天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第60話 友情は世代を超える。


ーーーーーー

  早朝、支部の人々にお礼を述べた俺達の部隊は、すっかり支度を済ませた後で出発の見送りを受けていた。

「お気をつけて下さい。後二日程で、『メルパルク山脈』へは到着すると思います......。」

  小さな体で丁寧な言葉を発しているのはメローだ。

  横にはベッタリと張り付いたまま、離れない桜がいる......。

  どうやら俺が『魔法専門部』にて研究を続けている間に、妙な友情が湧いた様だ。

「メローちゃんと離れちゃうのは悲しいけど、また会えるから良いんだよね!!」

  桜は相変わらず完全に同年代のお友達と言う認識の中でそうメローに言う。

  すると、メローはその扱いに少しだけ苦笑いをした後で、すぐに笑顔に切り替わり、

「そうだね、桜ちゃん。私達は友達だもんね!」

と、桜の頭を撫でながら返事をした。

  それに対して桜は、メローを見てニコっと笑うと、頬にキスをした。

「これが、約束の証だからね!」

  そんな桜の不意打ちに対して、皆は驚きながら見つめていた。

  そして、何よりも驚いていたのはメローだった。

  彼女は少し前に感じた頬の柔らかい感覚に表情が固まりつつ、顔を赤らめて、

「また、来てね......。」

と、答えたのであった......。


  そんな時、フリードとルインド、それに、ニヤニヤとしているメリーがやって来た。

  メリーは先程の衝撃的なシーンを見ていたらしく、

「姉ちゃん、お友達が出来て良かったじゃない。」

と、不敵な笑みを浮かべながらメローに呟く。

  それを聞いたメローは更に顔を真っ赤にし、口を膨らませた後で、微笑んだ。

  そして桜を抱きしめて、叫んだ。

「そうだよ!!桜ちゃんは私の大事な友達だから!!」

  それを聞いたメリーは面を食らった表情を見せた後で、微笑みながら呟いた。

「それは、本当に良かったね......。」

俺はその光景を見ると、昨晩、実験の合間でメリーの話していた事を思い出す。ーー


ーー「私も姉ちゃんもそうだけど、早くに親を亡くしたので、日銭を稼ぐ為にずっと仕事をしていたから、まともに友達と遊んだ事が無かったんですよ......。だから、桜ちゃんと遊んでいるのを見た時は、凄く嬉しい気持ちになったんです! 姉ちゃんが子どもの頃に戻って、初めて友達が出来た様な感覚になって......。まあ、少しだけ羨ましかったんですが......。」ーー


  彼女達は二人とも、幼少期に当たり前の様に過ごす時間を過ごせずにいたのだ......。


  だから、死にものぐるいに努力をして、今の地位を築いてきた......。


「姉ちゃんの友達なら、私の友達でもあるって事だね!!」

  ふとメリーは嬉しそうにそう言うと、メローと桜の事を同時に抱きしめて最高の笑顔を見せていた。

  そんなメリーに対して桜は、微笑みながら、

「そうだね!!メリーちゃんは、メローちゃんの妹だから、桜の友達だね!!」

と、嬉しそうに答えた。

  俺はそんな彼女達の姿を見て、過去の自分に重ね合わせながら、涙ぐんだ。


ーー何だか、嬉しいんだけど、切ない様な複雑な気持ちで......。


  そんな俺を見たフリードは近寄ってきて、ニタニタしながら、

「もうすっかり桜ちゃんの親ですね~。娘の成長を見て泣いちゃうなんて......。」

と、茶化してくる。

  俺はそれに対して、鼻水を啜りながら後ろを向いて、

「別に、そんなつもりじゃねえからな!!」

と、取り繕うのであった。

  だが、ルインドはその光景を前に、俺以上に号泣をして、

「桜ちゃんも、立派になったものだな......。やっぱり、我が娘、リフェスの親友は最高の子だよ......。」

と、嗚咽を漏らしながら呟いていた。

  そんなルインドを見たフリードは、戸惑っていた。

  俺は困惑しているフリードの事を遮った後で、ルインドの元へ詰め寄り、肩に手を置いて、

「この戦争が終わったら、また『ベゴニア村』に遊びに行くよ......。」

と、約束をするのであった......。

  それにルインドは大きく頷いた。

  そんな様子を見ていたフリードは、ため息をつきながら俺とルインドに向けて言った。

「まあ、それもそうですが、僕とルインドを再び引き合わせてくれたのも、雄二さんですからね。いずれは『ロンブローシティ』の方にも顔を出してくださいね。」
 
  そして、その後にフリードはポケットから木彫りで出来た小さな鳥の様な物を渡した。

「これはお守りだと思って取って置いてください。もし仮に『結界』でどうにもならなくなった時、これに向けて役に立つでしょう。」

  彼が言うには、これはマジックアイテムの一つらしく、発動させた時に効力が分かるとの事だった。

  俺はそのマジックアイテムがどの様な作用を起こすのか分からないものの、フリードが渡した物であると言う事は間違い無く役立つ物だと解釈をして、それをありがたく受け取った。

  そして、すっかり盛り上がってしまった環境に向かって、俺は宣言をする。

「大変お世話になった!!では、行ってくるな!!」

  それを聞いた支部や専門部の皆は、俺達を優しく見送ってくれた。


ーー俺はここでも暖かい経験をさせてもらった。


ーーいつか、ここにいるみんなにも、恩返しをしなければな......。


  そんな事を思いつつ、馬に跨って、『フレンディア』を後にするのであった......。


ーーーーーー

  『フレンディア』から旅立ってから半日が経過すると、前に見た事のある山に辿り着いた。

  それは、初めて桜と出会った場所の近くである。

  ミルトはその広がる森を見ると、はしゃぎ出す。

「この大きな山を越えると、もうすぐ戦地に足を踏み入れる訳だね!!」
  
彼女の言動を聞くと、俺はそれに頷いた。

  だが、それ以前に少しだけ気掛かりな事がある。

  それは、最短ルートで向かうとすると、桜の故郷、『ソローリ村』の跡地を通る事になるという所だ。

  確かにキュアリスよりも早く戦地に着く事で彼女の参戦を阻止したいが......。


  俺はそう葛藤したが、やはり桜に現実を突きつける事に強い拒否反応を起こしたので、迂回する事を選んだ。


ーー迂回しても半日ほどのロスが出るだけだ。


「やっぱり、山経由をやめて、平地から進もう。」

  俺は、皆に向けてそう提案をした。

  すると何も知らないリュイは俺に対して疑問を口にした。

「何故ですか? この山を抜け、『ソローリ村』経由で進んだ方が、到着は早いと考えられますよ......。」

  俺はそんな彼女の反論に、見苦しい言い訳をした。

「夜の山は危険だ。何が起きるか分からない。」

  俺がそう答えると、彼女は疑惑の眼差しを向けた。


ーーすると、俺と共に馬に乗っている桜は切ない表情を浮かべながら、口を開いた。


「雄二は本当に優しいんだね......。もう村がない事もわかってる。でも、桜の事は気にしないで。雄二の考えている事は充分に分かるから......。」


  俺は、桜の発言に心苦しくなった......。


  もう既に長い間一緒にいる彼女には、俺の考えている事が筒抜けになってしまっているらしい......。


「責めて、みんなにお花だけでもあげたいな......。」

  桜は驚いている俺に続ける。

  そんな、突然起こった状況に部隊の皆は呆然としている。

  そして、各々が何かを察した様な表情を浮かべた。

「大丈夫ですよ、隊長!! 桜ちゃんは、私達にとって大事な仲間なんです!! だから、桜ちゃんの願いを叶えてあげましょう!!」

  リュイは空元気で俺にそう言う。

  それに対して他の皆も、

「そうです!! 私達も付き合いたいです!!」

と、口々に言う。

 本当に良いのだろうか......。

 こんな幼い、何よりも大切な桜を傷つけてしまって......。

 だが、桜はそれを受け入れている。

  ここで行かなければ、その方が残酷なのではないだろうか......。


  俺はそう考えると、皆に向けて宣言する。

「では、『ソローリ村』を目指して山を越えよう!!」

  そう言うと、皆は、

「おう!!!!」

と、元気に答えるのであった......。

  そして山に入る直前に、桜は俺に囁いた。

「雄二、本当にありがとね......。」

  俺はそれを聞くと、色々な感情が湧き上がって、泣きそうになった。


「ちゃんと、お祈りするんだぞ......。」

  俺が絞り出した様な声でそう言うと、桜は涙ぐみながら、

「もちろん、村のみんなにも、ちゃんとお祈りするよ......。」

と、笑顔で答えた。

そんなやり取りを終えると、部隊は山の中を進むのであった。

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コメント

  • ノベルバユーザー252836

    雄二はメンタル弱くなったなʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ

    0
  • rui

    雄二くん涙脆いなぁ

    11
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