天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第72話 得策からの決闘。



ーーーーーー


ーー俺は倒れている時、必死に打開策を考えていた。


  今ある状況においては、どうしても『魔法』を気にせずに戦える環境を維持する事が最優先だという事を......。
 
  グリンデルの速さは正直な所、『結界』内部にて対応するには余りにも厳しい物があった。

  俺の『結界』は半径百メートルの円形の中でしか作用しない。

  それに、今は部隊の面々も俺の背後で戦っている為、その半分の範囲でしか動けていないのだ......。


  それは余りにも窮屈で、せめて『結界』の内部を全て動ける形にするだけでも、行動範囲は格段に広がる。


ーー俺はそれを加味すると、一つ良い事を閃いた。


  ならば、もしこの『結界』をこの場所に留めておく事が出来るならば......。

  そうすれば、俺も『結界』の外部を動く事が出来るし、部隊の皆も少しは戦いやすくなる......。

  実際に俺は魔法耐性があるので、その範囲から遠ざかっても問題はないだろう。


ーー試す価値があるな......。


  俺はそう決め込むと、詠唱をしながら、『結界』を今の場所へ固定する意識をした。

  前方では桜が懸命にグリンデルの攻撃を抑え込んでいる......。


ーー頼む......。上手くいってくれ......。


  そして、俺は詠唱を終えると、その場から立ち上がり歩いてみた。


ーーすると、俺の生み出した『結界』は、俺の動きに連動する事なく、その場に留まっている事が確認出来た。


  画して、俺の試みは成功したのである......。
 
  それを実感すると、相変わらず放たれ続ける斬撃の防御をしている桜に向かって耳打ちをした。

「申し訳ないが、俺はグリンデルとの接近戦をしてくる......。『結界』は今ある場所に留めているから、その内部で自由に戦う様に皆に告げてくれ......。」

  俺がそう言うと、押され気味の桜は一瞬俺を心配そうな顔で見つめた。

「でも、一人で大丈夫なの......? 」

  俺はそんな桜の気遣いに笑顔で、

「大丈夫だよ。全部上手くやるって言っただろ......? 」

と、自信をチラつかせながら答えた。

  すると桜は、一つため息をついた後で、

「分かった。その代わり、危なくなったら後ろで援護はさせてもらうからね。」

と、了承してくれた。

  それに対して俺は、

「頼んだ。だから、もう少しだけ持ち堪えてくれ。」

と、硬い土の壁を作り出している桜にお願いをした。

  桜は俺の言葉に笑顔で、

「後、終わったらハンバーグとカレーライスお腹いっぱいになるまで食べさせてよ!! 」

と、ねだってきた。

「ああ、幾らでも好きに食べるといい。」

  俺は笑顔で頷くと、グリンデルの方へと走り出した。
 

ーーこれで上手く行く......。


  そんな気持ちを持ったまま......。


ーーーーーー

  俺は桜との話を終えると、自ら生み出した『結界』の外へと走り出した。


ーーグリンデルを助ける為に......。


  そして外へ出た時、先程までの俺の戦い方が間違っていない事を実感したのだ。


ーー何故なら『結界』の外は、多くの『魔法』が混沌と飛び交っているのが、すぐに感じられたからである。


  人格操作、精神汚染......。

  その余りにも不愉快極まりない雰囲気に、俺は怒りを覚えた。

  奥に控える数十人の魔法使い達は、俺が一人で出てきた事を確認すると、一斉に詠唱をしている様だった。


ーーそれと同時に俺は頭の内部から何かを語りかけられている。


  それは多分、グリンデルが操られる時にされた事と同じであろう......。

  妙な目眩と、吐き気、そして遠のく意識......。

  頭の感覚がおかしくなって行く......。


ーーだが、俺には魔法耐性がある。

 
  そう考えると、ハッと我に返り、魔法使い達を目力一杯で睨みつけた。

  一瞬の内に『魔法』の作用を打ち消された事を確認すると、彼らは驚きを隠せない様子だった。

  そんな彼らに向けて、俺は間髪を入れずに風の『異能』を放つ。


ーーこの攻撃で奴らを倒せば、グリンデルは正気を戻す筈だ。


  そう信じて......。

  しかし、桜に向けて斬撃を放ち続けていたグリンデルは、そんな魔法使い達を守る為に見えない程の速度でやって来て、俺の『異能』をいとも簡単に打ち消した。


ーーすると彼はそのまま、俺に剣を構えた。


  そんなグリンデルから殺気を感じ取った俺は、右手に力を込めた。

「悪いが、お前の事を絶対に助けたいんだ......。少し痛いかもしれないが我慢してくれよ......。」

  俺はそんな届く筈の無い言葉をグリンデルに放つと、風のオーラと、水の刀を作り出した。


ーー俺とグリンデルとの距離は、約十メートルだ。


  今あるこの距離こそ、二人の間合いなのだろう......。

  そんな気持ちで相手の動きを探っている。

  俺とグリンデルは、お互いが構えたまま、微動だにしない。


ーーグリンデル、俺が遅れてしまったが為にこんな思いをさせてしまって、本当に申し訳なかった。

 
 今、解放してやるからな......。


  そう思うと、俺は彼に向けて走り出した。

  それに合わせる様に、グリンデルも向かってくるのだ。


ーーそして、二人が丁度ぶつかった時、辺りから轟音が響き渡って、刀が交わったのである......。

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