天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第69話 ドラゴンと青年。


ーーーーーー

  今あるこの状況......。

  仕留めた敵が、倍以上の大きさとなって再び現れるなど、あり得ない。

  俺はあの時、確実に首をはねた筈だったのだから......。


ーーだが、ドラゴンが叫ぶ度に騒がしい地鳴りを起こし、それが俺に非現実的な現実を突きつけてくる。


  『スケアリー・ドラゴン』の殺気立った視線の先から、間違いなく俺を狙っている事が良く分かった。

  それに、先程の兵とは違う雰囲気の者達が俺達を囲む様にして燦然と現れだした。


ーー背後には、仲間がいる。


  俺がこのドラゴンと戦っている間に、何時敵軍から攻撃を受けるか分からない......。

  そこで俺は、部隊にこう指示を出した。

「あのドラゴンは俺と桜で対処する。お前達は『結界』の範囲から離れない様にして戦ってくれ!! 」

  俺がそう告げると、彼女達は各々が構え始め、戦いに挑むのだった。


ーーそれにしても、この状況においては行動範囲が制限されるのは、かなりのデメリットだ。

  だが、今『結界』の外から出るのは、余りにも危険過ぎる。


ーーそれに、奴らの中には、腕利きの魔法使いがいるのだから......。


  そう考えた後で、俺は『スケアリー・ドラゴン』を倒す為に、火の『異能』の刀を作り出し、そこから火の斬撃を放った。

  するとドラゴンは、雄叫びを上げながら同じ様に口から火の『異能』を放ち、相殺をした。

  俺とドラゴンの距離は約二百メートルある。

  前に戦った時の事を考えると本来は、遠方における攻撃よりも、接近戦に持ち込みたい所だ。

  そんな事を考えている内に、ドラゴンは空へと登ってゆき、際限なく俺に炎のブレスを撃ってくる。

  俺はそれを全て吸収する事で事無きを得ているのだ。


ーーだが、それにしても妙な事がある。


  このドラゴンは何故か、俺に近寄って来ようとしない。

  それはまるで、『結界』の存在が分かっていて、意図的に範囲を避けるかの様にしているのである......。


  それに気がついた俺は、奴との距離を近づけたいと思っていた。


ーーしかし......。


  俺の背後では相変わらず部隊の面々が、現れた兵士と戦っている。

  しかも、先程の兵士達とは違い、『異能』を用いた少々厄介な奴らが現れていたのだ......。


ーーそれはまるで、『スケアリー・ドラゴン』が来るのを待っていたかの様に......。


  我が部隊の面々は確かに強い。

  だが、人数がこちらの十倍程いる『異能』の使い手を前にして、なかなか苦戦を強いられる事が簡単に予想が出来た。

  俺はそちらの援護もしたかったのだが、相変わらずドラゴンは俺に向かって容赦の無い攻撃を仕掛けて来る。

  そんな時、俺は前にいる桜に一つのお願いをした。

「桜、大きな槍を作れるか?」

  俺がドラゴンの攻撃を回避しつつ、彼女に告げると、

「分かった!! とびきり大きいの作るよ!! 」

と、快諾をしてくれるのだった。

  その後、桜の手の上からは、直径十メートル程の、鋭利な槍が出来上がった。

  俺はそれに対して背後から風の『異能』を送り込む。

  そして、悠然の空を泳いでいるドラゴンに向けて、勢い良く放つのであった。


ーー飛んで行った槍は、ドラゴンの心臓部の辺りを貫通して行ったのであった......。


ーーそれと同時に悶え苦しむドラゴン。


  俺はそれを見ると、間髪を入れずに風と火の『異能』を合わせたトルネードをドラゴンの顔に向け一直線に放出した。


ーーするとそれも、見事にドラゴンの眉間の辺りに命中して、硬い皮は容赦なく抉れて行くのだった......。


  ドラゴンはそんな強力な攻撃に耐えられず、無惨にも地面へと落ちて行く。


ーーその時俺は確信した。


  桜のおかげがあるものの、倍以上の大きさになった『スケアリー・ドラゴン』をすぐに倒せる位に俺は強くなっていると......。

  そんな自信と共に、激しい音を立てて落ちて行ったドラゴンを見ているのであった......。

  今度は、背後に目をやる。
  
  そこでは俺の予想に反して、リュイやミルトなどが、『異能』を用いて周囲の敵をバタバタと倒して行っている。

  そして、相手の兵は、一度陣形を立て直す為に撤退して行った。


ーー俺は、その様子に取り敢えず一つため息をついた。


「何とか一難は去ったな......。」

  俺は皆にそう呟く。

  するとリュイが周囲を気にしつつ、

「私達も知らぬ間に強くなっていた事がよく分かりましたよ。」

と、俺の事をチラッと見ながら微笑み、そう答えた。


ーー本当に強くなったよ......。

 
  俺はそんな気持ちにさせられつつも、小さく頷くのだった。


ーー眼前には、無惨にも倒れた『スケアリー・ドラゴン』と、半分程に減ってしまった『ヘリスタディ帝国』の兵士達......。


  俺はそんな彼らの事を睨みつつ、構えていた。


ーーそんな時、山の中腹辺りから、虫の息になったドラゴンに向かって、何者かが勢い良く飛んできた。


  それに目をやると、そこには仮面を被った一人の青年が木の椅子に座ったままの状態で現れたのだ。

  更に、彼の登場によって、明らかに兵士達は怯えている....。

「また負けちゃったのかよ、お前......。相変わらず使えねえな」

  彼はボロボロになった『スケアリー・ドラゴン』を撫でながらそう呟くと、一度兵の方を向く。


ーーそれを合図に、兵士達は背後から現れた黒いマントを被る者達により、剣で次々と首を切られて行った......。


「やっぱり、君たちは何の役にも立たなかったな......。まあ、時間稼ぎしてくれただけ良いとしようか。」

そんな事を言いながら、高笑いをしている。


ーー俺の予想通り、千を超える兵士達は、やはり時間稼ぎの為だけに命を捨てていたのだった。


  どんな理由でその行為に及んだのかは分からない。

  だが、俺はそんな彼らに憤りを感じる......。


「じゃあ、取り敢えずこいつ、また復活させてもらっていいかな? 」

  彼がそう言うと、黒いマントの面々は、ドラゴンに向けて、何かを念じる様な仕草を取り始めた。


ーーすると、顔が抉れ、胸の辺りが血塗れになったドラゴンは、大きな雄叫びを上げて、再び眼力を取り戻した。


  そして、再び空へと浮上し出した。


「ハハハ!! そうじゃなきゃダメだよ!! せっかく復活させたんだから、お前にはもっと頑張ってもらわないと!! 」

  青年は狂った様に笑いながら、ドラゴンの復活を喜んでいた。


ーーその発言から、何からの『魔法』により、『スケアリー・ドラゴン』を復活させ、操られている事がよく分かった。


  しかし俺は、それよりも気になる事があった。

  仮面を被り、表情の分からない青年の声......。

  俺はあの声を知っている。

  認めたくはないが、間違いなく......。

  そう思うと俺は、一度気を抜いてしまった。


ーー「雄二危ない!! 」


  そんな状態からハッと気がつくと、目の前には大きな壁が出来ていた。

  その先で、すぐに響く爆音。

  ふと、目の前を見下ろすと、桜が『異能』で俺を守っていたのだった。

「あんまりボーッとしてちゃダメだよ!! 死んじゃったらどうするの?! 」

  彼女はその壁に手をかざしつつ、俺にそう律した。


ーー俺は、何をしているんだ......。


  戦争前にあれだけ啖呵を切った割に、結局隙だらけで一人では何も出来ないじゃないか......。


  そんな風に自分を責めつつも、正面に復活した『スケアリー・ドラゴン』に再び視線を移した。


ーーあの青年が何故ここにいるのか、疑問を抱きつつ......。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    グダグダすぎておもしろくない

    0
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