人の女性の存在を確認した。


ーー俺はその女性を見て、彼女が王宮の使いである事がすぐに分かった。


  何故ならばその一人は、前に俺が王宮へ森山葉月と三人の最高戦力に会うために訪れた際、送迎を行ってくれた、『アメール』であったからだ。

「お待ちしておりました、隊長様。この様な場所でお待ちした事、大変申し訳ありません。街の方が少々騒めいておりますので......。」

  彼女は無表情でそう言うと、その後に隣にいるもう一人のメイド姿の黒髪ツインテールの女性が話し出す。

「今回の初陣、お疲れ様でした。私、ラギーと申します。では、『特殊異能部隊』並びに、『聖騎士』キュアリス様は、アメールについて行ってください。矢立さん、グリンデルさん、ミルヴィールさんの三名は私について来てください......。」

  彼女がそう言うと、三名は覚悟を決めた表情を浮かべた後で、各々が頷いた。

  俺はそれに対して、ラギーに問いかける。

「ちょっと待ってくれ。三人はどうなってしまうんだ......? 」

  それに対して、ラギーはフフッと微笑みながらこう答えた。

「それに関しては、後ほど軍帥殿から聞いて頂いても宜しいですか? 」


ーー俺はそれを聞くと、余計に不安になる。


  そして、反論しようと息を吸い込んだ時、グリンデルはこう言った。

「我々の事は気にするでない!! こっちは決心もついておるわ!! それよりも、今回の戦果、大いに褒められて来ると良い!! 」


ーー彼がそう言うと、俺は何も出来なくなった。


「だが、もしお前らに何かあったら、必ず助けに行くからな!! 」

  俺がそう叫ぶと、グリンデルはにこやかな表情で、

「そう言って貰えるだけでも有難い......。」

と、呟いた後で、ラギーの後ろを付いて行くのであった。

  その後ろ姿を見つめる俺に対して、アメールは言う。

「それでは、王宮に向かいましょう......。」

  それを皮切りに俺は彼女の後ろを付いて行く。


ーーそして、中央城門の前に辿り着き、中へと足を踏み出すと、目の前の光景に俺は驚いた。


  何故ならば、出兵した時と同じ様に、割れんばかりの歓声を出しながら、中央の道を二分して沢山の民衆が俺達を迎え入れてくれていたからである。


  割れんばかりの歓声の中で、俺はアメールに問いかける。

「これは一体......。」

  するとアメールは困った様な表情を浮かべながら、

「実は、新聞社が勝手に到着までのカウントダウンを始めていたのですよ。『見事、初陣で勝利を収めた英雄の帰還まで、後、○日!! 』などと、大それた見出しを付けてしまっていて......。」


と、詳しい説明をしてくれた。

「それでか......。」

  俺は湧き上がる民衆を見ながら、妙な納得をする。

「まあ、それは良しとして、とりあえず王宮に向かいましょう。」

  アメールのその発言を聞くと、俺達は再び馬を走らせる。


ーー湧き上がる歓声を横切り、王女の待つ王宮まで......。

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コメント

  • ペンギン

    「期間」は「帰還」だと思います!

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