天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第91話 三人で買い出し。


ーーーーーー

  俺はいつも、心の何処かで探していた景色があった。

  それは、表裏なき暖かい世界。

  崩壊という言葉が消え去った世界だ。

  しかしそれは、只の綺麗事である事もよく分かっていた。

  だからこそ、望んでしまう。


ーー平凡だけど、輝いている世界を......。


  俺はそんな風に考えながら街を歩いている。


ーー開戦の緊張感から街は少しだけぎこちない所はあるが、前に来た時と変わらずに平穏を保ち続けている。


  生憎、この世界には写真技術が無かった事もあり、この街の者は俺やキュアリス、桜の顔は知らない様だった。

  戦争の報告に関しては、王家から直接話がある為、まだこの街の人々は俺達『特殊異能部隊』が戦い、勝利を収めた事もまだ伝わっていない様だった。

  俺はそれを確認すると、安心して周りの目を気にする事なく、食材を買いに行く為、街を歩く足をゆっくりと進めるのであった。

「キュアリスの手料理、久しぶりだから楽しみだなぁ......。今日は、何を作ってくれるの?! 」

  桜は既に口元に涎を垂らしながら、ワクワクしながら買い物カバンを肩からかけていた。


ーー生憎、ポルに支部内の厨房を借りる事が出来たので、そこで調理するという手筈になっていた。


  正直なところ、俺も彼女が何を作ってくれるのかを非常に楽しみにしていた。

  するとキュアリスは、鼻を膨らませながら、こう答えた。

「雄二や桜が好きな物、何でも作ってあげるよ!! 最近は料理を作る時間も無かったからね......。今日は腕によりをかけて作っちゃうよ!! 」

  彼女はそう張り切った後で、街を歩くスピードを上げた。


ーーそれから彼女の知っている八百屋や肉屋などを回った。


  その場所は昔、俺とキュアリスが初めてこの街に来た時の場所と同じだった。

  俺はそんな場所を訪れる度に、前に来た時の気持ちとの投影をした。


ーーあの時は、卑屈な気持ちでいて、全てに疑心暗鬼になっていた。


  キュアリスすらも信じられずに、自らを塞ぎ込んでいたのである。


  だからこそ、今目の前で桜と楽しそうに肉を選ぶ彼女の表情を見ていると、グッとくるものがあるのだ。


ーー俺が転移したばかりの頃と比べると......。


  今あるこの環境は、前とは全て変わってしまった。

  たったの半年前程にも関わらず、遥か昔に感じてしまう......。

  だが今、こうして再びキュアリスとこの街を歩ける事には、何か感慨深さがある。


ーー俺にとっての思い出の地。


  今の俺がここまで素直な気持ちになれたのは、もう無くなってしまったあのペンダントを渡した瞬間からである。

  そんな風に考えながら、すっかりと買い物を終えて沢山の食材を持っているキュアリスを見ていた。

  そして俺は、彼女の持っている大荷物を静かに手に取る。

すると彼女は微笑みながら、

「ありがとう、雄二。 」

と、お礼を述べるのであった。

  そんな彼女の笑顔を見た俺は、成長した自分の回顧を終えて、静かに支部の宿舎へと踏み出すのであった。


ーーーーーー

  宿舎の厨房へと辿り着いた俺達は、今揃えたばかりの食材を並べて、調理の準備に取り掛かっていた。

  桜はキュアリスの手伝いをしたいと聞かなかったので、二人で野菜を切り始めていた。

「ちゃんと猫の手にして切らないと、怪我しちゃうよ。」

  キュアリスは、桜に対して料理を教えてあげていた。

  俺はというと、

「ゆっくり休んでいて!! 」

と、キュアリスに言われてしまったので、そんな二人の様子を椅子に座りながら微笑んで見ていた。


ーー何か、こう言うのいいな......。


  そんな気持ちにさせられながら......。

  出来るならば、ずっとこんな小さな幸せを感じつつ、生きていたい。

  俺はそんな風に思うと、少しだけ切ない気持ちにさせられるのであった......。


ーーだが、そんな時、料理に集中している二人を横目に、厨房の入り口からポルが気付かれぬよ、俺に向け手招きをしていた。


  彼女の行動を不審に思いながらも、俺は二人にバレない様に外へ出た。


ーー何があったんだ......?


  すると、彼女は廊下へ出て来た俺に、小声でこう言った。

「キュアリスについての事で、少し話があります......。これは、軍帥殿からの連絡なので、出来れば内密にして欲しいのですが......。」

  ポルはそう言った後で、俺を支部長室の方へと案内した。


ーー森山葉月は『首都リバイル』に戻った時、色々な事を話すと言っていた。


ーーだが、それを前倒ししてまで報告があると言う事は、余程、至急に伝えねばならない事なのであろう......。


  そして、俺が腰を掛けた時、彼女は真剣な表情で息を吸い込んでからこう切り出した。

「今からお伝えする事は、あなたとキュアリスのこれからの去就についてです......。これは、これからの戦闘において非常に大事な事案なのですが......。」


ーー俺はそんな彼女の真面目な顔つきから、先程までの暖かい雰囲気から一転して、現実に目を向けた。


「では、話してくれ。俺達のこれからについてを......。」

  そう言った俺は、キュアリスの方をゆっくり眺めると、再び不安を隠せなくなるのであった。

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コメント

  • ノベルバユーザー228500

    これいつかちゃんと最強になるの?

    0
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