天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第55話 仲良し姉妹。


ーーーーーー

  メローとの会話以来、俺と彼女は桜の遊び道具と化している。

  一度部屋に戻った後、熊のぬいぐるみとペンギンのぬいぐるみを持ってきて、再び先程のメローとの会話をしていた一室へと戻ったのだ。

 桜は、今までの鬱憤を全て晴らすかの様に遊んでいて、今は丁度、大好きなお人形さんごっこをさせられている。

  特にメローに関しては、同年代と解釈した桜が無理難題をガンガン押し付ける始末だ......。

「何でエリートな私がこんな事を......。」

  メローは桜に渡された熊のぬいぐるみで旦那さん役をやっている。

  色々と文句を言っている割に、割と演技には力を入れていて、嫌々と言う訳でもなさそうだ。

「こんな所、妹に見られたら馬鹿にされちゃいますよ......。」

  すっかり人形ごっこが終わり、しゃがみ込んだメローはそう言う。

  俺は、桜に任されたお描きの手を止めて、彼女に話しかけた。

「妹がいるんだな。」

  するとメローはそれに対して、苦笑いをしながら、

「そうなんですよ。妹は少し性悪な所があって、私を見つけるとすぐに馬鹿にしてくるんですよ......。」

  どうやら彼女の話によると、妹は小さいメローをからかって遊ぶ事に生きがいを感じている様で、ちょっかいをかけて来るらしい。

  俺はその話から、彼女の妹もまた、幼い容姿をしていると想像した。

「姉妹で仲良しなんだな。」

  そんな発言をすると、メローは途端に切ない笑顔をして、

「認めたくないですけどね。まあ、たった一人の家族ですからね......。」

と、呟いたのだった。

  だが、すぐに我に返った後で、熊のぬいぐるみを抱きしめて、

「そんな身の上話、した所で仕方がないですよね!桜ちゃん、まだまだ沢山遊ぼうね!」

と言って、取り繕うのであった。


ーー彼女には多分、親がいないのだろう......。


  何があったのかは分からないが、メローの話からその事に気がつくと、それに気がつかないフリをするのであった......。


ーーそんな時、窓側から尋常じゃない気配を感じる......。


ーー何だか、物凄く悪意に満ちた雰囲気だ......。


  俺はその気配に向かい、

「誰だ!!」


と、構える形で怒鳴った。


ーーすると、その気配の正体は姿を現した。


  そこにいたのは、背の高い、スタイルの良い、Tシャツにデニムを着た、美人だった。

  その髪は透き通る様な赤いロングヘアに、赤い瞳をしている。

  俺はそれを見ると、呆気に取られてしまった......。


ーー誰だ......?この女は......。


  一瞬で固まってしまった部屋の雰囲気を横目に、彼女は口を開いた。

「姉ちゃん、やっぱりお人形さんと遊ぶのが好きなんだね。」

  彼女は、悪意しか感じられない笑顔でメローに向けてそう言い放って、ずっとニヤニヤとしている。

  メローはそれに対して、恥ずかしい所を見られてしまったかの様な表情を浮かべて、

「メリー......。いつからいたの?!」

と、顔を真っ赤にして答えるのであった。


ーーあれ......? さっき言っていた妹ってこのメリーっていう美女の事なのか......?


ーーどちらかと言うと、親子にしか見えない......。


  俺は、そう考えると戸惑うのであった......。

  すると、そんな俺の表情を見た彼女は、窓から無理矢理部屋に入ってきた後で、俺の前にやってきて、

「こんにちは! あなたが噂の隊長さんですね? 私は、『魔法専門部』で責任者をさせて貰ってます、メリーです。」

と、少しガサツな口調で挨拶をして来たのであった......。

「よ、よろしくな......。」

  俺は、絞り出す様な声で彼女に返事をした。

「私達は姉妹でここら辺の管轄をしているんですよ。」

  メローが混乱している俺にそう説明した。


  俺は、そんな不可思議な姉妹に対して、呆然とするのであった......。

「それにしても、今日は面白い物を見れたよ......。やっぱり姉ちゃんは可愛いね!抱きしめたくなっちゃうよ!」

  メリーは姉のお人形遊びを見て、満足をしている様子だった。

  それに対してメローは、ダボダボに着こなした軍服の袖を捲った後ジタバタとしながら、

「もー!! 馬鹿にするなー!!」

と言いながらメリーの元へと詰め寄るのであった......。


ーーその姿は余りにも大人とはかけ離れていて、幼児そのものだ......。


ーーこれでは、誰がどう見ても只の子供にしか見えん......。


  俺はそんなメローに苦笑いをするのだった......。

  すると、暴れているメローを宥めながらメリーが俺に向け、口を開いた。

「そういえば今日の夕方に、フリードと会うんですよね?」

  俺は、そのメリーの発言に対して、頷いた。

  それを確認したメリーは、明るい口調で再び続ける。

「多分、その時に今回の戦争で必要な『魔法』に関する説明があると思うので、しっかり聞いといてくださいね!」

  俺はその、余りにもあっさりとした口調で放たれた重要であろう一言が気になった。


ーー果たして、フリードからどの様な事を言われるのであろう......。


俺はそれを早く知りたいという衝動に駆られつつ、今ある混沌とした状況に身を委ねるのであった......。

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