天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第92話 打診への葛藤。


ーーーーーー

  ポルは相変わらず弱々しい口調で、まず状況説明を始めた。

「昨晩の会議の結果を、軍帥殿へと報告したのです。すると、その後すぐに軍の幹部の方で、緊急会議が開かれた様で......。そして今朝、彼女から結果の話をされたのですが......。」

  俺はそんな彼女の説明を聞いた後で、体に力を込める。


ーー俺やキュアリスは今後、どうなって行くのだろうか......。


  すると、そんな俺の様子をチラッと見た後で、その核心を突いた。

「その中で関係する事なのですが、佐山雄二さん、あなたは今回の戦いの功績を加味した結果、『遊撃士』として、国家の最高戦力の一人に打診されたです。」


ーー俺はそれを聞いた時、状況が全く把握出来なかった。


ーー『遊撃士』とは......?


  そんな風に俺が狐につままれた様な顔をしていると、ポルは説明を続ける。

「前に、軍帥殿のおられる王宮の最上階へ行った事があると思います。そこに、三人の最高戦力がいたと思うのですが......。」

  彼女によると、前に森山葉月の部屋にいた、バラドレアス、ニルンド、センドルの三人には、それぞれの役職があるらしい。

  バラドレアスは、『打撃士』という名で、陸地における最高戦力であり、ニルンドは、『空撃士』として、空中戦における、センドルは、『海撃士』であり、海戦に特化した戦闘をする。

  その様に、三人は軍を司っているのだが、今回の俺が抜擢されているのは、『遊撃士』。

  そこで俺は、その役職がどの様な行動を取るのかを、ポルに問いかけるのであった。

「では、俺が打診されている『遊撃士』とは......? 」

  するとポルは、フッとため息をついた後で、こう答えた。

「『遊撃士』は、陸、海、空、全てにおいて有事の際には派遣されます。要は、トータル的に見た中で、一番バランスを重視される役職なのです。暫く『遊撃士』に値する方が現れなかったのですが......。でも、このお話を受ければ、あなたが『聖騎士』になれる可能性はグッと上がる事になるのです。それに、メリットとしては、あなた自身がある程度自由に動けるという所にあります。」


ーー俺はそんな彼女の発言から、俺がキュアリスを救う為に『聖騎士』を目指している事を知っていると判断した。


ーーそれに、『遊撃士』の依頼を受ければ......。


  俺はそう考えると、彼女にこう言った。

「それは、俺にとっても都合が良いかもしれないな。」

  ポルは俺がそう答えると、少しだけ明るい表情を覗かせた。

「それは良かったです。軍帥殿には、『出来ればその場で口説き落としてくれ』と言われていたので......。ですが、それに際して、一つだけ受け入れて貰わなければならないがあります。」

  俺はそれを聞くと、真剣な表情のままに、彼女に問いかけた。

「受け入れなければいけない事とは......? 」

  彼女はその問いに、バツが悪そうな顔をして静かに答えた。

「あなたには、『特殊異能部隊』からは脱退して頂きます。後、桜さんにはあなたの側近として動いて頂こうと......。ちなみに残った部隊の方々には、キュアリスの部下として共に動いて貰おうと......。」


ーー俺はその説明に対して、少しだけ気持ちが揺らいでしまった。


  今まで短い間だが、苦楽を共にした部隊のみんな。

  そんな彼女達と別れなければならないという事だ。

  確かにキュアリスの部下として働いて貰えるのは、俺としても嬉しい所ではあるが......。

  それに、俺が『遊撃士』になるという事は、そのまま一緒に行動をする桜に関しても、更に過酷な戦地に赴かなければならない。

  森山葉月は俺と桜の二人なら『聖騎士』の座を奪えると前に言っていた。


ーー裏を返せばそれだけ実績を上げねばならないという事なのだから......。


  俺はそう考えると、彼女の目を見る事なく、こう答えた。

「王宮に到着するまでには、結論を出すよ......。」

  俺がそう答えると、ポルは苦笑いした後で、

「やはりこの場で結論は出ませんよね......。ま、まあ、良い返事を貰える事を期待しています。後、この事は最重要秘密事項になるので、是非ともご内密にお願いします。」

と、釘を刺してきた。

  それに対して、

「分かっているよ......。」

と、俯きながら答えた後で、部屋を後にするのだった。


ーー俺は今、葛藤している。


ーーキュアリスを助ける為に自分を犠牲にしなければならない事は重々承知しているのだが、どうしても踏み切れない自分に対して......。


ーーーーーー

  西日が施設を照らす夕暮れ時に、俺が厨房に戻ると、良い匂いが室内に漂っていた。

「あ、雄二、おかえり。丁度今、料理が出来た所だから、奥にある食堂に運んで欲しいな。」

  キュアリスは、先程まで纏っていた赤いエプロンを外しながら、出来上がった料理を見つつ、俺にそう促した。


ーーそこにある料理は、桜の大好きなハンバーグにカレーライス、それに、俺が好きだったホワイトシチューである。


  俺はそんな彼女の料理を見ていると、腹の音が鳴った。

  それを慌てて隠すと、桜はニヤニヤとして俺に近寄ってきた。

「今、お腹鳴ってたね......。桜もちゃんと手伝ったんだから、沢山食べてね!! 」

  桜のそんな発言に対して、俺は顔を赤らめた後で、料理を食堂へと運ぶのだった。


ーー百人ほどが入れる食堂の端に料理を並べて......。


  これから久しぶりにキュアリスの手料理を食べられる。

  『遊撃士』への打診の件に関しては、今は置いておこう。


  俺はそう考えると、すっかりと準備が整い、みんなが席についたところで、手を合わせて大きな声で、こう言った。

「いただきます!!!! 」
 

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