天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第58話 結界の効力。


ーーーーーー

  俺が『結界の呪文』を成功させてから、その怪しい部屋にてグッタリと項垂れていた。

  たったの数十秒の間で走馬灯の様に流れる過去のトラウマは、予想以上に心身へのダメージが大きく、その疲れからへたり込んでしまっているのだ......。

  そこで俺は呟く。

「この呪文、毎回詠唱する度にこんな思いをしなきゃいけないのかよ......。」

  それを聞いたフリードは、笑顔でこう答えた。

「それは大丈夫ですよ! 基本『魔法』というのは一回目は耐性を付ける為の物なので、一度成功すると、その後は心で詠唱するだけで普通に使える様になります!」


ーーなんだよ、その予防注射みたいな理論は......。


  そんな事を思ったが、俺はそれを聞くと安心するのだった。

「でも、この『魔法』を雄二さんに教える事を後押ししてくれたのは、実は軍帥殿なんですよね!」

  フリードは続けて俺に言った。


ーーまた、森山葉月か......。


ーー奴はどれだけ俺に期待しているんだよ......。


  俺はそれに対して彼女の掌の上でクルクルと回されてる気持ちになって、苦笑いをするのだった。


ーーそんな話をしていると、物凄い足音と共に、勢い良くドアが開いた。


「やっぱり成功したんですね!!一瞬『魔法』が使えなくなった時、すぐに分かりましたから!!」

  その声の本人は、メリーだった。

  メリーは鼻の穴を大きくして興奮を隠せない様子だった。

「ああ......。まさか本当に成功出来るとは思わなかったけどな......。」

  俺はそんな彼女のテンションに押され気味な形で返事をした。

「最初フリードから提案された時は、頭がおかしいかと思いましたけどね......。さすがに私も軍帥殿から言われれば断れなかったのですが......。というかあなた、『結界』を成功させた事がどれだけ凄いかちゃんと分かってます?! 」

  彼女は興奮冷めやらぬ様で、俺は何故か説教を受ける形になっている。

  俺はそれに対して、若干引き気味に、

「分かっているよ......。」

と、俯きながら返事をした。

「これで、『ランドリー・シェム』の門弟達を倒す事が出来そうですよ!!」

  メリーは少し気になる事を言った。

  突如、少し前に戦った男の名前が出てきた事に、俺は驚いた。

  そして、彼女に問いかける。

「ランドリー・シェムって、そんなに凄い奴なのか......?」

  すると彼女は少し首を傾げながら、俺に答えた。

「当たり前じゃないですか。だって彼、世界でも十本の指に入る程、有名な魔法使いですからね......。」


ーー俺は、それを聞いて更に驚いた。


ーーそして、何も知らないで戦っていた自分に、少しだけゾッとしたのだった。


「でも、そんな彼が何故か『暗躍部隊』にいた事も、誰かの手によって殺されてしまった事も驚きでしたが......。」

  彼女は首を傾げながら続ける。


ーーどうやら、俺が彼を倒した事を、彼女達は知らない様だった......。


それに気がつくと、森山葉月の考えが少し分かった気がしたので、黙っておく事にした。


ーーそれにしても、そんな凄い魔法使いが何故......。


ーーだが、その疑問は一旦置いておき、ランドリー・シェムの門弟達は少し厄介かもしれなかったので、俺は『結界』を有効活用して行こうと決めたのだった......。


ーーーーーー

  その後、何度か『結界』について試した結果、分かってきた事があった。

  まず『結界』において、範囲内の『魔法』の作用が全て打ち消されるという事は事実らしい。

  メリーは普段ガサツな所があるものの、『魔法』に関しての腕は『専門部』の中でも一番で、そんな彼女が太鼓判を押す辺り、その信憑性は確固たるものであった。

  更に実験を続けると、この『結界』は半径百メートルの円形の範囲にて有効という事も分かった。

  それは、『魔法専門部』をすっぽりと覆う程の大きさだ。


ーーならば、これをうまく利用した戦法を考えていかねば......。


  俺はこれからの計画における展望が見えた事に喜びを感じた。

  その実験の間、フリード、ルインド、メリーの三人は子どもに戻ったかの様な興奮の仕方をしていて、それを見た俺は彼らが根っからの魔法使いである事に気がつくのであった。

  そして、あっという間に時間が過ぎて行き、もう既に日が落ちてから大分時間が経ってしまっていた......。

「今日はありがとう。来たる戦争の道筋が立ったよ。」

  俺がそう彼らにお礼をすると、メリーはその代表として答えた。

「こちらこそ、いい実験結果が見れて、とても嬉しいです!明日には旅立つという事ですが、今後も気をつけてください!」

  彼女はまだ先程の興奮が冷めていないみたいで、そう俺に告げた。

  フリードはルインドと共に肩を組みながら、俺に挨拶をするのであった。

  そして、俺は隣の『フレンディア支部』の方に戻って行ったのだ......。


ーーーーーー

  すっかりと遅くなった夜中、俺は支部の施設に戻った。

  そして中に入ると、何故か部隊のみんなとメロー率いる支部の連中が、神妙な顔で待っていた。

  俺はそれに対して何があったのか分からず、

「どうしたんだ? こんな遅い時間に暗い顔して待ってるなんて......。」

と、若干取り繕い気味に、皆へ質問をする。

  それを聞いた皆は、俯いて誰も話そうとしない。


ーー俺はその様子を見て、何か大きな出来事が起きてしまった事に気がついた。


ーーそんな時、そんな空気に痺れを切らしたメローが口を開いた。

「先程、本部の者から連絡があったのですが......。」ーー


「......。」


ーー俺はそれを聞くと、愕然とした。


  そして、眉間にしわを寄せる。

  俺を含めた『魔法専門部』は、『結界』を張っていた事でマジックアイテムの使用が出来なかった。

  ほぼ数時間、ぶっ続けで実験している間......。

  その間にそんな事が起きてしまっていたとは......。


ーー「今日の夕方、『聖騎士様』がこの付近で連絡が途切れたと言う報告がありました......。」ーー


ーー何故、キュアリスがこの辺りに......。


ーーまさか......。


  俺はそう思うと、急いで施設の外へ出て行く。


ーーすると、俺の目の前に強い風が吹き荒れ、空高くに飛んで行く一人の少女を見かけた。


ーーその、余りにも遠くに見える彼女が紛れもなく『キュアリス』である事に俺はすぐ気がついた......。


  そして、彼女の考えに気がつく......。


ーー彼女は戦争に行こうとしているのだ......。


  俺は見えなくなるキュアリスを追いかけようとしたが、出来なかった......。


ーーいや、余りにも突然の出来事に、只見つめる事しか出来なかったのだ。


ーーその後、彼女がすっかり消え、風の止んだ星空の下で、呆然とする......。


  そして、我に返った俺は、戦地へと急がねば、と、強く思う。


ーー彼女の参戦を阻止する為にも......。

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