天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第89話 調査結果。


ーーーーーー

「メルパルク山脈内部の調査の結果、分かった点は二つあります。」

  会議室にてそう説明を始めたのは、メルパルク山脈内部の調査へと行っていたキリスという青年を始めとする部隊の数名だ。

  俺はそんな彼の話を聞きながら、先に控える敵国の動向の鍵が無いかを探っていた。

  すると、キリスは話を続ける。

「まず第一に、今まで起きていた一連の誘拐事件の犯人に関しては、やはり『ヘリスタディ帝国』の仕業という事で間違いないでしょう。それを証拠に、彼らの拠点となっていたと思われる洞窟内部には、そのリストが残されていました。これがその資料です。」

  彼はそう言うと、一冊の分厚い本を取り出して、俺に渡してきた。

  俺はそれを手に取ると、早速本を開いた。


ーーそこには、おびただしい数の子供から大人までの名前が記してあり、更には、それ個人個人の『異能』の能力や性格、今後の役職などが細かく明記されていた。


  俺はそれを見ると、憤りを覚えた。

  ここにある人々は、例外無く拉致、誘拐されて来たのだから......。


  だが、そのリストには、バツがついているものと、そうでないものがある。

「このバツがついているものは、一体何を意味しているんだ? 」

  俺がそう問いかけると、キリスは深刻な表情を浮かべながらこう答えた。

「それに関してですが......。誘拐して来た後で使えない者は、『異能』や『魔法』の実験材料にされてしまっていた様です......。後ろの方のページには、実験に使われて命を落としてしまった方々の内容が克明に記されておりましたので......。」

  俺はそれを聞くと、その欄に目を通した。
 

ーー俺はそれを見て、驚愕した。


  どうやら彼らが使えないと判断した人達は、残虐の限りを尽くされて、殺されていたのだ。

  『異能』の破壊力を試す為に吊るし上げられて的にされていたり、精神汚染の『魔法』を使って人格破綻させられてしまっていたり......。

  それは見るのも悍ましい程に非人道的な物だった。


ーー正に、人体実験そのものである。


  使える者はとことん兵器として使い潰す。

  使えない者は人として見ずに実験材料とする。

  俺はそんな事を平気でやり続けて来た『ヘリスタディ帝国』に対して、怒りを覚えた。

  すると、キリスは再び続けた。
  
「後、その本の最後のページを見てください。」

  俺はそんな彼の一言に促され、最後のページを開いた。


ーーそこに記されていた事はこうだった。


ーー『最重要人物 佐山雄二 観音寺桜』ーー


  それはまさしく、俺と桜の事だった。
  
  先程、悠馬が俺を『ヘリスタディ帝国』に引き入れる事が、最優先だと言っていた。


ーーだが、何故俺と桜なのだろうか......。


  そんな風に俺が疑問を抱いていると、キリスはおもむろに次の事柄について話し始める。

「これは最も重要な事なのですが、どうやら彼らは、『ベリスタ王国』の侵略が狙いではない様なのですよ......。それは、洞窟内に貼ってあった我が国の地図の印が物語っていました。」


ーーそう言われると、俺はその地図に目をやった。


  そこに印がされている場所は、『首都リバイル』から南下して行くとある地方都市、『メディウス』であった。

  俺はそこで首を傾げる。

「何でこんな地方都市なんだ......? 」

  すると、隣で話を聞いていたキュアリスがそんな疑問に答えた。

「ここにある聖堂は、古い神話では、異世界転移に関係があるとされている場所なの......。」


ーー俺はそれを聞くと、全てを理解した。


ーー『ヘリスタディ帝国』の人間は、王を含めて、主要となる人物の殆どが『異世界人』で構成されている。


  だからこそ、その『メディウス』において、転移の理由や根源などを求めているのかもしれない。

  もしかしたら、悠馬の言っていた『あの人』と言うのはここに関係があるのかも......。

  俺はそう考えると、一度この場所へ行く必要があると考えた。


ーー先の侵略において、一番彼らが求めている場所だから。


  ここに何があるのかを把握した後で、守りを固める必要があるのだ。

「なるほどな......。ならば、一度、『首都リバイル』に行った後で、彼らの狙いである『メディウス』に行くことにしよう......。」

  俺がそう言うと、皆は元気よく返事をした。


ーーそれを最後に会議は終了するのだった......。


  部屋へと戻る廊下の中で、桜は俺の腕に絡みつきながら、質問をして来た。

「雄二、最近元の世界の話になると、真剣になっちゃうね......。絶対に帰らないでよ......。」


ーーこの話は、この前も桜がしていた。


  きっと、俺が帰りたいとか思っているのかもしれない。

  彼女もまた、『ヘリスタディ帝国』から最優先で狙われている存在だ。

  だからこそ、余計に心配になったのかもしれない。


ーー俺の事も、桜自身の事も......。


  俺はそんな桜に対して、笑顔でこう言った。

「帰るわけないだろ!! 明日は久しぶりに三人での外食だ!!心配無いから、今日は早く寝て明日に備えるんだぞ!! 」

  それを聞いた桜は、俺の手をギュッと握りながら、

「そ、そうだね!! 明日は動けないくらい食べてやるんだ!! 」

と、笑顔で答えた。


ーーそんな様子を見て、キュアリスは微笑んでいる。


  明日は俺にとっても大事な時だ。

  さっきは感情で話し、中途半端になってしまったが、次こそはしっかりと説得するんだ。

  キッパリと『聖騎士』をやめてもらい、戦争を俺に任せて欲しいと......。


ーー俺が守るんだ。何にも代え難い掛け替えのない彼女の事は、必ず......。

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