天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第95話 初陣の終幕。


ーーーーーー

  出発前の夜更け、俺が森山葉月との話を終えて部屋へ戻ると、疲れていたのであろう、キュアリスと桜は同じベットの上で横並びになり眠っていた。


ーー俺は二人の安らかな表情に安堵の気持ちを抱く。


  それと同時にこれから始まるであろう現実を思い出す。


ーーこれから起きるであろう大規模な戦争に......。


  だが、もし俺が『遊撃士』になり、国家の最高戦力として役割を全うする上で不安を感じる事はある。


ーー本当に俺はそれに値する活躍を出来るのであろうか......。


  そんな風に後ろ向きな気持ちになった時、俺の中に良いアイデアが浮かんだ。

「これならば......。」

  俺はその得策に閃くと、もう一度キュアリスと桜の事を見た後で、向かいにある布団の中に入るのであった。


ーー俺がきっと......。


ーーーーーー

  鳥のさえずりが聞こえる朝方、俺は何故か息苦しいと感じた時に目を覚ました。


ーー昨晩は夢を見なかった。


  俺は差はあれど、余り宜しくない夢を必ず見てしまう。

  それは、学生時代の回顧から、この世界に来てからの悪夢など、兎角、マイナスな夢ばかりだ。

  そんな珍しい事象を不思議に思いつつ、重いまぶたを無理矢理持ち上げた。


ーーすると、俺の寝ていた狭いベットの両隣にはキュアリスと桜が眠っていたのだ。


  俺は今にも顔が当たってしまいそうな程近くで寝息を立てるキュアリスを見た途端、顔を真っ赤にして飛び起きた。

「うおっ!! 」

  俺はそう奇声を発すると、急いでベットから離れた。


ーー何でキュアリスが俺のベットに......?


  まだ目を覚まさない二人を横目に、俺はソファの上で深刻な表情を浮かべて考えた。


ーーいや、本当に何があったんだ......?


  俺が体をバタつかせながら恥ずかしさに悶絶していると、そんな騒音にキュアリスが目を覚ませた。

  彼女は虚ろな表情であくびをした後に、半目でニコッと笑いながら、

「あ、もう起きてたんだね......。おはよう......。」

と、何も気にする事なく挨拶をして来た。

  俺はそんなキュアリスに違和感を感じて、問いかけた。

「いやいや、何故キュアリスと桜が俺のベットで寝ていたんだ......? 」

  俺がそう質問すると、まだ眠そうにしているキュアリスはその説明始めた。

「いや、昨日の夜に桜がトイレに行くって言うから連れて行った帰りに提案されたの。『次いつ会えるか分からないから、三人で一緒に寝たい』って。それで、私はやめるように言ったんだけど......。」

  彼女は昨日の事を思い出しながら、そう呟く。

だが、突然、

「ハッ!!!! 」

と、何かに気がついた表情を浮かべた。

  その後でみるみる顔を赤くして行く。

「ご、ごめんね!! べ、別に雄二の眠りを妨げようとした訳ではなくて!! 」

  そんな風にあからさまに取り繕い出して、恥ずかしさを前面に押し出していた。


ーーいや、気がつくの遅すぎだろ......。


  俺はそんな事を思いつつも照れている彼女から目を逸らしながら小さく頷いた。


ーーそんな中、ふと、キュアリスの背後に視線を移すと、彼女の叫び声で目を覚ましたであろう桜がニヤッと笑いながら俺の方へピースサインをしていた。


ーーいやいや、お前......。


  俺はそんな的外れな計らいしてドヤ顔を決め込む桜を、苦笑いをしながら見ていた。

  すると、そんな俺と桜のアイコンタクトに気がついてしまったキュアリスは、慌てて立ち上がり、

「き、今日はもう出発の時だから、準備を始めないと!! い、一回部屋に戻るね!! 」

と言って、そそくさとドアを開けて出て行くのだった。


ーーそして、すっかりと彼女がいなくなった時、桜は俺に最高の笑顔を見せた後で、

「また一つ、いい思い出が出来たでしょ? 」

と、俺に呟いた。

  俺はその言葉を聞くと、頬を少し赤くしながら窓の方を見て、

「お、おう......。」

と、答えた。


ーー窓の先には、木の中にいる雛につがいの親鳥が餌を与えている姿が見えた。


ーーーーーー

  すっかりと旅の準備を終え、キュアリス、矢立駿とグリンデルを含めた部隊の面々は支部の玄関口にて、出発に向け馬に乗っているところだった。

  そんな時、ミルヴィールが俺達の前に現れて皆に向け頭を下げた後で、こう言った。

「今回の裏切り、並びにスパイとして国家への背信行為、大変申し訳ありませんでした!! 」

  彼女は震え声でそう叫ぶ。

  その後で、顔を上げて続けた。

「私は如何なる罰も受けます......。なので、この命を持ってして......。」


ーーだが、俺はそんな風に自分を責めるミルヴィールの発言を遮る様にしてこう彼女に伝えた。


「終わった事をくよくよするな。お前だって今まで孤独と戦って来たんだろ? だから、国家がどんな罰を与えようとしても、俺はお前を守り続けるよ。」

  それを聞いたミルヴィールはそのままその場に崩れて行った。

そして、呟く。

「でも、私は......。」

  そう彼女が泣きながら反論すると、俺の背後にいる部隊の皆は口々に、

「隊長がそう言うんじゃ、仕方がないよ!! 」

「私だって、仲間の事を見捨てられないよ!! 」

などと、肯定的な言葉を掛けた。

  それを聞いたミルヴィールは、嗚咽を漏らす。


ーーすると、リュイはゆっくりと彼女の元へ近づいて行き微笑みながら、

「ほら、みんなあなたの事を信頼しているんだよ......。」

と、優しい言葉を掛けた。

  ミルヴィールはその言葉の後で、リュイに抱きついた。

「ごめんなさい!!!! 」

と、何度も謝りながら......。


  そんな様子をずっと見ていたポルは、俺に向け微笑みながらこう言った。

「本当に良い仲間達ですね......。私まで泣きそうになってしまいましたよ。」

  彼女がそう呟くと、俺はそれに微笑みながら頷いた。
 
  そして、ポルはかしこまった後で続ける。

「それでは、今回の初陣、大変お疲れ様でした。皆様が無事に帰ってこられた事、心より安堵しております。それに、こうしてまた、ミルトやキュアリスに会えたことにも......。」

  俺はそんな彼女の話を聞くと、微笑みながら頭を下げた。

「こちらこそ、今回は色々とお世話になりました。心して首都に戻ります。」

  俺がそう言うと、彼女は最高の笑顔で頷いていた。


ーーそして、リュイがまだ泣いているミルヴィールを自分の馬の後ろに乗せるのを皮切りに、俺達は首都リバイルへと向かって走り出した。


  あちらに到着したら、やる事が沢山ある。


ーー俺はその覚悟を決めつつ、『ヘベレスシティ』を後にするのだった。

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コメント

  • ペンギン

    面白いです!なかなか言葉には表しずらいですが...とにかく!面白いです!

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