天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第80話 強大な力。


ーーーーーー

「お前には死んでもらう......」

  矢立は刀を俺に向け構えつつ、そう宣言した。


ーー俺はそんな彼の言葉に決意とも取れる感情を感じ取った。


  それは、前に戦った時と違う感覚だ。

  以前の様な演技の兆しは見えない。

  むしろ、覚悟を固めた清々しい程の意気込みを感じた。

  それに対して俺は、彼にこう答えた。

「お前の意思が固いのはよく分かったよ......。だが生憎、俺も守らなければならないものが沢山出来てしまってな。甘い考えかもしれないが、それを全て救わなければならないんだよ.....」

  それを聞いた彼は、一瞬真顔に切り替わった後で、微笑を浮かべた。

「やはりお前は以前と何も変わっていない様だな......。裏切られた女を助けようとするなんて、とんだ大馬鹿だよ......。」

  俺は、そんな彼の言葉に対して一つため息をつくと、

「まあな......。自分でも馬鹿としか思えないよ。あまりにも人を信用し過ぎてしまう自分を......。」

と、苦笑いをして答えた。

「元々お前は多くの『異世界人』の中でも異質な存在であるみたいだからな......。どちらにせよ、これから死ぬ人間に対してそんな事言った所で仕方がないが......。」

  彼はそう言うと、雷の『異能』を用いて、自分の体の十倍はあるであろう大きさの虎をの形をした金色の物体を作り上げた。


ーーそれは、一つの大きな『異能』の塊ではなく、まるで本当に生きているかの様に彼の周りをうごめいている。

  俺はその圧倒的な大きさに驚きつつも、風のオーラを纏いつつ、手に作り出した炎の刀を握りしめた。

「本気なんだな......。」

  俺がそう最終通告をすると、彼は真剣な表情で頷いた後、

「当たり前だ......。」

と、呟いて、その虎を俺に放ってきたのだ。

  俺はそれを風の『異能』によっていとも簡単に避けてみせた。

  突進した虎は、そのまま山に突っ込んだ後で、爆音を響かせた。

  その様子を気にする事なく俺は、そのまま矢立の元へと向かって行く。


ーーだが、先程避けることの出来た虎は、再び俺を倒そうと、雷の光線を放ってきたのだ......。


  俺はギリギリでその攻撃を暴風を放つ事で打ち消すと、矢立は雷の斬撃を打ち付けてきた。


ーーそれも慌てて避ける。


  すると、下から雷の柱が俺に向けて押し寄せてきた。

  それは勢い良く俺へと真っ直ぐに進んでくる......。

  俺は風のオーラを纏ってたお陰で、それを最小限のダメージで抑える事が出来るのであった......。


ーーだが、身体には多少の痺れが残ってしまった。


  その時、矢立は目にも留まらぬ速さで接近してきた。

  そして、手に持った雷の刀で俺を斬りつける。

  俺は少し痺れた身体を無理矢理動かす事でその一振りを火の刀で止めた。


ーーしかし、彼の刀は俺の刀をいとも簡単に真っ二つにする......。


  それに対して俺は首を傾ける事で回避したのだが......。

  頬にその斬撃が掠めた為に、そこからは薄っすらと血が流れた。


ーーそんな中、ふと背後からは今まで聞いた事のない程の大きさの爆音が聞こえたのだ......。


  俺はそれに対して一瞬背後を確認すると、壮大なメルパルク山脈の山肌は、煙を帯びて見事な風穴が開いていたのだ......。


ーー俺はそれを見てゾッとする。


  もし仮に今の攻撃が当たっていたら......。それに、あの時戦った時よりもずっと強い......。


ーーまるで、人が変わってしまったかの様に......。


  だが、矢立はそんな事は気にもせず俺に向けての攻撃を緩めない。

  慌てて俺も風の『異能』を用いて回避を繰り返した。

  山の中腹からは援軍の『異能』が俺に向け放たれる。

  更には、雷で作られた虎も容赦なく突進を繰り返す......。

  そんな危機的な状況を見て俺は、一度体制を立て直す必要があると考えた。


ーー足下から突風を作り出す......。


  そして、攻撃の到達しない辺りまで高度を上げたのであった。


ーー正直な所、俺は焦っていた。


  矢立駿があそこまでの強さを持っていた事に......。

  それに、未だに姿を現さない敵軍の攻撃......。

  更には、矢立が作り出した虎も厄介であった。
  

ーー俺はそこで考える......。


  どうすればこの状況を打開出来るのかを......。

  だが、良案が思い浮かぶ事は無かった。


ーー俺の使える『異能』は、火、水、土、草、風の五種類だ......。


  他の物に関しては全く試した事がない。

  だが、これしか......。

  俺はそう考えると、手に力を込めた。


ーーよし、やはり......。


  そして決意を固めると、矢立の元へと再び降りて行ったのであった。

「やっと死ぬ覚悟が出来たのか......。」

  矢立は俺にそう呟く。

  俺はそれに対して、

「馬鹿言ってんじゃねえよ......。諦める訳ないだろ。」

そう微笑んで見せた。


ーーそして、二人は再び攻撃を始めた。


ーー先程よりも、勢いを増して......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く