天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第94話 目を覚ました二人。


ーーーーーー

  すっかり食事を終えた俺達は、片付けをした後で、宿舎までの廊下を歩いていた。

  桜は満腹感から眠くなったらしく、幸せそうな表情を浮かべて寝ていた。

  俺はそんな彼女をおんぶしている。

  そして、桜の重みを感じながら、キュアリスに向け、こう呟いた。

「俺にとって、ここに来てからの時間は、全て新鮮な物だよ......。桜や部隊のみんな、それに、キュアリスとも出会えたんだからな。」

  俺がそう言うと、キュアリスは不思議そうな顔をした。

「いきなりどうしたの? なんか、二度と会えないみたいな口ぶりになっているけど......。」


ーー俺はその話を聞くと、内密と言う話ではあったが、彼女にだけは俺が『遊撃士』になる事を伝えなければと考えた。


「いや、リバイルに戻ったら、また暫く会えなくなる可能性はあるんだ。何故ならば......。」

  そう告げると、キュアリスは一瞬切ない表情を浮かべた。

  だが、その後で笑顔になって、

「そうなんだ......。でも、私から『聖騎士』の座を奪う為には仕方のない事だよね。なんか、雄二だったらなんでもやってくれそうな気がするよ......。期待してるね。」

と、優しい口調でそう言った。

  俺はそれを聞くと、少し照れ臭くなったが、強気な口調で、

「おう、任せておけよ! 俺が世界を救ってやるんだ!! 」

と、意気込んだ。


ーー俺はキュアリスに『聖騎士』を目指す事を宣言した時から、強い気持ちを持っている。


  それはまるで、暗闇で手探りだった道が、明るく照らされて行くように......。

  そして、そんな話をしていると、俺の部屋の前に到着した。


ーーするとそこには、深刻な顔つきで立っているリュイの姿があった。


「戻って来られましたね、隊長殿......。」

  俺は彼女の真剣な口調から、何かが起きた事を察した。

「何かあったのか......? 」

  俺が彼女にそう問いかけると、リュイは相変わらず真剣な表情でこう答えた。

「ミルヴィール、並びに矢立駿が意識を取り戻しました。至急、医務室の方へ顔を出して欲しいのですが......。」

  彼女がそう言うと、俺は背中におぶっている桜を起こさぬ様にキュアリスへと託した。

「少しの間、見ていてあげてくれないか......? 」

  俺がそうお願いをすると、キュアリスは桜を抱え、ニコッと笑いながら、

「隊長さんは大変なんだね。お勤めご苦労様です。」

と、言った後で、俺の部屋へと入って行った。
  
  俺はそれを見ると、リュイと共に医務室へと向かう。


ーー早く無事を確認したかったから......。


ーーーーーー
 
  医務室に到着すると、まずは矢立駿が俺の目に入った。

  彼は怪我がすっかり治っているが、相変わらず弱々しい表情を浮かべたままこちらを見ている。

  俺はそんな彼にゆっくりと近寄って行った。

  すると彼は蚊の鳴くような声で、俺に向け、こう呟いた。

「分かっているよ......。俺は二度もお前に負けたんだ。殺すなり何でもしてくれ......。」

  俺はそれを聞くと、笑みを浮かべた。

「そんな事、する訳ないじゃないか......。」

  矢立は俺がそう言うと、狐につままれた様な顔をしていた。

「何故だ......? 俺は二回もお前に危害を加えたんだぞ? にも関わらず、何故......。」

  俺はそんな彼に対して、肩を叩きながらこう告げた。

「俺は、どうしてもお前の事を嫌いになれなかったからだよ!! 」

  それを聞いた彼は、フフッと微笑を浮かべてこう言った。

「やっぱりお前は、何処までも甘いな......。」

  俺はそれに、

「俺は厄介な性格だからな!! 」

と、微笑みながら答えた。


ーー俺は、絶対に助ける。


  国家がどんな判断をしたとしても、矢立もグリンデルも絶対に......。

  俺はそう考えると、彼らを庇い続ける事を強く誓ったのだった。

  一方、その奥はカーテンで仕切られていて、ミルヴィールのすすり泣く声が聞こえる。


ーーどうやら、今まで自分の起こしてしまった事を悔やんでいるのだろう......。


  俺はそう考えると、隣に立っていたリュイの肩を叩いた。

「ミルヴィールに関しては、お前に一任してもいいか......? 明日にはこの街を出発する。それまでは慰めてやってくれ......。」

  リュイは俺がそう耳元で囁くと、彼女は嬉しそうな表情をした後で、

「わかりました。彼女の事は任せてください!! 」

と、笑顔で言った後、ミルヴィールの寝ているベットの元へと進んで行った。


ーーこれでやっと、初陣は終わる。


  俺はそう考えると、ホッと胸を撫で下ろした後で、部屋を後にするのだった。

  そして、廊下を歩いている時に、マジックアイテムを使って森山葉月へと連絡を取った。


「無事に保護した矢立駿に関しても目を覚ましたよ。奴から詳しい話は追い追い聞こうと思っている......。」

  俺がそう森山葉月に伝えると、彼女は重々しい声でこう答えた。

「それは良かったです......。それでは、あなた方が首都へ向かう際、グリンデルと矢立駿の事を連れて来てください。彼らには我々からもお伝えしなければならない事がありますので......。」


ーー俺はそれを聞くと、国家が何らかの判決を下すと言う事を理解した。


「了解した。だが、俺は二人の事も見捨てられない。だから、余り悪い判断をする事はオススメしないぞ。」

  俺がそう語尾を強めてそう訴えると、彼女は如何にも余裕な口調でこう答えた。

「戻った時に詳しくお話しします。後、二人ではなく、三人ですよね......? 」


ーー何故、ミルヴィールの件を知っているのであろうか......?


  俺は彼女の口から出た三人という言葉を聞いた時、そう思った。

  彼女にミルヴィールのスパイの話はしていない筈だった。

  にも関わらず、彼女はそれを知っていた。


ーーそこに疑問を感じると、俺は黙り込んでしまった。


「そんなに深刻になる必要はないでしょう。それよりも、『遊撃士』の件に関しては、前向きに考えて貰えると、有難いです。」


ーー俺は彼女の話の後で、今、『遊撃士』になるのを決めた事を話す気になれず、うつむき気味な口調でこう言った。


「明日から帰る中で判断するよ......。とりあえず、近くなったらまた連絡する。」

  俺がそう言ったのを最後に、連絡は終了した。


ーーその途端から気になり出した事があった。


  グリンデル、矢立駿、ミルヴィールの三人にどんな罰が待っているのかを......。

  そして、どうすれば彼らを最高の形で助ける事が出来るのかを、考え込むのであった......。


ーー俺にとって、三人とも失いたくない大切な存在なのだから......。

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