天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第81話 戦友との決着。


ーーーーーー

「今のお前に、何が出来るんだ......? 」

  矢立は再び降りて来た俺にそう疑問をぶつける。

  俺はそれに対して目力を強めながらこう答えた。

「策などないさ。どうも俺に戦術を練る才能だけは無いらしい......。ならば......。」

  そう言うと、先程まで獰猛な動きで俺を襲い続けていた虎に一気に近づき、手を伸ばして触れて見せた。


ーーすると途端に、厄介であった筈のその虎は俺に吸い込まれ消えて行ったのであった。


  まるで、最初からそんな物など存在しなかったかの様に......。

  それに対して矢立は驚きを見せた。

「何をした......。」

  彼は絞り出した様な口調でそう呟く。

  俺はそんな彼を少し見つめると、ニヤッと笑って見せた。

「簡単な話だよ。」

  そう言うと、山の中から俺を狙い続ける敵軍の頭上に風の『異能』で雨雲を呼び込んだ。

  すると、彼らの控える周辺のみには大量の雨が降り出す。

  それにより見えざる彼らの陣形は途端に崩れた。


ーー更には放たれ続けていた火の『異能』はその水によって全て消えて行く。


  俺はその後、遠くに見えるその場所に向けて右手をかざした。


ーーそして、俺の手からは青白い光が放たれて、そのままずぶ濡れになり困惑しているであろう敵軍の下へと到着したのだった。


  それと同時に、その周辺からは眩いまでの閃光が湧き起こった。


  すると、その周辺の木々は焦げ、見事なまでに山の斜面が見えるまでにはげ落ちて行った。


ーー俺はそれを遠目で見ると、そこには黒焦げになった数百名の死体が転がっていたのである......。


  その後、先程まであれ程大量に撃たれ続けていた『異能』による攻撃は、見事なまでに止んだのだ。

  そうする事で、戦闘における一抹の不安は全て取り除かれた。

  それを見た矢立は驚愕の表情を見せる。

「お前、まさか......。」

  俺はそんな矢立に対してこう呟いた。

「うっかり忘れていたよ......。どうも俺は、戦いになると熱くなりすぎて何もかもを忘れてしまう......。俺には『度が過ぎる才能』がある事すらもな......。」

  そう言った後で、俺は手元を見つめながら、青白く光る雷の『異能』を見つめていた。

  彼はそれに対して呆然と立ち尽くす。

「やっと二人になれたな。まあ、お前には沢山聞きたい事がある。ゆっくりと語ろうじゃないか......。」

  俺はそんな彼に向けてそう呟いた。

  すると、彼は真剣な表情で身体中に雷のオーラを纏うと、今度は十体の虎を作り出した。

「話す事なんか何もねえよ......。とりあえず決着を付けようか......。」

  俺はそれに対して小さく微笑んで、

「じゃあ、後でゆっくり聞かせてもらうとしようか......。」

と言った後で、構えるのであった。


ーーその後、地面から十メートル程浮いた宙の上で、両者は沈黙を続ける。


  そして、二人は合図をしたかの様なタイミングでお互いの元へと向かって行った。


  矢立は十体の虎と共に俺へと襲いかかる。

  俺はその虎達に雷を結合させる事で、全て吸収して打ち消した。

  それに伴って虎から発せられたエネルギーは俺の体にオーラとして纏われて行く。


ーーだが、間髪を入れずに矢立は咄嗟に出した雷と炎を纏った刀を手に俺の懐へとやって来た。


  するとそのまま目にも留まらぬ速さで矢立は俺を串刺しにしようと、その刀を突き立てた。

  それに対して俺は、火と雷の『異能』を両手に作り出した上で回避を試みた。


ーーそして、二つの『異能』は重なった。


  俺と矢立の間からは、目を覆いたくなる程の光が辺りを包み込む......。

  すっかりとその光が消えた時、俺の体から火と雷の『異能』は消え去ってしまっていた......。


  だが、風の『異能』により浮遊の状態は続けられている。


  一方、矢立に関しては雷の『異能』により浮遊していたが為に、そのまま地面へと落下している。

  俺はそれを見ると、落ちて行く彼の元へと詰め寄った。


ーーそして、驚きの表情を浮かべた矢立の首元を思い切り殴りつけた。


  『異能』を使う事なく......。

  俺が殴った事により彼は気を失った。

  俺はそれを確認すると、落下直前の彼を掴んだ後で、ゆっくりと地面に降り立ったのであった......。

  その後で完全に意識を失っている彼を下に横たえて、

「お前には死んでもらいたくないんだ......。今度は楽しい話をしようって決めていたしな......。」

そう呟いた。


ーー後は、ミルヴィールの分まで俺が戦わなければ......。


  俺はそう思うと、少し息を切らしながらも、急いで山の方へと向かおうとした。


ーーだが、そんな時だった。


  ふわっと聞き慣れた声が耳元を掠める......。

「よく頑張ったね......。後は任せて。」

  その声が聞こえた後、周囲からは突風が吹き荒れた。

  俺は地面から吹き上がる砂に目を覆いつつ、その風の先に視線を向けた。

  メルパルク山脈へと一直線に向かって行くその背中を見ると、唇を噛み締めた。

「キュアリス......。」

  俺はそんな遠くへ消えて行く彼女の背中を追いかける様にして、空へと飛んで行くのであった......。


ーー彼女の参戦を阻止する為に。


  これは、俺の戦いだから......。

  そして、俺達にとっても大切な戦いなのだから......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    雄二は甘ったるい性格してるなと思った。

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