天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第79話 彼なりの結論。


ーーーーーー


ーーこの世界にも、すっかりと情が湧いてしまった......。


  俺はここに来てから、沢山の宝を手に入れた。

  それは宝石でも金でもない。


ーー人の暖かさである。


  それは例え、裏切られても苦しめられても覆る事のない大切な事。

  だからこそ、俺はそれを全力で守ると誓った。


ーーこの理不尽に塗れる悪意を壊す為。


  俺はこの世界に来てから、たまに体が震えて感情を露わにする事がある。

  いつもその時は自分の事ではない。


ーー俺は今、体が震えている。


  それは、大切な仲間を助けたいという切実な気持ちからだ。

  だからこそ今、全てを終わらせる。


ーーミルヴィールの分まで......。


  俺は『結界』から離れると、風の『異能』を使い火の弾が放たれた場所まで飛んでいる。

  その間も、そこからは遺憾無く俺を狙って打たれ続ける。

  それを避けながらも真っ直ぐに進む......。


ーーそして、後少しで到着というところで、空から雷が降って来た。


  俺はその雷を慌てて避ける。

  すると間髪を入れずに俺を何かが斬りつけようとした。


  その攻撃の先、即ち山の反対側を振り向く。


ーー山の中からの攻撃を火のオーラで吸収しつつ......。


「久しぶりだな......。」

  俺はその攻撃の主を見た時、そう呟いた。


ーーかつて戦った男、『矢立駿』に対して......。


  俺は、彼が操られていると言う話をポルから聞いた。

  そう、この男もグリンデルと同様に......。


ーーしかし、彼はそんな俺の情報とは反した動きを見せた。


「ああ、そうだな......。」

  雷の刀を持ち、宙に浮いている矢立駿は、しっかりとした口調そう答えたのだ......。


ーー俺はその言葉を聞いた時、彼は自分の意思を持っている事を自覚した。


  決して『ヘリスタディ帝国』から操られている訳ではなく......。


「お前の事だ......。何か考えがあってこうしているんだろ......? 」

  俺は矢立駿に向けてこう問いかけた。

  すると彼は、無表情のままに首を横に降る。

「いや、これは俺の意思だ。まあ、奴らに操られていた時期もあったがな......。ふと、我に返った時、何もかもが疲れてしまったんだよ。」

  彼はため息をつきながらそう言った。

「疲れた......? 」

  俺は彼の言葉を聞くと、その意味について考える。


ーー自分が悪として行動して来た事に疲れたのか......?


  だが、その憶測とは裏腹に、彼の口からは奇怪な答えが返ってくる。

「この世界に来た理由......。俺はその手がかりをずっと探し続けた。だが、俺なりの結論に近づけば近づく程に虫唾が走る。そして、大河原悠馬は言ったんだ。『だから言った通りでしょう』と......。その時思ったよ。俺は今まで何てバカバカしい事をしていたんだってな......。」


ーー疲れ切った表情でそう呟く彼の言葉を、俺は何も理解する事が出来ない。


  悠馬は矢立に対して何を言ったのだろうか......。

  そして、『この世界に来た理由』において、彼はどの様に結論づけたのか......。


  俺は何も分からぬ中、一つため息をついた。


ーーだが、彼が俺に牙を向いて来たのは事実なのだから......。


「その結果が、これか......。」

  俺がそう呟くと、彼は真剣な表情で、

「そうだな......。俺は『ヘリスタディ帝国』と共に、全て壊す事を選んだんだよ。だから、お前を殺す。前みたいに負けやしない!! 」

そう叫ぶと、勢い良く俺に飛び込んで来るのであった。

  俺はそれを避ける。

「これで決着だな......。」

  鋭い眼光を彼に向けて、そう呟きながら......。


ーーーーーー

  山の中の洞窟内にて、椅子に座った一人の青年がいる。

  青年は考える。


ーー何故あの男は、俺の名前を知っていたんだ......?


  それに、まるで昔から俺の事を知っていたかの様な口振りで接して来た。

  だが、俺はあんな男と会った事はない。


ーー元の世界にいた時も......。

  
「いや待てよ......? そう言えば、俺が事故に遭った時、誰かと待ち合わせをしていた様な......」
  
  その断片的な記憶のピースを辿った時、彼は怨念じみた表情になった。

「佐山雄二......。」

  彼は佐山雄二の存在を完全に思い出したのだ。

  そして、叫び出す。

「あいつだけは......。」

  そんな事を呟いた後で......。

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