天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第83話 かつての親友。


ーーーーーー

  辿り着いたその場所で起きている出来事は、彼女をより一層苦しめる。

  何故ならば、そこで起きている事は、分かってはいたものの、戦争そのものなのだから......。

  その時、彼女はデジャブにも似た感覚を覚えた。


ーーあの時の悪夢......。


  間に合わずに亡くなったかつての仲間......。

   そう考えると、彼女は疼きだす背中の痛みを堪えつつ、前に進もうとした。


ーー今は丁度、かつての戦友を倒した所らしい......。


  更には遠くに見える『結界』の中では、桜が必死に仲間を助けようとしていた......。

  彼女はそんな変わらない彼らの姿を見て、ホッと一安心をした。


ーーあの時とは違い、間に合ったのだ......。


  そして、彼女は走り出す。


ーーよく頑張ったね。後は任せて。


  そんなつもりで......。

  しかし......。


  彼女は彼から放たれた言葉を聞くと、呆然とした。


ーーそれは、彼女の心を深く抉る。


  何があっても助けようと思っていた。

  自己犠牲も厭わないと思っていた。

  だが、彼の発した言葉は、その強い決意を完膚無きまでに打ち砕いた。


ーー『この戦いは俺の戦いなんだ』ーー


ーーその一言が彼の真理を物語っていた。


  彼女はその言葉を聞くと、佐山雄二と言う男の懐の深さを痛感した。

  それは、彼女の思っていた以上であった。


ーーそう、彼は仲間であると考えた人、全てを助けよとしているのだから......。


  それはきっと......。

  キュアリスはそう思うと、地面へと降り立った。

  そんな彼の表裏の無い優しさに涙しながら......。

  そこまでの覚悟を前にしたら、止められないよ......。


  彼女はそう考えながら、只、跪いて咽び泣くのだった。


ーー彼を助けに来た事すらも忘れるかの様に......。


ーーーーーー


ーー俺は目の前にいるかつての親友と睨み合っている。


  めくるめく過去の思い出を胸に感じながら......。

  俺の様な人間にでも分け隔てなく接してくれた親友。

  最後は俺自身の行動によって傷つけてしまった。


ーーあの時は結局、良かれと思って取っていた行動が仇になってしまっていた。


  事故に遭った事で足が動かない親友。

  それでも俺にとっては唯一の友達だった。

  多分、あの時の俺は必死だったのだと思う。

  それは、友情に飢えた俺の醜いわがままでしかなかった。

  大河原悠馬という男が、その時何を考えていたのかなど、何一つ考えていなかったのだから......。

  だが、幾ら後悔しても、その溝が埋まる事はなかった。


ーー『お前を見ていると、俺は惨めで仕方なくなる』


  その一言を最後に俺と悠馬との日々に終止符が打たれた。

  俺の優しさの押し付けによって、傷付けてしまった親友。

  俺は未だに彼に対して引け目を感じる。


ーーだが、今まで俺が見てきた彼は、人を利用したり、殺したり出来る様な男では無かった筈なのだ......。


  俺は知りたくなった。


ーーあの日以来、彼の身に何があったのかを......。


  俺はそう思うと、悪い笑顔で見つめる悠馬に対して、こう言った。

「久しぶりだな。あれ以来だ......。」

      そんな俺の発言に対して彼は、こう答える。

「そうだな......。何故かお前の事を今の今まで思い出せずにいたが......。今考えると忘れる訳がないよな。俺を堕とした存在を......。」


ーー俺はそれを聞くと、胸の奥を罪悪感が支配する。


「ずっと言いたかったんだ。あの時は本当に申し訳無かった。お前の事を何も考えずに......。」

  俺がそう謝罪を述べると、彼は続けた。

「でも、俺はお前を恨まない。何故なら、俺は意思を持ってこうなったのだからな......。」

  彼はそう言うと、全身からオーラを発し出した。


ーー見たこともない程、真っ暗なオーラを......。


  それを見た時、俺は何を話しても彼と戦う運命から逃れられないと察した。

  そう考えると、自らも風のオーラを纏うのだった。


ーーそして、かつての親友との止まった時間は、最悪の形で動き出すのだった。
 

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