天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第68話 突然の開戦。


ーーーーーー

  まだ薄暗い星の見える早朝、俺達部隊は戦争に向かう為、野外にてポルが率いる『ヘベレス支部』の面々と別れの挨拶をしていた。

「そ、それでは、お気を付けて行ってらっしゃいませ......。くれぐれを気を抜かないで下さい......。」

  彼女は、俺達をそう激励すると、見送りをする。


ーーそんな時、ミルトが涙声でポルに告げた。


「私、絶対に勝って帰ってくるから!! 次会う時はもっと沢山いろんな事話そうね!! 」

  それを聞いたポルは、はにかみながら、

「そんな事、当たり前でしょう......。絶対に死んじゃダメだからね!」

と、短めの言葉で返事をした。

  その言葉を最後に俺達は、『ヘベレスシティ』から旅立つ。


ーーふと振り返ると、遠くなって行くポルは、肩を震わせながら俺達を見ていた......。


  大丈夫......。全て上手くやってやるよ。
  
  俺はそんな気持ちを抱きながら、『ヘベレスシティ』を後にするのであった。

ーーーーーー

  ヘベレスシティから約二時間程で到着するメルパルク山脈は、もうそろそろであった。

  俺はそんな状況を示唆して森山葉月に連絡をした。

「いよいよ到着だ。山を登り始めてからが本番になるが、気を引き締めて頑張ってくるよ。」

  俺がそう言うと、彼女は答えた。
  
「我が軍の力、見せつけて来て下さい......。後、もしかしたら足元を掬われる可能性もあります。何か危険な状況になりましたら、すぐにでも連絡ください......。」

  それに返事をすると、俺は生唾を飲んだ後で会話を終わらせた。


ーーすると、眼前に聳え立つ山が見上げる程に近づいて来た。


  もうすぐ到着だ......。
  
  そんな気持ちで見上げていた視線を下に下げて行くと、俺は途端に身構えた。


ーー何故なら、山の中に控えていると言われていた千人を超える『ヘリスタディ帝国』の軍勢は既に麓で臨戦態勢に入っていたからだ......。


  俺がそんな光景に唖然としていると、背後から殺気を感じる。

  それに気がつくと俺は慌てて『結界』を張った。

  そして振り返ると、遊撃隊と思われる短刀を持った軽装の男五人が、俺の後方にいるミルヴィールを切りつけようとした。

  ミルヴィールはそんな不意打ちに対応が出来ず、呆気にとられて動けずにいた......。


ーーそんな時、最後尾に控えていたミルトが雷の『異能』で作った塊を五発放った。


  それは全て敵に命中し、彼らはそれを受けると、叫びながらその場に倒れて行った......。

「ありがとう、ミルト。本当に危なかったよ......。」

  ミルヴィールは一度安堵の表情を浮かべた後でミルトに礼を述べる。

「これに関しては想定外だったけど、とりあえず怪我がなくて良かったよ......。」

  ミルトは真剣な表情でそう答える。

  そんな彼女達を横目に俺は、数百メートル先にいる前方にいる軍勢を前にして、一度馬の足を止めた。

  それに従う様にして皆も続く。


ーー宣戦布告をしているとはいえ、余りにも不意打ち的に始まった戦争。


  こちらは十五人に対して、相手は千人はいると思われる。


  そんな側からみれば劣勢と考えれられる状況だ。


ーーだが、一度部隊の方を振り返ると、彼女達は強い意志を持った顔をしている。


  俺はそんな皆の表情を見ると、何故か安心する事が出来た。


ーーそして、心の奥底から湧き上がる今までに感じたことの無い闘志......。


  そんな気持ちを抑えつつ、俺は皆に向け告げた。

「これから先は絶対に俺の『結界』の範囲外からは離れないで欲しい......。」

  その後で、挨拶がわりに火の『異能』の弾を、相手の手前に向けて数十発撃ってみせた。


ーー数百メートル先に飛んで行く無数の火弾。


  それは、手前に着地すると、大規模な爆発を起こした。


ーーその爆発は、俺の撃った『異能』を軽く凌駕する程の爆炎を上げている......。


  要するに、俺達が正面突破して来た時の為の罠だったのである。

  その可能性を示唆しての行為だったのだ。

  そして、それを皮切りに相手の軍勢は煙が立ち昇る中を越えて、勢いよく俺達に迫って来た。

  俺はそれに対して指示を出す。

「ミルトは後方にも気を留めておけよ! では、俺について来い! 」

  そう言うと、俺達は馬を相手の方に走らせつつ、火の『異能』を再び撃ちまくる。

  リュイを始めとする部隊の面々も俺に続ける様にした。

  その『異能』は、撃つ度に迫って来る相手の兵士に命中して、気がつけばその数はどんどんと減って行った。

  それを続けて行く内、周囲は次第に煙巻いて行く。

  俺はその中で一つ不審に思った事があった。


ーー相手が余りにも無策過ぎないか......?


  そんな気持ちを抱きつつ、攻撃の手は緩めずにいた。

  俺達の攻撃が当たる度に、相手の兵士が焼けているであろう焦げ臭い匂いが辺り一帯を支配した......。

  俺は、そんな状況の中で周囲を見渡す。

  だが、相変わらず正面には黒煙と、死んで行く兵士しか見えなかったのだ......。


ーーいや、ちょっと待て......?


  俺はそう思うと上に目をやった。


ーーそこには、土の『異能』で作ったであろう、無数の矢がこちらに向かってくる......。


「上から矢が飛んで来るぞ!! 急いで避けろ!! 」


  俺はそれに慌てて指示を出した。


ーーだが、そんな時、俺の前に座っている桜が、上空に向け手を伸ばす。


  すると、そこから土の『異能』が現れ、俺達全員を覆う様にしてアーチ状の形状に変化をした。

  そこに先程の無数の矢が刺さって行く......。

  桜による咄嗟の防御によって敵軍の攻撃を回避すると、その『異能』を手の中に戻した。

「ちゃんと見てないと、死んじゃうよ? 」

  桜はドヤ顔で俺に向けそう呟く。

  俺はそれに対して一瞬頭を撫でて、

「助かったよ......。」

と、笑顔で答える。

  そして上空に気を取られている間に、もう既に相手の兵士は俺達の手前にまで差し掛かってきた。


ーーそのタイミングでミルヴィールは相手に向けて豪雨にも似た大量の水を空から放った。


 それにより、すっかりと濡れている兵士を前にして、ミルトにより空から雷が放たれた。


  相手の兵は濡れている地面を伝って感電して行き、全て焦げて倒れて行ったのだ......。


ーー彼女達はいつの間にか、合わせ技を習得していたのだ......。


  俺はそんな部隊の成長に感心しつつも、再び前を向いた。


ーーまだ多少の残兵がいるものの、歩兵に関しては壊滅的なダメージを与える事が出来た。


  第一段階としては、余りにも簡単に事が進んで行った......。

  そこで俺は再び懸念を示した。


ーーこれでは少し、安易過ぎないか......?


  背後からの攻撃が多少あるものの、そこまで気にする程の事ではない。

  だが、そんなにも簡単に事が進む訳が無いはずだ......。

  むしろ、この大軍の連中は時間稼ぎをしている様にも思える程、潔く真っ直ぐに俺達へと進んで来る......。

  それに、敵軍の指揮官の姿が未だに見えないのも歪だ......。


  そう疑問を示した時だった。

「ドォーーン!!!! 」

  黒煙の向こうから、地面が割れたのかと勘違いする程の揺れと轟音が辺りに響いた。

  それと共に暴風が巻き起こる。

  俺は、風に目を抑えつつ、音の先へと視線を向けた。

  すると、先程の黒煙をかき消したその場所には、怪しく黒光りする一体の大きなドラゴンがこちらを獰猛な眼差しで睨んでいる......。


ーー俺はそれを見ると、目を疑った。


ーー何故ならばそれは、以前俺が倒した筈の、『スケアリー・ドラゴン』そのものであったからだ......。


  だが、そのドラゴンは、俺が倒した時よりも倍以上の大きさで聳え立っているのだ......。

「これは一体、どう言う事なんだ......? 」

  俺は思わず気持ちを口にした後で、その圧倒的な存在を見上げながら呆然としつつも、強く構えるのであった。

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