天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第77話 固い絆。


ーーーーーー

  二人は約五日を掛けて森から歩いて行くと、その先には見慣れた門が見えてきた。

  その時、彼女は絶句をする。


ーー有り得ないと思っていた出来事が今平然と起こってしまっていたことに......。


  それは遠くからでもすぐにわかる。


ーー何故ならその場所は、黒い煙と、焦げ臭い匂い、街のシンボルであったはずの塔は丁度崩壊している所だったから......。


  金髪の少女はそれを見た途端、ベソをかきながらその場所へと走り出した。

「そんな訳がない......。」

  そう呟きながら......。

  それに対して茶髪の少女は、慌ててついて行く。


ーーだが、そんな時だった。


  彼女の体を何者かが掴んだのを感じた。
  
  それに対して金髪の少女は慌てて火の『異能』を用いて抵抗をする。


ーーするとその作用の主は慌てて逃げ出すのだった。


  彼女はその時、恐怖心を抱いた。

  だが、とりあえず一安心をして、後ろに向け声をかける。

「危なかったね......。何かが私達を連れ去ろうとしていたから......。急がなきゃ......。」

  そう言った後に勢いよく振り返ると、そこに親友の姿はなかったのだ。

  彼女はそれに気がつくと、慌てて周囲を見渡す。


ーーそして、空を見ると、一人の男に親友が連れ去られているのを見たのだ。


ーー遠くなって行く親友の影。


  彼女はそれに対して必死に火の『異能』を撃ち続けた。

  目の前で燃え盛る街を忘れるほどに......。

  だが、結局それは当たる事が無く、親友の姿は綺麗に消え去ってしまったのである......。

  すっかり一人になってしまった彼女は、その場で泣き出した。


ーー消え去った親友の事を悔やみながら......。


  すると、街からは爆音が聞こえる。

  彼女はその音を聞くと、再び走り出す。


ーーまともで無くなった頭の中で......。


  そして、街にたどり着いたとき、彼女は錯乱した。


ーー歩き慣れている筈の街には、大量の死体と炎。


  嬉々として人殺しを繰り返す兵士。


ーーここは本当にあたしの街なの......?


  そう錯覚する程に変わり果てたその街を......。


ーーすると、一人の兵士が彼女の存在に気がつく。


  その兵士は、怯える彼女を見つけると、不敵な笑みを浮かべながら剣を構えてやって来るのだ。


ーーその時彼女は激しく後悔をした。


  ここに来てしまった事と、そして、この街を離れてしまったことに......。

  そして、叫びを上げながら我武者羅に火の『異能』を放ち続けた。


ーー周囲は燃え盛る炎。


  焼け死んで行く兵士達......。

  すっかり炎で埋め尽くされた時、彼女はふと、我に返った。


ーーそこで見た光景を自分がしてしまった事に気がつく......。

 
  その時彼女はその場で泣き崩れたい気持ちになった......。

  だが、それよりも心配な事......。

  それこそが、父と母の安否であった。

  そう考えると、彼女は涙を拭って変わり果てた街を走り出す。


ーー襲って来る数多の兵士達を倒しつつ......。


  そして、自宅の前に着いた時、彼女はその場にひざまずいてしまった......。

  昨晩まで幸せに満ち溢れていた家は、見事なまでに燃え崩れている。

  隣にあった親友の家も包み込む様に......。

  そんな中でふと、足元を見た時、彼女は発狂をした。

  そこには、八裂きにされて原型を留めていない父と母の姿......。

  手に持っているお気に入りだったヘアピンを見た時、彼女はそれがすぐに両親だと分かったのだ......。

  優しくて幸せだった日々は、理不尽に終止符を迎える......。


  彼女はそんな現実を痛々しいまでに感じ取る。

  それは、幼い彼女にとっては余りにも残酷な事だった。


  彼女はそんな中で、嗚咽を漏らしながら泣き叫び、二人に寄り添う。


ーー真っ白なワンピースが真っ赤に染まっている事も気にせずに。


  戦争という悪夢に憎しみを持ちながら......。

  だが、そんな時、髪の乱れた一人の女が現れた。

「まだこんな所にも虫ケラが残っているじゃない。」

  その女はニヤニヤと笑いながら少女の事を見つめる。


ーーその手には水の『異能』が作られているのだ......。


  少女はそれを見た時、本能的に全てを察した。

  この人には勝てない。

  あたしはここで死ぬんだと......。


  そう考えていると、彼女はゆっくりと両親の亡骸の横に倒れ込んだ。


ーーそれはそれで良いのかもしれない......。


  そう思いながら......。

  そして、そんな少女に対して女は躊躇なく水の弾を放とうとした。


ーー自分が死ぬ事を悟った少女はふと、ミルヴィールの事を思い出した。


  ミルヴィール、あなたがどこに連れてかれたかはわからない。

  でも、あたしの分も強く生きるんだよ......。
 
  少女はそんな気持ちの中で死を覚悟して、ゆっくりと目を瞑ったのだった。


ーーだが、そんな時、突然突風が吹き荒れた。


  それと共に女の叫び声が聞こえる。


  少女は何が起きたのか分からずに、慌てて目を開いた。


ーーするとそこには、全身に武具を纏った小さな兵士がいた。


  その兵士は、虫の息になった女にとどめを刺した。

  そして、少女の方に一度顔を向けた後で、そのまま去って行ったのである。


ーーそれを見た時、少女は何が起きたのかさっぱり分からなかった。


  只、一つだけ分かる事があった。

  彼女はその小さな兵士に助けられたのだ......。

  それからと言うもの、小さな兵士は、人々に考える隙も与えずに、焼き尽くされた街の炎を消して行く。

  更には、暴れていた兵達も次々に潰されて行った。

  全てが一瞬にして終わった時、その小さな兵士の圧倒的な力を前にして少女はその場で立ち尽くすしかなかった。


ーーそして彼女は痛感したのだ。


  自分の力の無さを......。

  結局彼女は両親の事も、親友の事も守る事は出来なかった。

  最悪の結末を迎えてしまったのだから......。

  そんな虚無感の中で少女はある決意をする。


ーーもう、絶対に誰にも負けないと。


  そんな決意の中で、少女は街を歩いて行くのだった......。


ーーーーーー

  街が壊滅的な被害を受けた後、国家の計らいにより身寄りの無くなった子どもたちは、孤児院を新設する事により首都に集められた。

  その中に、金髪の少女の姿もあった。


ーー長い髪を自分で切り、着ていたワンピースを脱ぎ捨てて街の服屋の廃墟に落ちていたTシャツと短パンを着て......。


  それは今までの女の子らしい彼女とは似ても似つかぬ程になっていた。

  優しい微笑みを捨て、常にキリッと口元を閉じる。

  そんな風に変わってしまったのである。


ーーそして、少女は施設の中に入る。

 
  表情を一つも変える事もなく......。

  すると、集められた子ども達の中に、見覚えのある少女がいた。

  彼女はその少女を見た時、思い切り泣きそうになってしまった。

  何故ならそこにいたのは、連れ去られた筈の親友だったのだから......。


  その時彼女は思った。


ーーこれからどんな事があっても、ミルヴィールだけは絶対に守り抜くと......。


  そう考えた後に、彼女はその少女の方へと走り出したのであった......。ーー


ーーーーーー

  相変わらずミルヴィールは怒鳴り続ける。


ーー泣きながらかつての親友の事を......。


「あの時、私に何があったのか分かっているの?! 何も知らないくせに知った風な口を聞くな!! 」

  ミルヴィールは怒りで体を震わせながらそう叫ぶ。


ーーそんな時、リュイがゆっくりと顔を上げた。


「本当にごめんなさい......。あなたに何があったのかは分からない。でも、あの時あなたを助けられなかった自分の弱さに後悔を続けた。それに今だってそう。だから、責めて今ここで私を殺して。それで水に流して欲しいな。」

  リュイは弱り切った口調でそう呟いた。
 
  それを聞いたミルヴィールは、息を荒くしながらリュイの前に水の弾を作り出す。


ーーだが、ミルヴィールは怒りの表情みるみると崩して行った。


  そして、そのままその場にひざまずいて顔を覆ったのである。

「やっぱりそんな事、出来る筈がない......。」

  彼女は嗚咽を漏らしながらそう言った。

  それを見たリュイは、腫れ上がった顔で微笑みながら、

「やっぱり、私の言った通りだ......。あなたには私を殺せない......。」

と言って、震える手をミルヴィールの頬に当てたのだった。

  その手が触れた時、ミルヴィールは思い切り泣き叫ぶのだった。


ーー最後にリュイは彼女に向けて、こう言った。

「辛い思いさせちゃってごめんね......。私はこれからもあなたを守り続ける......。だから、何があったかを聞かせて。」

  その言葉を聞くと、ミルヴィールは涙を拭った後で静かに口を開くのであった......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    過去編興味無いなー。
    裏切り者は処理するべきだな

    0
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