天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第84話 慢心への自己嫌悪。


ーーーーーー

  目の前で変わり果てた元親友は、真っ黒なオーラを纏って悠々と椅子に腰掛けている。

  その表情は少し微笑を浮かべていて、禍々しいオーラも相まってより一層不気味さを際立てているのだ。

  前よりも少しだけ大人びた彼からは悪意や妬み、恨み、それに殺意すらも感じる。

「お前は何で、この世界に来たんだ......? 」

  彼はそんな気まぐれな質問を俺に投げかけた。


ーー何故、悠馬は今この状況でそんな問いかけをするのだ......?


  俺はそんな風に彼の質問の意図を探りつつ、

「何も知らない。いつの間にかこの世界にやって来ていたのだから......。」

と、拳を握り締めながら答えた。

  それを聞いた彼は、一瞬無表情になった後で、再び微笑んだ。

「そうか......。いつの間にかね......。本当に自覚が無いんだな。」

  彼はそう言いながら、俺を笑うのだった。


ーー俺は、そんな悠馬の仕草から彼が何らかの事を知っている事を理解した。


「じゃあ、それって言うのは結局のところ何なんだ......? 」

  俺は彼に答えを求めると、悠馬は真剣な表情になった。


ーー怒りとも取れる表情とも取れる顔をして......。


「それは、過去の事を思い出せば、すぐにわかる事だよ。お前はどんな人生を歩んで来たんだ? 」


ーーそんな彼の発言に対して、俺は過去の自分に目を向ける......。


  両親との別れに、誰にも心の開けない孤独な日々......。

  そして何よりも親友との別れ......。

  思い返すだけで吐き気を催す程のトラウマ......。

  だが、その全ては自分の責任であった事が、俺のトラウマをより一層、皮肉な物にさせるのだ。

  あの時ああしておけば、この時こうしておけば......。


ーーもっと自分が上手く立ち回れたなら......。


ーー俺は自分の事ばかりを考えて、被害者面をして、周りが見えていなかった。


  いや、才能を鼻にかけて、自分から周りを遠ざけていたのかもしれない。

  悠馬に今言われている事は、前に矢立に言われた事と、全く同じだ。

  だが、あの時も結局の所は違う所に目を向けて、自分自身と向き合う事を放棄してしまったのだ。

  『この世界を救いたい』などと、戯言を抜かしては過去の自分から目を背ける。


ーー俺はそんな卑怯な男なのだ。


  それは、大河原悠馬と言う男に詰め寄られる事で、紛れもない事実として自分の胸に突き刺さる。


ーー何故なら、俺にとって一番印象に残っている言葉を受けた相手なのだから......。


  俺はそんな事を思い返していると、段々と表情は卑屈な物となって行った。

  そんな俺を見た悠馬は、高笑いをしながら俺にこう告げる。

「良い顔しているよ! 実に哀愁が漂っているな!! そう、その負の感情がお前をこの世界に引きずり出したんだ!! それに周りを見てみろよ!! 」

  俺は彼に言われるがままに、周囲を見渡す。


ーーすると、先程まで風により俺を包み込んでいた白いオーラは、今まで見た事がない程にドス黒く変化をしていた。


  それは、見ているだけで不快感を覚える程に......。

  そんな自分の変化に対して俺は、焦り出した。

「違う!! そんな事あるはずがない!! だって俺は......。」
 
  俺がそう叫び出すと、悠馬は俺に見下す様な視線を向け、こう呟いた。

「お前じゃ、何も救えない。だって、俺達と同じ存在なんだ。だから、善人面なんてやめろ。」


ーー彼のそんな言葉を聞いた時、俺は矢立との戦いの後に見た、嫌な夢を思い出した。


  あの不愉快な夢とよく似ている。


ーー結局の所、俺は馬鹿だったのかもしれない。


  そんな風にさえ思う。


ーー俺は自分本位な男だ。


  その証拠に、真っ黒に染まったオーラ。

  多分、これは俺の心の奥を表しているのかもしれない。

  俺なんかでは、キュアリスも、部隊のみんなも、グリンデルも、矢立も、元親友も、誰も救う事なんか出来ない......。

  そんな事を考えている内に、俺はどんどんと自己嫌悪に陥って行った。


ーーそして、俯いた後で、静かに地面へと降り立ち、跪くのであった。


  助ける、救う、変える......。

  この世の中にはそんな事は只の綺麗事でしかない。


ーー俺はそんな自分の慢心に後悔をしつつ、ただ下を向いた。


ーー周囲に広がり続ける闇のオーラの中で......。
 

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