天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第66話 作戦会議。


ーーーーーー

「まず、敵国との圧倒的な戦力差をしっかりと埋めなければならないな......。」

  俺は、神妙な表情をする部隊の皆にそう口を開いた。

  先程ポルからは『ヘベレスシティ』に駐留している兵士を集めれば五百人程は補填出来ると言う説明を受けた。

  だが、俺はそれをきっぱりと断った。


  理由は、『ヘリスタディ帝国』の『魔法』を懸念しているからだ。

  もし仮にそれだけの人数が我が部隊の応援に入ってくれるのであれば、助けにはなるだろう......。

  しかし、それによって被害を増やす可能性がある。

  世界的な魔法使いである『ランドリー・シェム』の門弟が多く点在する軍を相手にするならば、出来るだけ『魔法』の恐怖を払拭しつつ戦いたいところだ。

  それに、俺は『結界』を取得した事により、半径百メートル以内の環境においては、如何に強力な『魔法』の作用を無効に出来る。

  だが、そんな考えとは相反して、部隊は俺が兵の応援を断った事に不満を示していた。

  確かに、普通に考えれば、断る理由がないのだから......。

  そこで俺は、まだ皆に話していなかった『結界』についての説明をした。

「みんなが反論するのはわかる。だが、とりあえず俺の話を聞いて欲しい。俺は、『結界』を取得したんだ。それを使う時、大人数をカバーする事は出来ない。だからこその少人数なんだよ。」

  俺がそう説明をすると、会議室は静寂に包まれた......。


ーーそして、その静寂は歓声へと変化を遂げた。


「まさか、数百年間誰も成功した事の無い、あの『魔法』を成功させたのですか?! 」

  リュイは余りの興奮に俺の肩を掴みながらそう言ってきた。

  俺はその反応に少し引き気味になりながらも、

「そ、そうだ......。『結界』の範囲が小さいから少人数の方が動きやすいかと......。それに、お前らの『異能』の力は俺の折り紙付きだ。力を遺憾なく発揮できる筈だぞ! 」

と、部隊への期待を口にした。

  すると、そんな俺の激励に感銘を受けたのか、リュイは俺に抱きつきながら、歓喜の雄叫びを上げた。


ーー最近の彼女は感情の起伏が激しい。


  そして、何故かそれに便乗して、ミルヴィールが大きな胸を俺の顔に押し付けながら抱きついてくるのだ。


ーーだ、だから、やめてくれ......。


  そんな風に俺が嬉し恥ずかしな表情で顔を赤らめていると、桜はあからさまに吐きそうな顔をしているのだった......。

  俺はとりあえずそんな二人から無理矢理離れた後で、説明を続ける。

「ま、まあ、それに際して、とりあえず部隊の中で役割を決めようと思う。」

  俺はそう言うと、前に考えていた部隊の体制を伝えた。

  火の『異能』のリュイを始めとする『前衛陣』に、水の『異能』のミルヴィールを始めとする『後衛陣』、土や草の『異能』の桜を始めとする『防御陣』。

  俺が訓練の中で閃いた眺望をそのまま彼女達に伝えると、各々は役割を手に入れた事に喜んでいた。

  そして、まだ名前の呼ばれていないミルトは、俺にこう問いかけた。

「私だけ、まだ名前が呼ばれていないんですけど......。」

  俺はそんな不安そうな彼女に、自信満々な表情で答えた。

「ミルトは一番後ろから攻撃をして欲しい。」

  俺がそう告げると、ミルトは一度、ポルの方を見た。

  そして、こう呟く。

「なんで私だけ最後方......?」

それに対して俺はこう説明をした。

「お前の持っている雷の『異能』は、かなりの広範囲からでも放つ事が出来る。だから、接近戦よりも、後方からの攻撃の方が相手にダメージを与えられるんだよ。俺の『結界』の範囲ギリギリに控えていて欲しい。」

  それを聞くと、ミルトは納得した様で、頷いた。


ーーしかしそこで、ミルトは俺にこんな質問をした。


「それで、雄二はどうするの......? 」

  俺はその質問に対してこう答えた。

「俺は、最前線で戦うつもりだよ。」


ーーあわよくば、誰にも戦わせる事なく、その戦争を終わらせる為に......。


  甘い考えかもしれないが、何故かそんな自信が湧き上がるのだった。

  それに対して皆は驚愕しつつも受け入れた。

「余り指揮官が最前線に赴くと言うのは聞きませんが......。どうせ、こちらで止めても絶対に曲げないんですよね。ならば、お願いしましたよ! 隊長! 私達も精一杯戦います!! 」

  リュイは俺の性格を見透かした様にして笑顔でそう答えた。

 それに対して周囲も理解を同じ様な反応をしたのであった。

  それを確認した俺は、ニコッと笑った後で、

「では、明日が本番だ!! それまで英気を養う為に、解散だ!! 」

と、皆に解散を告げた。

  そして、その後、皆は各々の部屋へと戻って行った。

  だが、ミルトは一人だけ部屋に残っている。

  俺がそんな様子を見ていると彼女は、

「私はちょっと姉ちゃんと話してから戻るね!! 」

と、嬉しそうな表情で言った。

  俺はそれを聞くと何も疑う事なく、一足先に部屋へと戻った。

  戻る最中で桜は俺に向けて、

「雄二、一人で戦おうとしているみたいだけど、桜は、ちゃんとサポートするから心配しないで戦っていいからね!」

と、にこやかに言った。

  俺は、それに対して、
  
「そうだな......。前にも話したが、俺が全て上手くやってやるよ......。」

と、はにかみながら答えた。


ーー俺は明日の戦争を前に少しだけ怖気づいている。


  それは多分、みんなも同じだ。

  だからこそ、誰かが犠牲にならなければいけない。

  明日、俺は死ぬ覚悟で戦おう。

  そんな風に考えながら......。


ーーーーーー

「姉ちゃん、前に葉月さんとも話していたんだけどさ、やっぱり雄二って......。」

  ミルトは真剣な表情で先程、和解したばかりのポルに向けそう呟いた。

  それを聞くとポルは、少しだけ複雑な顔をした後で、こう答えた。

「うん......。最初はそんな訳ないと思っていたんだけど、どうやら間違いないみたい。だって、余りにも彼との共通点が多すぎる......。」

  二人は顔を合わせながら、そんな非現実的な出来事を前にして卒倒しそうになるのであった......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く