天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第70話 迫り来る恐怖。


ーーーーーー

  スケアリー・ドラゴンは未だに、俺に向けての攻撃を続けている......。

  見るも無残な状態で......。

  やはり何らかの『魔法』の作用によって無理やり奮い立たせているものの、ドラゴンの体自体へのダメージはかなり大きく、攻撃にも衰えが見えているのがすぐにわかる程に弱り切っていた。

  俺は復活後も奴に攻撃を与え続けた。


ーーその結果、右腕は焼け落ち、体は穴だらけ、翼も削げ落ちていった。


  だが、どんなにドラゴンが悶え苦しんだとしても、すぐに魔法使いが復帰させる。

「まだ行けるよね?! お前は伝説のドラゴンなんだろ!! こんな所で死んでもらっちゃ、意味がねえよ!! 」

  仮面の青年は『スケアリー・ドラゴン』にその様な言葉を浴びせ続ける。


ーーもう勝敗などとうに決まっているにも関わらず......。


  にも関わらず、ドラゴンは戦い続ける。

  それは只の皮肉でしかなかった。

  更には先程、人間以下の扱いを受けていた兵士達も、俺達に飛び込み続けてくる。


ーーしかし、俺達との差は余りにも歴然で、彼らはやって来る度に部隊によって一掃されて行った。


  それは非常に残酷な話で、まるで彼らはもう既に死ぬ事が決まっている様であった。

 その声が一つ、また一つと消えて行く度に、そんな現実に心苦しくなる......。


  そんな中俺は、動きが鈍くなっているドラゴンに哀れみを感じつつ、奥に控える『異能』の使い手と、魔法使いを見ていた。


ーー椅子に座った仮面の青年を見ている......。


  俺は彼の事をよく知っている。

  だが、今この戦争で発している言葉は余りにも俺の知っている彼とはかけ離れていた。

  彼は常に俺に対して優しい言葉を掛けてくれた。

  そして、俺は彼を傷つけてしまった。

  そんな彼からの最後の言葉は俺の人生において、一番印象に残る言葉となった。


ーーだが、どうやら彼は、俺が『佐山雄二』である事に気がついていない。


  只の敵としか見ていない様にも見えた。


ーー『大河原悠馬』。

  彼はかつて、俺にとっての唯一の友達だった。

  その声、肩に腕を掛けて首を鳴らす癖。

  その様子を見た時、幾ら仮面を被っても、俺はすぐに彼だと気がついた。


ーーだが、彼は俺の知っている彼ではない。


  そんな立証のしようがない抽象的な考えの中で、俺は複雑な気持ちにさせられる。


ーー俺の知っている『大河原悠馬』は、こんな奴じゃない。


  どんな作戦があるにせよ、人の命をぞんざいに扱う様な男ではない。

  それは、彼が一番知っている筈だから......。
  
  だからこそ、彼が本当に『大河原悠馬』なのかを確かめたくなった。


ーーそれがどんなに残酷な事であっても......。


  そこで俺は、正面で苦しみながら俺への攻撃を続けるドラゴンを眺めつつ、俺は部隊に指示を出した。

「馬から降りろ!! 今から、一気に間合いを詰めるぞ!! 」

  俺がそう言うと、皆はそれに従う様にして、馬から降りた。

  俺はそれを確認すると、

「では、絶対に俺から離れるなよ!! 相手の魔法使いは腕利きだ!! 」

と、注意を促しながら走り出した。

  そして、向かい撃つ兵士達を次々に薙ぎ倒しつつ、あっさり詰め寄る俺に対して、ドラゴンは狂った様に炎を放ち続ける。


ーーだが、それを全て打ち消して俺はドラゴンの首を切った。


  するとドラゴンは一つ息を吐いた後で、そのまま完全に息を引き取るのであった。

  部隊の面々は間合いを詰めた事により相手との距離が近くなった事で、先程の鬱憤を晴らすかの様に兵士を倒す。


ーーそこで俺は、隣に座っている青年に目をやる。


  だが彼は、相変わらず余裕の笑い声を上げながら俺の方を向いていた。

「やっぱり雑魚だったな。こんな奴が伝説級なんて、この世界もどうしようもないな。」

  彼は残念そうな顔でそうを呟く。

  そんな彼に対して俺は問いかけた。

「お前、『大河原悠馬』だろ......。」


ーーその先の答えは聞きたくない。


  だが、確かめなくてはいけない気がする。

  何故なら、最悪な形で決別したものの、俺にとって大切な友達だった男だから......。

  そんな気持ちでいると、彼は仮面を取り、俺に対してこう答えた。

「お前、なんで、俺の名前を知っているんだ......? 」


ーー俺はそれを聞いた時、心の底から悲しみが湧き出るのが分かった。


  多分、期待していたのだろう......。

  奴がかつての親友でない事を......。

  だが、そんな淡い期待は余りにも無残に壊されて行った。


ーーそれどころか、悠馬は俺を覚えてすらいない。


「なんで......。」

  俺はそんな悲しみを抑えられずに半泣きになりながら、彼に向かって行った。


ーー『大河原悠馬』に俺の存在を思い出させる為に。


  悪い夢が覚めるような気がして......。

  するとそんな時、右横から大きな斬撃が俺を目掛けて飛んできた。

  俺は慌ててそれを避ける。


ーーだが、その斬撃の大きさや、速さによって、右腕にはかすり傷がついてしまっていた。


  それを見ると隣にいた桜は慌てて薬草を取り出して、俺の腕に当てた。

「雄二、さっきからおかしいよ?! どうしたの?! 」

  桜は俺の変化に気づいていた。

  俺はそれに対してお礼を言った後、その斬撃の先に目をやった。


ーーそして、その張本人の姿を見ると、俺は驚きで声が出なくなった。


ーー何故なら、そこにいたのは紛れもなくグリンデルそのものだったからだ......。


  だが、グリンデルもまた、俺の知っている彼ではない。

  かつての闘志に満ち溢れた目力は朽ち果て、まるで死んでしまったかの様に無表情であった。

  全身に武装をして剣を持っているその立ち姿からは全く生気を感じさせないのだ。

  俺はそんな彼を見て、再び呆然とするのだった。

  その時、悠馬は彼に向かって、こう言った。

「やっと出来上がったみたいだね!! クソトカゲと雑魚どもを盾にして時間稼ぎする甲斐があったよ!! もう少し遅かったら俺が殺してたんだけどね......。」

  悠馬はその言葉の後、再び登場した時の様に浮遊し出した。


ーーそれは、どうやら風の『異能』を用いた様であった。


  去り際に彼は、背後に控える魔法使いに対してこう言った。

「余り奴との間合いを近づけ過ぎるなよ!! 『結界』の中に入ったら全て台無しになるからな!! 後、観音寺桜にも気をつけろ!! 」

  そう指示を出した後で、彼は再び山の中腹の方へと飛んで行くのであった。

  俺は、その言葉を聞いた時、焦りを抱いた。


ーー彼らは全て知っている様な気がして......。


ーー俺達の戦い方も、『結界』についても......。


  それを踏まえた上での今までの行動で、実際に俺の間合いに入ったのは、歩兵と『異能』の使い手のみだった。

  しかも、先程の悠馬の発言からきっと、グリンデルだってまだ完全に操られる前だったのかもしれない。

  だが、助けられなかった......。

  そんな風に俺は、グリンデルの件での自分の足りなさに後悔をし、それと同時に、得体の知れない敵軍に恐怖を感じるのだった。


ーー次は何が来るのだ......。


  俺の中をそんな恐怖が支配して行く......。

  『結界』の外にいるグリンデルも、俺に向け剣を向け出した。


ーーどうすれば、上手く切り抜けられるのだ......。


  そんな風に弱気になってしまう。

  相変わらず命を捨てに来る兵士や、ズタボロになって死んでしまった『スケアリー・ドラゴン』、死んだ様に立ち振る舞うグリンデルに、それを操る魔法使い......。


ーーそれに、不自然に山の中腹へと戻って行った悠馬......。


  俺はどれを取っても彼等の術中に嵌っている気持ちにさせられる......。


ーーそんな時、グリンデルが動き出した。


  丁寧に俺の『結界』の外を伝う様にして数百発はあろう斬撃を放ってきたのだ。

  俺は火の壁を張る。

  桜も硬い土の壁を張る。

  それが重なってやっと、打ち消せる程強力な攻撃だ。


ーー俺はそんな状況に焦る。


  背後の部隊も捨て身で掛かってくる大量の軍勢や『異能』の使い手を前に、疲れを見せ始めている......。

「一体どうすれば......。」

  そんな風に俺は思考を掻き回すのであった。


ーー見えない答えを導き出す為に......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    グダグダ感しか読み取れないなー

    0
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