天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第56話 魔法の作用。


ーーーーーー

  俺はすっかり桜のごっこ遊びに付き合わされて、今夕方になっていた。

  桜はもう疲れてしまったのか、その場で眠っている。

  その満足そうな寝顔を見ると、思った。


ーー少しは恩返し出来たかな......。


  そんな事を考えていると、さっきまでクタクタになっているメローが俺にこんな提案をしてくれた。

「良かったら、桜ちゃんの方は私が見ておいてあげますよ。『魔法専門部』の方ではゆっくりと話し伺ってきてください。」

  俺はそれを聞くと、微笑を浮かべて、
 
「ありがとう。なら、そうさせて貰えると有難いよ。」

と、答えるのだった。

  それに対してメローはニコっと笑って、

「では、気をつけて行ってきてください!」

と、俺を見送るのであった。


ーーーーーー

  約束の時間よりも少し前に支部の施設を出て、隣の『魔法専門部』の入り口へと向かうと、もう既にフリードは待っていた。

  だが、それよりも気になったのは、もう一人の人物である......。


ーーなんと、そこにはルインドがいたのだ。


  俺が驚いた表情で彼らを見つけると、フリードは俺の存在に気がついて、

「あっ!!来ましたね!!」

と、大きく手を振っていたのだ......。

  すると、隣にいるルインドが俺にこう口を開く......。

「久しぶりだな......。」

  俺はそれに対して、探る様な口調で、

「おう......。元気にしていたか?」

と、答える。

  ルインドは俺のぎこちない返事を聞くと、フリードの方へ目を移し、

「やっぱり先に言っとかないとこうなるに決まってるじゃねえか!!」

と、ご立腹な様子だった。

  ルインドはその彼の表情に対して、押し込むかの様に、

「これが、サプライズってヤツですよ!」

と、能天気な笑顔を見せていた。


ーーいやいや、そう言うことではないんだよ......。


「お前がいなくて、村は大丈夫なのか......?」

  俺がそうルインドに対して質問をぶつけた。

  すると彼は、俺の肩に手を置いて、

「それなら問題ないぞ。何故なら、あれから王女の声明があったからな。今は、これまでが嘘の様に平和そのものだ。お前のおかげでそうなったんだよ!!」

  それを聞くと一安心をして、ため息をつくのであった......。

「でも、ここにいると言うことは、お前も『魔法専門部』に所属していると言うことなのか?」

  俺はルインドに対して更に質問を繰り返す。

「いや、俺は所属してないぞ。だが、政府がやって来た時に一つ証言をしたら、ここに召集されたんだ。」


ーー証言......? どう言うことだ......?


  その答えを探して俺は、難しい顔をしていた。

  それを見たフリードは、俺とルインドに対して、

「まあ、立ち話もなんですから、とりあえず中に入って話をしましょう!」

と、俺とルインドの背中を押して『魔法専門部』の入り口を通過するのだった......。


ーーーーーー

  『魔法専門部』の一室に連れ込まれた俺は、フリードからソファに座る様に促された。

  そして、フリードも同じ様に腰掛けると、彼は今まで見たことがない程に真剣な表情でこう俺に告げる。

「あなた、ベゴニア村で『矢立駿』と言う男と戦いましたよね......?」

  俺は、その彼の真剣な質問に対して、

「ああ、確かに戦ったのは事実だぞ。」

そう答えた。

  それを聞いたフリードはルインドの方に目をやり、何かを話す様に促した。

  ルインドはその仕草を見ると、話し出す。
  
「実は、お前達が村を出て二週間が経過した所で、ヤツはボロボロの姿でやって来たんだ......。」

  俺はそれを聞くと、ルインドの目をしっかりと見つめた。

  それに対してルインドは続ける。

「その時に『矢立駿』が言った事は、こうだった......。」


ーー「単騎で『ヘリスタディ帝国』を攻めた際、見た事のない『魔法』を食らってしまった......。どうやら俺はもうそろそろ自分を見失う......。そうなった時の為に、至急、国の方に伝えてくれ......。」ーー


  その言葉の後にフリードは、静かに呟いた。

「その後に密偵を『メルパルク山脈』に派遣した際、『矢立駿』が『ヘリスタディ帝国』の軍隊と共に行動しているのを確認したらしいんです......。」


ーー俺は、彼の話を聞くと、気がついた。


ーー矢立駿は、『ヘリスタディ帝国』に操られてしまった事に......。


  その後、ルインドは俺の表情をしっかりと見ながらこう言う。

「だが、問題はそこじゃないんだ。」

  俺はその発言に対して、首を傾げた。

  彼の説明によると、本来戦闘においては『魔法』による精神的作用を受けぬ様に、予め自分に『魔法』をかけて回避するのが一般的な戦い方だ。


ーーそれに関しては実際に俺もやっている事だが......。


  『魔法』のかけ方によって、耐性が変わってくるものなのだが、実際にルインドは矢立駿と戦った際、元魔法学校生という事もあり、かなり強力に『魔法』をかけたとの事だった。

  その力は折り紙つきで、フリードから太鼓判を押される程の物だった。

  だが、矢立はそれを上回る詠唱をした事により、ルインドの『魔法』を全て打ち消したのだ。

  それが意味するのは、矢立駿の『魔法』を更に上回る魔法使いが『ヘリスタディ帝国』には存在するという事だ......。

  そして、ルインドは更に続ける。

「その事を知った時に気がついたのだが、ロキシーさんも『矢立駿』と同じ様な形で操られてしまっているのではと......。」


ーーそうなってくると、それだけ強力な『魔法』を有する者が、『ヘリスタディ帝国』には複数存在するのでは......。


  俺はそこで、打開策を練らねばと、強く考えるのであった......。

「何か、対策の手立てはあるのか......?」

  俺が二人に対してそう質問をすると、代表してフリードが真剣な眼差しで答えた。

「方法はあります。あなたのみならば......。」


ーー俺はその大真面目な表情を見ると、何らかの覚悟を決めねばいけないと自覚した。


  そして、口を開く。

「この戦争に勝つ為ならば、何でもやってやるよ。教えてくれ......。」

  俺がそう答えると、二人はため息をついた。

  そして、フリードはいきなり立ち上がった後で、

「ついて来てください......。」

と、小さく呟くのであった。


ーー今からどの様な事が起きるのかは正直全く分からない。


ーーだが、自分を信じて何でもやってみようと、決め込んだのだ。


ーー全てを守る為にも......。

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