天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第93話 前へと進む覚悟。


ーーーーーー

「やっぱりキュアリスの作るご飯は、最高に美味しいよ!! 」

  桜はカレーライスを口いっぱいに頬張りながら、キュアリスをそう褒め称えた。

  それに対してキュアリスは、喜びを前面に出しながら、

「そ、そう?! ま、まあ、褒めて貰えるのは、やっぱり嬉しいもんだね!! まだ沢山あるから、幾らでも食べて良いんだよ!! 」

と、したり顔を決め込んでそう答えた。

  俺もまた、シチューを口に運びながら、その様子を微笑ましい目で見ていた。


ーーそれにしても、この味は、俺がこの世界に来て初めて口にした食べ物だ......。


ーー改めて食べると、こんなに美味いとは思わなかったよ......。


  そんな風に感慨深くなる。

  少しずつ思い出す過去の事に、今がある喜びが更に増幅していくのがよく分かったのだった。

「それにしても、雄二は見るたびにどんどんと良い方向に変わって行くね......。」

  キュアリスは食べる事を一旦やめ、両ひじをテーブルの上に置きながら俺の事を見て、にこやかな表情でそう言った。

  俺はそんなキュアリスの発言に顔を赤らめた。

「それは、お前がいたからだよ......。」

  そんな風に俺が小さな声で呟くと、キュアリスは聞こえていなかったようで、

「えっ......? よく聞こえなかったから、もう一回言ってもらっても良いかな? なんか、嬉しい事言われた様な気がしたから......。」

と、もう一度聞いてくるのであった。

  俺はそれに対して、目を逸らしながら、

「何でもないよ......。そんな事よりずっと聞こうと思っていたのだが、なんであの時、俺達を残して突然いなくなってしまったんだよ......。」

と、核心を突く質問をした。


ーーそう、俺はこの事を元々聞こうと思っていたのだ。


  キュアリスと再会してからというもの、その、最も聞きたかった話を聞けぬまま、この時まで時間が経ってしまっていたのだから......。

  正直なところ、ここまではっきりと質問するのは些か気が引ける部分があったのだが、いつまでもズルズルと引っ張り続けるのも好ましくないと思ったので......。

  俺がそんな事を考えながら、彼女の方に目をやると、キュアリスは突然俯き出した。

  そして、少しの間が出来た後で、こう呟く。

「一方的に消えてしまった事は、本当にごめんなさい......。でも、私は『聖騎士』として生きて行く事を決めたの。だって、雄二や桜の事を救いたかったから......。今みたいな笑顔のままでいて欲しい。」

  彼女はそう言い終わった後で、俺と桜の方を真っ直ぐな眼差しで見た。


ーーその目力から、俺は、彼女の覚悟が本気である事を痛感させられた。


  だからこそ、俺は彼女にこう言い放った。

「そう言ってくれるのは、本当に嬉しいよ。だけどな、そう思っているのは、お前だけじゃないんだぞ......? 」


ーーそれを聞いた彼女は、テーブルの上に置いていた手を、膝元に下げた後で、一瞬泣きそうな表情を浮かべた。


「だって......。私の大切な人が傷つく所が見たくなかったんだもん......。正直、雄二と桜には『国王軍』をやめて欲しい。私の事は大丈夫だから、ね。」

  キュアリスは最後に微笑んでそう言った。


ーー俺は、昨日聞けなかった答えが、今この瞬間出てしまった事に、悲しみを覚えた。


  しかし、不謹慎ながら、彼女が俺と桜の事をそんなにも思ってくれていたのが、心より嬉しくなってしまった。

  そして俺は彼女に向け、こう伝えるのだった。

「それも同じだよ......。だからこそ、俺も桜も『国王軍』は辞めない。いつか、お前から『聖騎士』の座を奪って、戦争なんかさっさと終わらせて、戦う事を辞めさせてやるよ......。」

  俺がそう宣言すると、隣に座っている桜は、一度食べる事をやめた後で、俺の横に寄ってきた。

「キュアリス、桜は笑っているキュアリスが好きなの。キュアリスが戦うなんて、絶対に似合わないもん......。だからこそ、絶対に助けて見せるんだから!! 」

  桜はキュアリスを真剣な目で見ながら、そう叫んだ。


ーーそれを聞いたキュアリスは、切ない表情を見せた。

  
その後で、迷いのない笑顔になった。

「なら、その言葉を信じるよ。でも、今はまだ私はやめられない。だからいつか、雄二が『聖騎士』になって、私を、いや、世界を助けて。そうしたら、また三人で平和に暮らそうね......。」


ーーキュアリスのその言葉を聞くと、俺は微笑んだ。


  やっぱり、結局の所は、森山葉月の言っていた事をしなければならないのだ。

  キュアリスから『聖騎士』の座を奪う。

  それを彼女の口から聞けた。

  俺は間違っていなかった。


ーー不安で仕方が無かった。


  実は本当のところ、キュアリスは俺と過ごしている事に嫌気がさして去ってしまったのかもしれないと、心の何処かで思っていた。

  疑っていた部分があったのも事実なのだ。

  幾ら王女や軍師に頼まれたのだとしても、本人にとってはありがた迷惑だったのかもしれないと......。


ーーでも、そうでは無かったのだ。


  俺は、そんな風に考えると、これから曇りなく前に進める事に喜びを覚えた。

「じゃあ、この話は終わりだ。飯が冷める前に、全部食べちゃおうぜ!! 」

  俺はそう言って微笑むと、スプーンを再び持った後で、まだ温かいシチューを食べ始めた。

  そんな俺の様子を見たキュアリスは、同じ様にスプーンを手に取り、最高の笑顔で俺にこう呟いた。

「雄二、本当にありがとね。」


ーー俺はそれを聞くと、少しだけ泣きそうになった。


  だが、グッと我慢した後で、シチューを食べるペースを上げるのだった。


ーーそんな事言われたら......。


  そして俺はこの時、『遊撃士』なる事を決めた。

  幸せな未来の為に......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く